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『お主の幻聴などでは無いぞ?』


 さーてこの物わかりの悪そうな服屋の店員に大鎌を教えなければ。

 予想としては大鎌をある程度の人に認識して貰えば、この世界にも大鎌って概念が出来て俺のステータスバグりも治るんじゃ無いか?って所だ。治ってどうにかなるのかどうかはちょっと正直判らないが、壊れてるより治ってる方が良いだろう。

 自転車のベルと同じ感じ。壊れててもそもそも使う機会が無いからあんまり支障ないみたいな。あれの使い所なんて狭い道を三人組で通るリア充グループの話に少しでも邪魔してやろうって鳴らすぐらいしかない。因みにそのグループの中の一人は弟な。一人だけリア充しやがって許すまじ。


「幻聴じゃないって……証明できんの?」

『出来るぞ?』

「どうやって?」

『そうだな……例えば、お主の目の前にある大鎌を触れずに浮かせて見せる、とかでどうだ?』


 つまりは俺が動くだけです。こう言うのなんて言うんだっけ?マッチポンプ?多分あってるからそれでいいや。


『フンッ!』


 はい、力を込めたよ感を出したのただの声です。ドスがきいた声を出すのに大事なのは腹式呼吸な。やっぱり大事だよ腹式呼吸。主に机に止まったハエを飛ばすときとかに。


「ほ、本当に浮いてる……!」

『幻聴で無いことは判ったか?』

「幻聴に続いて幻覚だなんて……。暫く店を閉めましょう。やっぱり夜は十時には寝ないと」


 こいつほんと物わかり悪くて嫌い。流行だのなんだの言ってる暇あるんならIQ上げるクイズでもしとけよ。まああれ、効果無かったけど。


『どうしたら信じるというのだ?』

「信じられないわよこんな超常現象(オカルト)


 全くの同感なんだけども。

 異世界なんだから、こう不思議現象無いのかよ。モンスターにゴーストとか居ないの?マジ異世界物の主人公共ご都合主義過ぎだろ。俺にもくれよその力……!


『仕切り直そう』

「は?」


 そう。こういうときは一からやり直すのが一番。育成の仕方間違えてでももうセーブされちゃったデータはリセットするのが一番良い。そう、だってその先に最強(ポケ〇ンマスター)があるのだから……!


『我は神だ』

「へぇー神様なんだ。じゃあ名前、何?」


 あのクソジジイの名前なんだっけ聞きたくも知りたくも覚えたくも無いから脳ミソには無いんだけどさ。え、でもあいつに神様っぽい名前を適当につけるのはなんだしなぁ。ここは安牌。


『我が名はク・ソジ・イーだ』


 何と言うことでしょう。クソジジイだなんてまさにクソジジイにピッタリだった名前が、匠の手によって、ちょっと人気がありそうな韓流アイドルの名前みたいなのに早変わり。

 ついでにこの混沌とした状況も何とかしてよ匠さん。


「クソジジイね……じゃあ、次の質問。なんの神様?」


 嗚呼悲しい哉悲しい哉。俺のネーミングセンスはクソジジイの圧倒的クソジジイ感の前には無力だったようだ。仕方ないね。クソジジイだもんね。


『大鎌の神だ』

「大鎌って?お釜?オカマ?」


 一つ目はお米炊く奴だし二つ目はいやな響だからやめていだきたい。クソジジイがお釜の神だろうとオカマの神だろうと構わないけれど、現大鎌代表(一人しか居ないから出来レース)としては微妙な気持ち。


『お・お・か・ま!ほら、今お主の目の前にある武器のことじゃよ』

「ああ、これのこと」

『そう。それのこと。ようやく判ったか』


 長く苦しい争いは終わった。ようやく俺の武器の名前を判る人が増えた……!このペースで続けたらある程度の人に知ってもらうのにどの位時間がかかるか、考えたくも無いなぁ。


「でも、あんな可愛い子が、大鎌なんて認知度ひっくい武器を使うなんてねぇ……。訳ありかしら?」


 ボソッと店員は呟いた。ざっつらいと。お前以外と頭良いじゃんやるな。


 丁度その直後、クラウが試着室から出てきた。


「ど、どうかしら?」

「お客様、お似合いですよー!可愛らしくて、クールで、羨ましいですぅー!」


 店員のお世辞はともかくとして、うん。贔屓目に見ても可愛い。なんて言うんだろう。素材は可愛いけど服装は寒色系だから、凄い清楚に見える。

 結論はクラウチャンカワイイヤッター!


 あ、難がこっち見てる。あれかな?おめえはどうなんだよおいってことかな?なるほど、ファッションセンス皆無な俺にクラウのファッションを採点しろと。


『……すっごく可愛いです』

『ありがとう!』


 あーら見とれるような笑顔だ。なんかもうキラキラしてる。

 てか人に可愛いとか始めていったぞ?すっごい恥ずかしいぞ?多分肉体あったらまっかっかだよ。このとき限りは武器の体にしてくれたクソジジイに感謝だな。


「では、お会計させて頂きます。買い取りさせて頂きますドレスは品質、状態、素材、どれを取っても一級品なので、少し色をつけさせて頂きます」

『そんな良いドレスだったのね、あれ』


 そりゃ一国のお姫様が着るドレスだからね。二流の物なんて着せたら、国が安く見られちゃうだろ。


「……まあ、着てた人も一級品以上だしねぇ……」


 おいこいつボソッと聞こえないようにすっげえこと言ったぞ。メルカリで現役女子高生の制服を売りに出すようなもんだぞ。クラウの制服とか絶対競りみたいなことになる予感しか無い。


「まあ、そのドレスは合わせて五百ダラで、お洋服は合わせて百四十ダラになるので、三百六十ダラのお返しになります」

「……。」


 無言で金を受け取るクラウ。あんまり良いことでは無いが、話せないから仕方ない……と、思っていると紙に何やらまた俺の判らない謎言語を書き込み始めた。


 これで感謝の気持ちを伝えるつもりか。流石クラウだな、


 それからいくつかの実験とか色々なことをしてから店を出た。あの店員腹黒いけど手伝ってくれるからありがたかったな。


「ありがとうございましたー」


 店を出て、次に向かう場所は冒険者ギルドと宿だ。取り敢えず地図っぽい物を書いて貰ったから、その通りに進んでいく。

 すると見つけました、それらしい建物。早速中に入って受付らしいところに並ぶ。


 冒険者ギルドの外装はちょっと大きめなら酒場みたいな感じ。んで、内装も酒場と受付を無理矢理くっつけた感じ。まあ、想像にお任せする。


 と、ようやくクラウが列を抜け受付前に着いた。受付嬢さんはおばさん。まあ、そんな物語みたいにbeauty受付嬢なんていな───あっれー何だかここいがいみんな美人さんぽいんですけどー。なんでクラウさんわざわざここにしたんですかー?


『この人が、一番経験が多そうだったから。私は今こんなでしょ?少しでも融通聞く人の方が良いかなって思って』

『なるほどな。確かにクラウは特殊だからね』


 なんせ話せないと来た。こりゃあ新人が相手できる相手じゃ無いぜ。


「はい次あんたね。依頼の受注かい?」


 ここでぺらっと紙を一枚。これはさっきの服屋で紙とペン借りて書いた物だ。色々沢山書かれているが、俺は相変わらず読めないので悪しからず。


「話せない、ねぇ……。じゃあ、あんたは筆談しないといけないのか」


 微妙にその認識は違う。話し相手を認識せずに書かないと、クラウは気持ち悪くなってしまう。これは服屋で実験した。


 と言うわけでくるりと後ろを向き、地面にひざまずいて紙に文字を書き始めた。待って、超待って。あなた人前なの思い出して。いきなりやるなよそんなこと。


 流石のベテランおばさんもびっくりして固まっている。デスヨネー。

 まあ、やってしまっている物は仕方ない。後は野となれ山となれ。


 すると、書き終わったのかすくっと立ち上がりぺらっと紙をおばさんの前に突き出した。


「……なるほどね。それは悪い事をしたね。じゃあ、冒険者登録するから、ちょっと待ってて貰えるかい?」


 それから暫くして、緑色のカードを持っておばさんが戻ってきた。


「それじゃあこれ持って、今日はもう遅いから宿に戻りな。明日の朝、あたしはこの受付にいるから、来るんだよ?来ないと説明できないからね」


 このおばさんええ人や……。

 その言葉を素直に聞き入れ、クラウと俺は服屋に紹介された宿屋に行って俺にとってもクラウにとっても初の城の外での一夜を過ごしたのだった。

中間テストが終わりました。結果はまあお察しです。アボガドロの所為です。

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