Bパート
やりてぇ奴はやりゃあいい。止めたくなったら、止めればいい。
こっちが与えるのは、やるって事を後押しする力だけだろう。
キャスティーノ団になる手続きらしい事は特になく、録路とのコンタクトさえできれば良いこと。
ぶっ壊れ、不安定大前提。
際限なくばら撒かれていく、悪を芽吹かせるモノ。
「さぁ、暴れなさい!ジャネモン!」
時にそれらに縋り、自分の弱さを否定したくなる。
本人の意思がそうしたいのならそうあるべきで。ルールがあるとすりゃ、録路が決めることだった。
今、構成員の1人がジャネモンを生み出した。
録路はその人にアイテムを提供し、
「邪魔、すんじゃーねぇよ」
周辺にいる警察ならびに、因心界の構成員と対峙する。
「録路空梧。お前、なぜそれほどまでに悪事を働く?」
「妖人の力のみならず、ジャネモンを生み出すアイテムの数々はどこから持って来ている!?」
人が決めたって事を、邪魔する他人がいちゃあしまらない話だ。
贅肉だらけの体をさらに促進させるようにお菓子を食いながら、
「一度に色々言うな。聖徳太子じゃねぇんだよ」
「お前は聞く態度が悪い!!」
ごもっともな意見……。
「答えることがあるとすりゃ、人の決意を邪魔すんじゃねぇ」
人間。ただ生きていてもダメで、本人の納得がいくもんがあっても理不尽で不公平がある。録路の曖昧な気分は、得られた強さに対して、迷惑で自身の欲求のためにしかなっていない。
そんな不安定な彼を心配そうに、後ろからひょっこり顔を出す。そいつが録路の妖精である。小さな外見は
「オ、オーブントースター?」
「マルカ。変身だ」
『い、いいの?録路』
「うっせーな。俺の言う事を聞いてろ」
物体型の妖精。タイプ的には佐鯨のバーニと似ている。
貢献としては、人の決意という曖昧でいいダシにしている。一方でそいつを録路本人に問い立たせれば、彼に仕える妖精。マルカという存在にある。パートナーを持っているが、まだ気弱で録路に言いように言われている妖精。
「お前がちゃんとしている妖精って事は、俺とお前がよく知る」
ガシャンッ
録路はオーブンのマルカの中に入り、こんがり体を焼かれていく。
録路の体型が悪いからだが、豚が焼かれているようにしか他所には見えない。
チーーーーンッ
「『このナックルカシーに食えねぇもんはねぇ!』」
表原が際立ってそうであるが、この録路にだってそーいう経緯はある。そこから立ち上がった彼、立ち上がるきっかけをもたらせた妖精。やり方は違えど、そーいう自分を重ねるように構成員との接触を深めているのだろう。
妖人となるには、それなりの条件がある。また、適正が合う妖精。そもそも妖精と出会えるかどうか。
こっちの方が簡単だった。合法だ、なんだと言われ、思われ、あるものの。運命なんかと気にするよりも、現実を向いている力。道具の扱いだった。
ガリッ
お菓子のせんべいを食いながら、戦闘体勢に入る。
「俺を捕らえに来るなら、因心界の幹部共を呼んでこい」
録路空梧。ナックルカシー。
彼の能力は、菓子を補給するほど身体能力が強くなる能力。彼自身、菓子好きなのも影響がある。
食べて胃の中に残り、消化されている時、その強化は最大限に成される。ただし、消化しきってしまうと弱ってしまう。録路が菓子と認識しているものであれば有効。種類は問わない。彼は常に携帯するお菓子を所持している。
能力の性質上、体型はさらに太りやすく、虫歯もできやすく不健康に成りがちという不便なリスクがある。それ故に身体能力強化も尋常ではないのだ。
◇ ◇
ビイイィィッ
「ん?」
「反応」
同時刻。網本と野花に送られた情報は、ジャネモンの出現である。最近はその頻度が増えており、押されている状況か。現場近くにいた2人に応援できるかどうかの要請。
「どーする?」
「私は……うーん、パス」
野花は出撃を拒否。あまり争いは好まないし、頼れる粉雪が今いるのだ。よほどの案件でない限り戦う気になれない。しかし、そんな事を聞いていなかった。知っているからだ。
「表原ちゃんを連れて行くかって事なんだけど」
「え?」
「丁度いいじゃない。因心界がどんなものかって事。他を教えることに、一通りの一例として」
ようは観戦ということか。
否。
「実践させましょう」
「早っ!!まだまだ危ないって!!」
なんという鬼軍曹。このズレに合わせる野花の苦労も分かるものだ。
今、松葉杖を使って歩くのがやっと。
「うぇー、もういいでしょ?病室に帰りたい、足も腕も疲れてきた」
「馬鹿野郎!さっさと歩く事慣れなきゃ進まないんだよ!歩いたときの喜びはどーした!?」
「今は歩き疲れる苦労を知ってます!!」
幸せと苦労は相反する。
レゼンの鬼教育によって、医者も周囲の患者もドン引きの突貫リハビリ中。
「レゼンくんの能力も気になるところだしね」
「一度倒しているんでしょ?透明になるっていう」
「それだけだったら、あのキッスとイスケが敬意を評さないでしょ?セーシはどー思ってる?」
声を掛けられて、野花の内ポケットからセーシは出てこようとするが、野花に阻止される。
人前に出そうとするなって表情で
『ただの透明なだけだったら、サザンが認めるわけもない。粉雪の読みは確かだよ』
「妖精の国の統括もそれだけじゃないって……」
「じゃあ、誘ってみましょ!観戦っていう理由で戦地に行かせて、妖人化するくらいできるでしょ!」
粉雪の方から歩み寄って、声をかける。
「レゼンくん、表原ちゃん。ちょっといいかなぁ?」
「な、なんですかぁ!?」
「これからジャネモン退治に行くんだけど、観戦していかない?あたしが妖人とはどーいうものか、見せてあげるわ。リハビリばっかりじゃ辛いでしょ?」
因心界が誇る最強の一角。その人物の戦闘を味方として、拝見できるというのは良い勉強だ。確かに表原の寿命の方が気掛かりで、そーいった説明はリハビリができない夜となるだろう。
こんな鬼のリハビリをやりたくない表原にとっては、なんでも良かった。
「行きます行きます!リハビリ終了!終了ーーー!!」
「……ちっ。まぁいい。粉雪さん。クールスノーの戦闘を直に拝見できるとしたら、リハビリよりも有意義だろう。ジャネモンだの、因心界だの。そーいうこと、表原にはまだ詳しく話していないし」
「じゃあ、決定。野花、運転手と警護を頼むわー」
ホッとしたところ。立つという動作に楽を覚える。地獄を知り過ぎての麻酔なしの麻痺だった。
野花が車椅子を引っ張り出して、表原を座らせてあげる。
「大丈夫?粉雪が無理を言ってごめんね」
「いえいえ、レゼンが酷いから良かったです」
「おい。どーいう意味だ。どの変が酷かった?」
「もう全部」
野花が出発の準備をしている間。粉雪は本部に連絡を入れ、表原を連れて行く事と周囲の妖人達が退くことをお願いした。能力だけは有名であり、周囲への被害を避けるためである。
ガチるつもりはなく、あくまで挨拶程度で済ませる。たかがジャネモンなんて、朝飯前。
表原の乗車も済ませ、戦地に向かう3人。妖精、4名。
ブロロロロロ
「ここから10分くらいかな?バス使ってるから、もうちょっとかも」
「あ!あたしは見ているだけですよね?終わるまで寝てていいですか?」
「おう。起きた時は天国に入れるぞ。リハビリ天国という場所だがな」
リハビリを終わらせたかった表原にとっては、なんでも良かった。
こんなふざけていても、当たり前の事を言いたいのも分かる。
運転手の野花だけは……
「表原ちゃん、簡単に言うけど。……あ、私からでいい?レゼンくん?因心界とかの説明」
「構わないが。眠らず、聞いておけよ。そのど低脳に入れておけ」
「むっ………」
表原の隣の席で、これから戦おうという顔を作り始める粉雪の真剣さ。
眠いとか言ってられないプレッシャーを感じる。
「因心界は、私達を纏めている妖人組織。私達が自由に妖精の力を使ってちゃ、危険極まりないでしょ?」
「それは確かに。レゼンみたいな鬼軍曹がいたら危険なんて生易しいです」
「あん………」
まだ、"ようこそ"すら言っていなかった事を思い出しながら。
「力は妖精だけど、心はやっぱり人間。レゼンくん達も妖精の国の秩序もあるし。互いに争うって事はしたくないけれど、ぶつかり合っている。因心界は国と人の法を掲げて、人を護る組織」
「あー……」
「率先して戦うヒーローじゃないわよ?民衆を護るヒーロー。そこのところ、間違えている奴いたから。佐鯨とか」
因心界の戦闘の主は、本部への連絡や要請があってのもの。
どうしても後手になるが、権力者がやるような暴威をするのはイメージダウンと組織の形成に影響を与える。
「ま、表原ちゃんは戦うの好きじゃなさそうに見えて、安心だけれど」
「だ、誰だって嫌じゃないですか!」
「そうかしら?あたしは好きだけど。戦うって意味じゃないけれど、勝負は人を磨かせてくれる。ま、あたしの感想はいいかな?」
分かりやすく親しみやすい言葉であるが、やや足りていないのでレゼンが捕捉する。
「人間社会と妖精社会の双方で認められた、正当な妖人組織って事だ。因心界ってのは」
「正当な組織なんだね」
「いくつもあるし、目的も違う。因心界は社会保全を務めている。一方じゃ、社会を変えようと力を使うものもいる。人間が決めること、妖精はその力が無くなるまで尽くすものだ」
捕捉ありがとうって感じで、粉雪は話を続ける。
「ジャネモンってのは、あたし達も追っている連中が使う。お手軽な怪物くんね」
「すごいパチモン感があります」
「今のところ、キャスティーノ団とSAF協会の連中が召喚している怪物。人や物の邪念を元に生み出される怪物で、邪念の元、暴れ回る。因心界はこいつ等を倒すわけだけど。なにより民衆の安否や保護も求められるわ」
「倒すのも大事だけど。今、因心界が追っているのはジャネモンを作るアイテムの製造元と売人の存在」
運転しながら野花も会話に入る。こーいうのはしっかりモノの方が、しまる。
「キャスティーノ団がここのところ、勢力を拡大している理由に、ジャネモンを簡易的に製造できるアイテムの大量保持とされているの。でも、統括の録路だけじゃそれは有りえない。まだ私達の知らない組織が加担しているんじゃないかって、因心界の予想」
「そうね。今のキャスティーノ団は、かつての"エンジェル・デービズ"っていう組織が成り代わったみたいに、社会への犯罪が増えている。黒幕を潰すのが、今の因心界のやるべきことね」
とはいえ、そんな黒幕がすぐに現れるわけもない。網本粉雪、涙キッス。まだ登場していないが、白岩印の3名は、妖人の中でも最強を争い、共に同じ組織に所属しているのだ。正当な組織であるならば、普通壊れていくものだ。
見解として、隠れるのが上手い連中というわけだ。
「難しい事まであたしに教えていいんですか」
「大丈夫。お前、馬鹿だから。覚えられてないだろ?」
「うん」
「うん」
「みんなして酷い!!」
「…………」
なるほど、今の因心界はただ闇雲に敵を倒しているわけじゃなく。俺と同じように黒幕を追っているのか。けれど、サザン様との違いが引っ掛かるな。妖精の国が探す敵と因心界が探す敵の正体。これが果たして、一致するのか?
涙ルルが来ての遣い。わざわざ寄越すものじゃない伝言であったけれど。
つまるところ、俺自身も含めてサザン様に試されているわけか。
表原麻縫を因心界の幹部にしなきゃ、本気でダメ。
正体は暴けないってこと。
◇ ◇
『ゴミ捨てたら、誰か拾って捨てれば良いだろうがよーーー』
ゴミ袋のジャネモン。不当投棄された邪念によって、生み出された怪物。
強烈な悪臭とゴミを吐き出す能力を持っていた。
プ~~~~~ン
「すいません!!女性としてはあーいうタイプの怪物、お断りです!!」
ヒーローに苦手があってもいいものだろう。
だが、そのジャネモンを作った奴が言って良い台詞じゃねぇ。
召喚したと同時に、運良く持っていたマスクを使用している。
そして、その怪物と現在交戦を仕掛けようとする者も
「っていうかね、人間。あーいうのダメなんです!!」
文字だとしても、イラストだとしても、そのヤバさってのが伝わり辛い。多くの人は耳や目の情報を優先して捉える傾向にあり、鼻が得る情報には慣れが少ない。
体臭に慣れた本体は影響が少ないが、他者には影響が多大にある。
気分を悪くさせ、吐き気を与える。
だからこそ、適任されるヒーローがいる。録路は挑発する。
「おう、社会のゴミ。お前が相手にしろよ。蒼山ラナ。よりによって、来た幹部がテメェかよ」
録路もガッカリする奴。完全な戦闘能力は持ち合わせていない。
その男。服装は完全なるガリのアニオタ眼鏡タイプ。
リュックサック姿で戦闘に挑もうとする姿には、凄みがまるでない。
動揺も隠せない。
「だ、だ、だ。誰が社会のゴミか!!それはあなた達だろう!!女性のパンツ姿の全ては僕が守るんだよ!録路空梧!!」
なんか認めているかのような、言動である。
住民達もあんな人が守りに来たと言ったら、不安でしかない。むしろ、このジャネモンよりも犯罪の臭いがしている。
「なぜ、僕がここに立っているか!分かるか!?」
「あ?」
「怯えるがいい!!」
鼻を抑えながら叫んでいる蒼山の情けなさ。
録路はホントにゴミを見る目を向ける。それが正しくある事は
「もうすぐここに最強の粉雪ちゃんがやってくる!!まだ彼女の戦闘パンチラはコンプリートしていない!故に現地に来たんだ!!ふははは、怯えるがいい!!」
「戦いに来たんじゃねぇのかよ!!ゴミ野郎!!どんだけ情けねぇんだよ!」
蒼山ラナ、因心界きっての大変態かつ犯罪者である。
女性の被写体撮影が大好きであり、どんなに咎められようと諦めない。新人女性の妖人も撮影したり、盗撮したりしているとか。女性用の下着も大好き。
なんでこんな奴が幹部をやれているのだろうか?
ブロロロロロ
「ん?」
「邪魔」
ドゴオオォォォッ
1つ言えば、妖人とならなくてもその驚異的なタフネス具合だろう。
野花が道に転がってきた空き缶を踏み潰すように、車が彼を撥ね飛ばしても。すぐに起き上がり確認する。
「ぐふぅっ……野花さんまで。おいでになられるとは……、またチャンスか……」
「あれ?ゴミがなんか喋ってるんだけど?」
凄く真面目で優しそうな野花ですら、彼に対してだけはこの冷淡すぎる対応が反射で行なわれる。
「あなたは引っ込んでなさい。蒼山。指令が来てたはずでしょ?」
ガチャッ
粉雪は外に出て、今にも倒れそうな蒼山の元へ駆け寄り。
「死んでなさい」
ドゴオオォォッ
パンチラは見せないけれど、ご褒美のかかとおとしで意識を天国に吹っ飛ばしてあげる粉雪。
蒼山。これでもわずかに意識を残しつつ
「ス、スカートなら。みえ。て……た」
この余裕からの気絶。
「あの、今の人は……」
「ごめん。因心界唯一の歩いているゴミなの。ま、能力が重宝されるタイプのゴミ人間」
何も知らない表原からしても、蒼山への対応にちょっとひいている。これから戦場となるところで意識を失っているのは危険であるが、
「死体になってからお持ち帰りね。あいつにはホントに気をつけなさい。立ちはだかる壁だから」
本人以外に問題はない。
お互いに今日は逃げてあげない。一戦交える。
『人間のゴミを拾うならお前が全部のゴミ拾え~』
「うわっ。キッツイ臭~い」
鼻をつまむ仕草を、誰に向けてしているのか。
「あんたからする豚の臭いが……、録路くん。こいつ等みたいなゴミよりも酷い体臭。どうにかしてよ。……屠殺を、始めちゃおっか」
「お~。思ったより早かったな、こうしてぶつかんのは。俺の狙いとは違っていたが……殺してやるぜぇ、凶暴メスゴリラさんよ」
網本粉雪VS録路空梧+ジャネモン
戦闘開始!!
次回予告
蒼山:ふおおおぉぉっ!粉雪さんに踏まれたんごぉぉぉっ!ああ、あれがスカートだったら、下からのぞき込んでこのカメラで撮り。粉雪さんのパンツを撮れたよぉぉっ。まだ、僕がゲットしてないパンチラショットの一つ!
飛島:…………
蒼山:野花さんも相変わらず、容赦なく、普遍のある美しさ。いつかはパンツを被ってあげたいなぁ。ややっ!また、女の子が来ているじゃないか!表原麻縫ちゃんか。中学生か……この年頃の女の子はどんなパンツを履いているのかな。カメラを持つ手が疼くよぉっ!さぁ、次回!!飛島ぁぁっ!!
飛島:お前に次回の出番はない
蒼山:もー、お前は空気が読めないね。僕が言うよ!次回、この蒼山が粉雪さんのパンツを
飛島:『マジカニートゥの初陣!妖精達はセンスがないし、戦闘ってやっぱり怖い』という次回です
蒼山:僕の考えた次回の方がドキドキするんじゃないかな……?




