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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第33話『涙一族が生み出した傑物達!涙一族 VS ルミルミ+シットリ!』
102/267

Bパート

カーーーーッ



ナギとカホの周囲から出現したのは、虹色の光だった。

虹色の光は捻れるように回転していきながら、3人の体を覆っていく。その中でサザンの体は徐々に透明に近づき、ナギは黒色、カホには白色の光が身体に残っていく。


ナギは黒色をベースに、カホは白色をベースに勇者やヒーローを思わせるコスチュームに変わっていく。



パァァンッ



虹色の光が弾け飛び、ナギは両手を握ってドッシリと足腰を落として構える戦闘態勢。


「『心の黒、ブラックカラー』」


カホは右足を軸足として、半身の体勢を作って左足を浮かせる戦闘態勢。


「『心の白、ホワイトカラー』」


2人1組+1体の妖精を用いた妖人化であり、かつて最強を誇った存在。

合わせて。


「『ブラック・カラー・ホワイト!!』」



ブラックとホワイトの2名が、ルミルミといよいよ対峙する。

その様子を見て、メグは溜め息をついてから余裕の観戦。彼等の強さを十分に知っているし、それはルミルミの方がもっと知っているだろうと思っている。


「馬鹿な奴だ。ホントに。ルミルミ」


卑怯でも何でもいいから。あの妖人化をさせちゃいけない。ブラック・カラー・ホワイトの2人が揃っている状態でまともに戦えた奴は、蒼山ラオという男しかいなかったからだ。

その存在もすでに故人であり、引退したとしても戦いを忘れたような奴等じゃないと分かっているはず。

ルミルミは剣を作り出し、2人を迎え撃つ構え。

それを観て、まずはブラックからルミルミに突っ込んだ。


ブラックとホワイトが備えている能力は"完全掌握"。

簡単に言えば、自由に掴みとれる事ができるというシンプルな力。液体化、気体化といった、触れる事ができない存在に対しても二人は掴むことができ、ダメージを通せる。

この能力に重点が置かれているため、身体能力強化は少ないが。それを補って強いのが、涙ナギの格闘センスと身体能力である。

ルミルミの剣の一振りを軽々と避け、懐に入って彼女の体を掴み、空中へ投げ飛ばす。



「おっ、必勝パターン(ルミルミには効果が薄いが)」



シンプルに。地上で暮らす人間達にとって、空中に放り込まれたら行動が制限される。ブラックとホワイトが当時最強と言われていたのが、格闘戦だけでなく空中戦の強さもあったからだ。

宙に投げ飛ばしたルミルミに向かって、ブラックは走って駆け上がっていく。そこに見えない階段でもあるかのように、両足で空気を掴んで地上戦のように空中戦を行なえるのであった。

相手は行動を制限され、自分達は地上以上に行動をとれる。



キュイイイィィッ




ブラックは強く右の拳を固める。より強く、さらに強く。


「おおおおぉぉぉっ」


大気がブラックの拳に引きずり込まれ、周囲の空間が黒い裂け目を作り出している。あらゆるモノを握り締めるパワーから繰り出される攻撃力。

ルミルミがそれを見た瞬間、手に握っていた剣の形状を変え、分厚い盾にするほどの防御体勢。互いに瞬間的にやっている事であり、並の奴等じゃ目では追いきれず、体は何もできないだろう。

ルミルミにも恐怖はあった。久々にこの拳を作ったブラックに、慈悲はない。



「"黒龍強打こくりゅうきょうだ"」



ドゴオオオオォォォォォッッ



ルミルミの盾を一発でぶち壊し、掴まれた大気が解放された衝撃は周囲の建物を揺らし、雲を跳ね除けた。

距離をとり、空中を自由に飛び回ろうとも、ブラックは進んでくるし。飛んでいるルミルミの背後をとった存在に、ルミルミは緊急回避をした。



「おわぁっ!」

「……ちょ~っと、気持ちが出ちゃったかな」

「ホワイト。確実に抑える時でいいぞ」


同じ能力とほぼ同等の格闘能力を持っているホワイトもいる。2人一組で戦うこの姿が、本当の実力。2人に身に纏う服になったサザンは、改めて警告する。

ブラックがルミルミの前を、ホワイトがルミルミの後ろをとる。その状況で改めて、サザンが


『もういいだろう。戻ろう!無事じゃ済まないぞ!』

「……それはあんた達だよ」


サザンをして、最強の妖精はルミルミと答える。妖精としての力だけを見てのことだ。

そんな彼女だからこそ。そーいう言葉を使い始めたら、手強い。


「やっぱりあんた達、強いわ」


尻上がりというのは違うな。……気を引き締め始めること、慢心を改めること。

ルミルミにその気はないんだが、周りからみればそうとしか思えない。

空中戦でも前後をとられる形にルミルミが行なったことは



ズズズズズズズ



「そっちが2人で来るなら、こっちは4人!!」



自分と姿形同じ存在を4体作り出し、ブラックとホワイトのコンビプレイを抑える作戦。1対2では数の不利をかなり感じたからこその判断。今度はそれを彼等にやろうとした。



「そらぁっ!」


分身2人がホワイトに襲い掛かり、ルミルミともう1つの分身でブラックを襲う。考えは良いものだと思うが、ブラックとホワイト共に受けを意識した待ち。

ルミルミの剣がブラックに振り下ろされた。


パシィッ


「あ」

「……ルミルミさぁ。自分の力を均等に分散させてどーすんだよ……」


そう言っても、ビルを真っ二つにするだろう斬撃。軽々と手で掴んでいるブラックがヤバイ。剣を掴んだ状態で右手に力を込める。防御も許さない


「"黒龍強打こくりゅうきょうだ"」



ドゴオオオォォォォッ


ルミルミの腹部に突き刺さった一撃。共にブラックを攻めていた分身が、本体のダメージによって消滅をし、本体の残りの力が流れていく。


「うげぇぇっ」

「まだまだいくぜぇ!!」


"黒龍強打こくりゅうきょうだ"を受けながら、ルミルミの身体は吹っ飛ばない。内部を攻撃されているのもあるが、ルミルミの剣を掴んで彼女を離さないようにするだけでルミルミは離れられない。掴まれたら逃れられない。



「ごのぉっ!戻って来て、分身!」



ブラックが離すまで、打ち合うしかない。そのためにホワイトの方に回した分身達を元に戻そうとするが。


ガシッ


「ダーメダメ!分身ちゃん、ルミルミのところに行っちゃ、ダメ」


ホワイトもブラックと同じ能力を持つ。彼女が分身達を掴んで、少したりともルミルミに戻らせない。おまけにルミルミが分身を解除、回収を行なった後の気体状態を掴んだため、ホワイトを襲うことができない。一度解除すると、ルミルミに力を戻さなければ形作れない。

ブラックの言うとおり、力を分割したのはミスだ。


「おらああぁぁぁっ!!」



ドゴオオオォォォッ



ルミルミも強いが、それ以上の強さを見せつける。

ブラックとホワイト。

涙ナギと涙カホのコンビは引退しても、ルミルミを圧倒できる実力を持っていた。とはいえ、ルミルミのミスも否めない戦いではあった。



ヌチャァッ



それも分かっていて、仕掛けられたことがある。



◇      ◇



ズバアァァッ



「やーーーっ!!」



箒を振り回し、その先にある建物だろうが空気だろうが、消し飛ばす。

ナックルカシーVSナチュラルズーンの対決。

一方的にダイソンを振り回し、ナチュラルズーンがナックルカシーを攻めているが、彼を仕留め切れない。再生能力、身体能力……そこらへんの違いよりも、決定的な差を。ナチュラルズーンの相方妖精である、ダイソンは気付いている。



『さすが、録路だ。"経験の差"がある』

「はーっ、はーっ。ただのヒットアンドアウェイでしょ……」

『消耗戦はこっちが不利だ』



少なくやっても、消し去る能力の消費が激しい。黛も妖人としてかなりの素質を持っているし、録路を超えているかもしれないが。経験の差でそれを軽々と覆している。

だが、それをどう返そうにもダイソン達には手がなかった。



ガリィッ



「まだ妖人化できるな。マルカ」

『当然!私は長く妖人化できる事には自信あるよ!お菓子の補給もあるし!』

「菓子も温存したい。ダイソンにはともかく、あのガキにそこまで付き合うつもりはねぇ」



街中を護る気などまったくなく、ナチュラルズーンを止める事に頭を回している。周囲の物を無差別にナチュラルズーンに投げ飛ばし、生じる土煙で彼等の放つ消滅領域を特定。直撃しても、ナックルカシーには回復手段がある。

この行動にマルカも


『てっきりこの前みたいに、ゴリ押して行くのかと思った』

「あの時は多少、マジカニートゥが削ってくれたからな。関係ねぇけど」


黛をそれなりに評価している事もある。

それともう1つ。


「気になってるんだよ。嫌~な感じがしてるんだ」

『え?』

「あそこだ」


先ほど激しい戦いをしたかと思えば、急に静かになって……また、戦いだした。

因心界の本部で戦闘があるのは分かっているが、あそこで思った通りのことが起きている予感がしない。ダイソンをとりあえず片付けたら、命令を無視してでも本部に乗り込む考えだった。



「このっ……」



ヒットアンドアウェイと、黛本人は馬鹿にしていたが。

攻撃を喰らっていること、消滅領域を出しまくることによる疲労。まだ経験が浅いながらも素質で補っていたが、それももう限界。

心身共に疲れ、ダイソンを杖代わりにして休むこともしばしば見せる。



「あ、あんなクソデブに……豚がぁ……」

『……ナチュラルズーン。逃げよう』

「ああぁ?ダイソン!強いんでしょ!」

『録路が強い。まだ、俺達じゃ勝てない』


ムノウヤ達の戦場とは違い、こっちは敵陣。勝つ可能性がないとは思っていないが、録路がそーいう隙を出すとは思えない。無事に帰還することも含めて、ここは逃げの一手を提案したダイソン。録路が中盤から一方的に来なかった事が、彼なりの温存と見れば。



"こっちの知らない本当の作戦の意味を知って、録路をひきつけるフリをする。"



その方が黛が助かる。

……ダイソンの本心に、少しだけではあるが。飛島とラクロとの死闘が影響している。



「いやだいやだ!絶対あいつを消す!!」


やられたことはやり返すといった感じの、言葉であるが。


『あの男はそうそう死なない。殺すチャンスはまた今度ある』

「!!」

『気持ちはリベンジにとっておこう。俺も同じ気持ちだ』

「………あんた、いい奴だね……」


ダイソンの言葉にごねた気持ちがすぐに止んだ。身体の痛みを知った時、逃げることにすぐにスイッチが入った。

逃亡。アイーガも見捨てて逃走。

その敗走姿を録路とマルカは目撃した。


『やった!これでダイソンに勝てた!』

「んなわけあるか」


安易な勝利に喜ぶマルカに、チョップをする録路。


『いだっ』

「分からないが、自信があるんだよ。涙一族をぶちのめせる手段がな」

『え?』

「ダイソンとアイーガ。此処野よりも信頼できる連中が来てるのに、俺達の戦いに付き合うか?ルミルミの実力が化け物なのは聞いてるが、……あいつが来てねぇのは、もうあり得ないだろ」

『あいつって……シットリのこと?でも、東京駅にいるって情報があるのに?』

「知らないが、そーとしか思えない。あのダイソンには自信があるんだよ。シットリとルミルミの2人が、俺達もろとも涙一族をぶちのめせるってな!」



東京駅で起こっている情報を知らないが、その最悪を感じ取った。本来の作戦では二手に別れて、主力を抑えることだった。

それが破綻していると録路は気付けた。


「本部に行くぞ」

『ダイソンは』

「あとでいい。今はシットリの目的を知る事だ。こっちにもう来てる」



因心界の本部での戦闘を感じ、彼がもうそこにいると予感していた録路。

急ぎ足で因心界の本部に行く。

そして、場面はちょっと巻き戻す事となるが、アイーガVS野花の戦い。



パァンッパァンッ



激しい銃撃戦となったが、精神的な不安を抱えていた方が不利となった。


「くっ…………」

「はははは!どーよ!腕はあんたでも、勝つのはあたし!」


戦場から突如消えてしまったルル。それに不安があったのもそうだし、なにより野花の妖精、セーシが不在という状況での戦闘。

アイーガの銃撃を先に浴びてしまい、負傷してしまう野花。アイーガの前に膝をついてしまう。それでも銃を向けられながら近づくアイーガに対し、


「……ルルちゃんをどこにやったの!?」

「知らない。急に消えちゃったよ!!あたしにビビッて逃げたんじゃないかな!」


ふふんって、自慢げな顔をして。なんも知らないアイーガ。よく分からんが因心界の野花を洗脳できる大チャンスを得る。おまけに彼女を洗脳すれば、最強の妖精と言われるセーシも扱えるのだ。

絶対後悔するけど。

グツグツと茹で上がったような音が、アイーガのカチューシャから鳴り始め、そこから蠢くように不気味な手と目玉が吹き始める。


「さーぁて、野花の身体に乗り移るよ~」

「!」


まさにそんな時


「ちょっと待ったーー!」


マジカニートゥがこの場に現れ、アイーガの前に立ち塞がった。

それを見て、全てを曝け出しそうになった本体を元に戻したアイーガ。


「あ!出たね、マジカニートゥ!!」

「表原ちゃん……」

「今度のあたしは一味違いますよ!」

「ふふん!ルルみたくあたしに逃げ出してもいいんだよ!文句言わないから」


ぶっちゃけ洗脳するなら野花を選びたかったアイーガ。とはいえ、マジカニートゥを倒したいリベンジもある。マジカニートゥに銃を向け、ルルが逃げたという情報も含めて脅しをしかけた。


「じゅ、銃を向けたからって!妖人化してたら大丈夫だもんね!ねー、レゼン!」

「おいこら!なんで俺を盾代わりに掴んでるんだ!!人間の屑が」


そんな脅しには屈しないとは言いつつ、小さい体でも心臓や頭を守れるくらいのサイズがあるレゼンを盾にするというマジカニートゥ。

とはいえ、マジカニートゥの態度にアイーガも同調するように


「偉く自信があるね!だったら、少し見せてあげようかな」


本気で戦おうとした。逃げられるとちょっと面倒だが、マジカニートゥの戦闘が1対1で来るもんだと思っての判断。

そんな時、


「………」

「……?……って、レゼン。あんた、どこを見てるの。それにマジカニートゥも……」


レゼンとマジカニートゥの視線が、敵を前にし、銃を向けられていても……。アイーガを見ないで、彼女の後ろのその先を見ていた。そして、マジカニートゥとレゼンは同時に言った。


「「あそこにシットリが来てるー(棒)。なに手間取ってるんだって、怒ってるみたいだよー(棒)」」

「ええええぇぇぇっ!!!?」


え!?なんで!?

そんな表情になってアイーガは、マジカニートゥとレゼンが見ていたところに顔を向け、速攻で頭を下げ。


「ご、ごめんなさい!!命はとらないでください!!手間取ったけど、勝ってるから!!」


……が、そこにシットリなどいるはずがない。

そして、迂闊にもマジカニートゥから目を離したこと。ビビッて謝ったという恥も含め、


「あ!!騙したね!!っていうか、逃げるんかい!!マジカニートゥ!!」


アイーガは怒った。しかし、マジカニートゥは負傷した野花を担いで、アイーガから逃亡していた。負けるつもりはないが、次の本気を出すまでに30分以上ある。

野花の命に別状はなかったが、手当てを優先しての行動。アイーガがちょろくて助かった。


「病院で古野さんに診てもらいましょう!」

「ご、ごめんね……ありがと……」

「それよりルルちゃんが逃げたって?」

「逃げたというか、消えたのが正しい……」


反応からして、アイーガにやられたとは思えない。だが、突如として消えた。

可能性があるとすればダイソンの攻撃をどこかで喰らったとかがあるが、……録路が彼を抑えていたのだから、それはない。そして、ルミルミも因心界の本部にいる。


だから、そんなことをするとしたら。シットリ以外、考えられない。

野花がその不安を抱えて戦っていたのだから、アイーガに遅れをとったのはしょうがなかった。



「……因心界の本部に……向かって……ごめん、今の私じゃ……」

「分かってます!!怖いですけど。ルルちゃんはたぶん。そこですよね!」

「まずは病院!俺達も能力なしで、あんなところに行けない」



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