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4話「焚き火と再会と」


 ビスクが焚き火を熾している間、俺は長銃を眺めていた。外見だけで言えば、火縄銃に似ている。

 開口部のすぐ後ろから棒が伸びており、トリガーを引くとそれが中へと入っていく。

 はて、こんな簡単な構造であんなに早く発射できるものなのだろうか。

 疑問に思い、ビスクに簡単に説明してもらった。


「そいつは精霊長銃スピリットスナイパーライフルって呼ばれてるだぁ。

中には黒曜石(こくようせき)が仕込まれてて、使う人が霊素を送り込むと同時に、霊石(クリスタル)が霊力を帯びるだぁ。

黒曜石は霊力と反発しあう性質があってなぁ。後ろの棒の先端にも黒曜石があって、霊石を押し出すって構造だぁ」


 なるほど、要はエアーガンの応用ってことか。

 俺の知ってるエアーガンは空気を吸い込み、一気に押し出す。そうすることによって弾を発射するものだ。

 これは、それらの過程にそっくりである。

 まぁ、威力は桁違いなんだけどね。

 1つ気がかりだとしたら、なんで1発しか装填できないのかっと言うことだ。

 ビスク曰く、「そんな細かい鉄加工ができる職人はいない」とのこと。

 ふむふむ。細かい鉄加工ねぇ。

 俺の知識が、現実世界のものだからそういう発想がでただけなのかしれない。今後、魔物との戦闘が激しくなったりすれば文明は更に発展していくだろう。

 正直楽しみである。


「それはそうと、クサナギはなんでこんな森にいただぁ?

こんな魔物がうじゃうじゃいるところなんて、人は普通寄り付かないだぁ」


 この場合、精霊に召喚された。っと言うべきだろうか。

 隠してもあまり意味がなさそうだが、今後この森をでて世界を歩くことになった場合、痛手になるかもしれない。

 仮に俺に興味を持った研究者とかに命を狙われるのは、真っ平ご免だしな。

 

「いやぁ、森に入ったら迷子になってな。それであの様さ」


 とりあえず、適当に言っておこう。

 

「この近くに村とかはないし、旅でもしてたのかぁ?」

「そうそう、自分探しの旅さ」

「でもこのご時世、旅なんて珍しいだぁ」

「そうなのか?俺にとっちゃ旅なんて毎日だったしなぁ」


 ゲームの世界での話しだけど。

 だがまぁ、この世界に俺の好きな娯楽はない。

 あるのは無数の魔物と森とこの長銃。

 今はそれだけでもいっぱいいっぱいなので、娯楽は必要ないだろうけど。

 

「そういえば、この世界に名前ってあるのかな」

「世界の名前? そんなもの聞いたことないだぁ。

土地の名前と、街の名前くらいだなぁ」


 無名の世界か。

 異世界といったら名前があるものだと思っていた。

 まぁ、ないならないでいっか。当分はこの世界を堪能するとしよう。

 にしても、ビクスが持ってる情報が少なすぎてなんともいえない。近くの村は魔物によって滅んだって言うのはわかったけど、もっとこうなんていうの? 大都市とかさぁ、そういうのあってもいいじゃん。

 なのにビクスは生まれ育った街からあんまり離れたくない、って理由だけでギルドに所属したらしい。

 なお、ギルドの仕事は魔物の討伐、採集、護衛の3つだそうだ。

 俗に言う冒険者に近いのかな?

 なんやかんやでビクスは知っていること、街のこと、長銃はかっこいいなどと一人で語っている。

 なんかもう、女性の好みの話をしているので放置。

 

「聞いてるだかぁ?」

「あーごめんごめん、考え事してた。なんの話だっけ?」

「だからぁ、子供って可愛いなぁって話だぁ」


 どうしてそうなった? なにが起きた?

 ビスクはロリコンっと心にメモしておいた。

 さてと、ビスクが寝るとか言い出してるし、俺は洞窟を少し探索してみるかな。

 いろいろな情報を簡単にまとめてみた。

 霊石は、霊素と言うものを込めると本来の力を発動するらしい。

 長銃の正式名称は精霊長銃スピリットスナイパーライフルというとのこと、なおビスクが持っているのは精霊銃スピリットライフル。これは射程が短く、開口部が特殊らしい。

 どういう風に特殊か。俺の持っている長銃は装填レバーと言うものがあり、それを手前に引くと開口部が開かれる。普通の精霊銃は開口部が上に付いており、そこから霊石を入れるだけのようだ。

 要はお口が常時開いている状態なので、時々霊石が出てくるときなどがあるようだ。

 いろいろと欠陥があるように思えるが、人類はこの兵器を使うことにより魔物を退けている。兵器としての威力は文句なしだ。

 まぁそんなところだな。

 

 そんなことを考えながら洞窟へと来たわけだが。

 真っ暗だ、何も見えん。

 そういえば赤い霊石は火を出すんだっけ。

 無人の村で蝋燭持ってきたしそれで我慢しよう。

 霊石を手に持ち、少し力を入れる。すると、霊石の先端から小さな炎がでた。

 水晶のなりをしたライターとでも言おうか。

 俺は蝋燭に火をつけ、小さな灯りと共に洞窟へと入っていく。


 中は普通の洞窟と言えよう。目だったものがない。

 俺が立っていたであろう場所には、少し大きめの魔方陣が足元に描かれている。

 まだ奥があるようだし行ってみよう。


 暫く奥へと進む。

 思っていた以上に長い。そりゃもう長い。正直飽きた。

 だが、少しずつ光が見え始めたのだ。これは新たな発見かもしれないと、足を進めることにした。

 そしてその光を出しているのが大きな霊石だと判明した。

 こりゃでかい。長銃などに使われるものとは比にならん。

 そしてまだ奥があると来た。

 ん? 話し声が聞こえる気が……。

 気のせいだと思い、少し物音に意識を向けてみた。


「どうしよう、救世主様どっか行っちゃったよ」

「どちらかといえば、『おいてきた』のほうが正確なのでは?」

「いやだって、気がついたらいなかったんだもん」

「ちゃんと見てなかったからしょうがないですね」

「でも、どうしよう……探しにいこうにも外は夜だし……」

 

 どうやらライソルトとダルトニアのようだ。

 探すつもりはあったのかぁ。心のどこかで捨てられたと思ってたよ。

 まぁ心配させるのもあれだしなぁ

 俺はとりあえずふたりのもとへ行くことにした。


「あのー、自分をお探しでしょうか?」

「あ! 救世主様! ご無事だったのね」


 なにこの変わり身。会議行くときあんなに素っ気なかったじゃん。 

 正直嬉しいけど、ここまで変わられるとなんか裏がありそうって疑うわぁ。


「おかえりなさい。ご無事でなによりです」


 ダルトニアは相変わらずだった。

 そのままふたりに謝られたのだ。


「それでね、救世主様に渡したいものがあるのよ」

「渡したいもの?」

「そうそう、何ももってない状態じゃ救世主でもなんでもないからね」


 まぁ確かにな。って言っても背中には精霊長銃あるし、武器には正直困っていない。

 ダルトニアは背中の長銃に気がついたらしいが、ライソルトは気づかずに話しを進めている。


「じゃーん! これは精霊長銃っていう人間の発明したものなんだけど……ってその背中のはなに?」


 なんだろう、いきなり威圧が……

 そりゃそうなるわな、プレゼントしようとしたら相手が同じもの背負ってたらなぁ。


「あぁ、森で迷ったときに人のいない村で見つけまして」

「あ、そうなの? となると人間のものなんだよね?」


 何が言いたいのだろうか、ところどころ棘があるな。

 ライソルトの持っているのは全部真っ黒な長銃。

 スコープがかなり大きく、銃身は取り外しが可能だそうだ。


「これはね、私とダルトニアで作った長銃なの!」


 なるほど、なぜ真っ黒なのかと聞くと『全部黒曜石』とのこと。

 黒曜石は加工が難しく、今の人間の持ちうる技術ではこれほどの完成品は作れないらしい。

 つまり武器の世代が格段に違うということだ。

 

「しかもこれね、貴方の世界の技術をちょぉぉぉぉっと組み込んだのよ?」


 ん? 俺の世界の技術?

 どういうことだ?


「今人間が使ってる精霊長銃とか精霊銃は1発しか撃てないけど、これは別。

なんと4発まで撃てちゃうのだー!」

「他にも、銃身が黒曜石と言うこともあって、飛距離も長いのです」


 ダルトニアの補足説明によると、装弾部分のみの加速ではなく、銃身から発射されるまでずっと加速し続けるということらいい。

 ふむふむ、なるほど。さっぱりわからん。

 

「つまり、背中に背負ってる長銃よりも強い……ってことですか?」

「そうなの! これで世界救っちゃいなさい!」

「救うって言っても、魔物は無数に増え続けるんですけどね」

「それからね、救世主様の身体についてなんだけど――」


 ライソルトとダルトニアの話をまとめてみよう。

 まず、俺の身体は物体を粒子レベルにまで分解できるそうだ。

 これを霊素分解(れいそぶんかい)と言うらしい。分解されたものは俺の身体の一部となり、好きなときに再構築することができるようだ。

 分解したものを収納できる量も決まっているらしく、そのへんはしっかりしていた。

 そして、驚くことに同じもの同士を複製(コピー)できるという。

 つまりだ、大きな霊石を分解して体内に取り込み、精霊銃に使われる加工された霊石の形にすることが可能と言うことだ!

 霊石を体内に取り込みまくれば、ほぼ無限に弾でつかえる。

 ある意味助かる体質だ。

 それから、しばらく精霊達の話や会議の話題にも触れたが、今のところ俺に関係することはなかった。

 強いて言うなら、自然の霊石はどこにでもあるそうだ。

 そして霊石にも『属性』と言うものがあり、適応してない場合霊素を送り込んでも霊石は反応しないとのこと。

 以上の事を踏まえ、すぐに旅立たずにしばらくこの地で研究したほうがよさそうだ。

ブクマありがとうございます。

今後も頑張って執筆していこうと思います。

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