6話「霊石と睡魔と」
朝日と共に、俺は開発の準備に入った。
といっても、正直現実世界でも俺は銃に関しては無知だ。
それを踏まえてこちらの世界で既にあるものを改良しようと思う。
まずは分解した物の再構築の練習から始まった。
日が暮れる頃にはコツを掴み、長銃から霊石などを手元に出せるようになった。
今日はもう遅いし、魔物が俺をみてここに来る可能性があるから今日はやめておこう。
とりあえず、ライソルトたちの元へと向かうことにした。
ライソルトたちは地図を見ながら唸っていた。
俺も地図を覗き込んだ。そこには世界地図であろうものに、駒のようなものをおいていた。
「これはなんですか?」
「ん? 救世主様か、これはね魔物と人間の勢力図みたいなものだよ」
勢力図? となるとこの赤い駒が魔物だろうか。
それから、こちらの白い駒が人間の都市だろう。
赤い駒が3つ、白い駒が5つ。そのうち人間の中で強い軍隊がある都市はいくつなのだろう。
そんなことを考えるとライソルトが、駒を移動させた。
「なんで移動させたんですか?」
「これから動くであろうところに移動させただけだよ」
「人間の動きは、精霊たちによって常時伝えられてますからね」
なるほど、テレパシーと言うことか。
精霊も便利な能力もっているんだな。正直、俺も使える可能性もあるが、今は開発の事を考えよう。
まぁ、勢力図がどうとかは向こうに任せておこう。
俺はそのまま、奥に潜っていく。
先ほど聞いた話なのだが、精霊たちは排便などを行なわない。
代わりに行なわれるのが霊石の生成らしい。どういうことかというと、精霊は排便を行なわない為、身体の中で余った霊力を放出して、霊素を固めたものが霊石ということだ。
つまりこれが精霊の排便と言うことだ。
なんか嫌な感じだが、別に出しているわけではないし、生成してるのでそこは良しとしよう。
暫く歩いて奥に行くとそこは霊石の宝庫とも言おうか、かなりの数の霊石が生成されていた。
ここはもともとライソルトとダルトニアが住み着いていた事もあり、かなりの霊素が充満している。
それもあって、ここの草原は安全なんだとか。
霊石は全て、白か黒の二種類だけだ。ライソルトが光精人で、ダルトニアが闇精人。互いに属性を持っていることを表しているので、納得のいく話ではある。
霊石を眺めていると、ダルトニアがやってきた。
「はぁ、ライソルトの話は長くて嫌いです」
「相方みたいなのにそういうのはどうかと」
「相方? いえ、ライソルトとは協力関係であるだけで、そこまで仲がいいわけではないんですよ?」
「そうなんですか?」
「えぇ、互いに生存するために一緒にいるだけです。
もともと属性的に対極的な立場なのですがね……」
不安でもあるのだろうか。一緒にいるときは仲が良さそうなのにな……。
正直、意外である。
「そういえば、救世主様は霊子分解などを行なえるとか」
「ライソルトさんに言われて、練習してやっとできるようになりましたよ」
俺は目の前の霊石を分解して、再構築して見せた。
ダルトニアは、少し驚いた表情をしていた。
「すでに習得済みとは、恐れ入ります」
「なんかダルトニアさんに言われると、なんか怖いですね」
「なんですかそれっ」
少し頬を膨らませるダルトニア。
やばい、可愛い。いや、超可愛い。
こんな表情をするんだなぁ。
そんなことを考えていると、ダルトニアは森の見回りに行くとのこと。
魔物に教われないか心配だったが、空を飛べると言っていたので大丈夫だろう。
いや、俺も飛べるようにしてほしい。
それから俺は、ありったけの霊石を分解して体内に取り込んだ。
膝の辺りに違和感があるが、それが体内の容量がそこまで使われているということだろうか。
数字などで見れればいいのだが、体内で感じるということもまた新鮮でいいかもしれない。
とりあえず、久しぶりに眠気のようなものが俺を襲っている。
この眠気に身を任せ、俺は目を閉じたのだった。
一方、街へと戻ったビクスは途方に暮れていた。
目の前に見えるのは、火の海と化した街。
ところどころに見える魔物の姿。
ビクスは、精霊銃を手に街の中へと踏み込んでいく。
血と煙の匂い。
火の粉が降る中、たたかっている者、逃げようとして魔物に襲われる者。
ただ呆然と歩くビクスに、魔物は無関心らしく手を出してこない。
「一体何がおきただぁ……」
呟くが誰も反応しない。
既にたたかっていた者たちは殺され、ただの屍となっていた。
自分の家すらも燃え上がり、既に灰の塊。
家族は無事だろうか。っと、ビクスは唖然としながら考えていた。
そして、ビクスの目の前に来た魔物。
魔物のことなどどうでもいいように、ビクスは笑い始めた。
そんなビスクの頭を掴み、魔物は喉に噛み付いた……。