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3話「暗闇の森と初めての出会い」


 どうしてこうなった?

 俺は複数の魔物(ヤツら)を引き連れて森の中を笑顔でジョギング中。

 ジョギングなんてただの例えだ。実際は全力疾走に近い。 


「こんな世界くそ食らえぇぇぇぇッ!!」


 正直、あの無人の村にいたほうが安全だったのかもしれない。

 家を出たところを囲まれ、1匹を殴って逃走をはじめたわけである。

 今更だがこいつら足がはやい。(つまづ)いたりするとすぐに追いつかれるのだ。

 ある意味こいつらも必死なんだろうなぁ。

 そういえば村で手に入れた水晶には、属性があることがわかった。

 月明かりに照らすと、白、黄色、赤の3色があることが判明。

 白が3つ、黄色が5つ、赤が1つ。

 要は弾が9発と言うことだ。

 対して俺を追いかける魔物の数は10を軽く越えているだろう。

 振り向く勇気すらないわ。

 さっきから増えてる気もする、ここである程度倒しても逃げ回る度に増えるのでは意味がない。

 故に走る! 走れ洋祐! それいけ洋介ぇぇぇぇ!


 それからどれくらい走っただろうか。

 後ろには群れともいえよう人型の四速歩行生命体を引き連れている。

 こいつらにはスタミナとかないのかね?

 俺の場合はなぜか疲れないのだ。たぶん身体自体が精霊と同じで、霊素(れいそ)によって構成されているのだろう。

 半分人間であり、半分精霊といったところだ。

 なんかかっこいいけど……生殖器官とかその辺がない。

 まず、排便などの器官もないようだ。

 さっき触って確かめた。いやいや、これも情報の1つだよ? 重要なんだよ?

 べ、別に興味があったわけじゃないんだからね!

 ってそんなことは今はどうでもいい。

 目の前に松明だろうか、小さな灯りが見えてきた。

 人里か? この数を引き連れて行くのは抵抗がある……。

 しかし、このままでは俺が危ない。 

 どうしたものか……。




 さきほどまで一緒にいた仲間はもういない。

 街からの依頼で、近辺の森の調査をしていた一団。

 夜になり、霊石(クリスタル)による魔除けの結界を張っている途中に、彼等は襲撃を受けた。

 黒い肌。

 赤く光るひとつ目。

 人間の身体をしていながら、人を襲う生命体。

 魔物である。

 襲撃を受けた際、一人だけが逃げ延びた。

 

「……お、オラは死なない。死ねないんだぁ」


 松明を片手に、彼は森をさまよう。

 手に持つ霊石が、辛うじて魔除けの効果を彼に与えていた。

 だが力なく光る霊石は、次第と力をなくしていく。


「う、うそだぁ。やめてくれぇ。オラを家に帰して欲しいだぁッ!?」


 暗き森の中、彼の叫び声が木霊する。

 木々が荒れ始め、全身に感じる悪寒。

 彼は周りをきょろきょろと窺いながら森を進む。

 武器などもちろん持っていない。仲間が襲われた際に腰を抜かし、地面に落としたのだ。

 そのまま逃げてこの様。

 魔物は弱肉強食の中で人間の上に立つ。

 故に精霊銃(スピリットライフル)は護身用にと、街を出る者は皆携帯する。

 魔物に唯一致命傷を与えれる精霊銃。人類が開発した対魔物兵器。

 装填された霊石に、霊素を込める。

 そうすることにより、霊石は本来の力を発揮する。

 火の霊石ならば、火を放ち。

 水の霊石ならば、水を出す。

 装填された霊石は、上下左右4方向に配置された黒曜石(こくようせき)によって位置を固定される。

 黒曜石は、魔力、ならびに霊力に反発する性質を持つ。それを応用して、一時的にその場に止めるのだ。

 そしてトリガーを引くことにより、霊石の後ろの方から黒曜石を先端につけた棒が押し出され、霊石を弾きだすという仕組みだ。

 弾き出される霊石の速度は、音速にまで達するようだ。

 

 彼は、後ろから聞こえてくる足音に耳を傾けた。

 誰かが走っているのか。っと彼は疑問に思い振り向いた。

 魔物を引き連れた少年がこちらに走ってきた。


「こ、こないでくれぇぇぇぇッ!!!!」


 彼は、走り出した。

 無我夢中に、生きるために。




 さぁ、どうしたものか。

 前方に叫びながら走る男がいる。

 俺を見た瞬間に走り出したぞ。現在裸ではない、ではなぜかって? 

 まぁ簡単に言えば後ろにいる魔物(こいつら)だろうな。

 

「こっちくるでねぇ!」


 手を必死に振って走ってますねぇ。

 それじゃぁ早く走れないぞ?

 正直、俺が方向を変えればあいつは助かる訳だが。

 仕方ない、初めてこの世界で会えた人だというのに、元人間として彼を巻き込むわけにはいかない。

 俺は方向を変え、彼とは別の方向へと走り出した。

 っが、後ろにいた魔物たちは食い入るような目をしながら彼を追いかけていった。

 おいおい……。

 俺が、せっかく気を使ったのに。まるで俺が悪いみたいじゃないか。

 実際俺が悪いのだが。ここは反省するべきだな。

 にしても、俺を追いかける魔物はいなくなった。

 これで晴れて安全の土地を探せるわけだ。追いかけられた彼には謝っておこう。


「すいませんでしたぁぁぁぁッ!!!」


 さて、これからどこにいけばいいのやら。

 光精人(ライソルト)闇精人(ダルトニア)を探さなければ。

 俺を呼び出したんだ、迎えくらいは来てくれるだろう。

 暫く森の中を彷徨った。だが、一向に迎えが来ない。

 赤い点を見つけては隠れての繰り返し。できるだけ弾は温存しておいきたいのだ。

 魔物を倒せなくなったら、また地獄のジョギングコース行きだからな。

 だが、彼を放置することはできない。

 見捨てたとなると救世主の名が泣くからだ。今後ともこういうことがあるだろうし、この銃にもなれないとだからな。

 と、言うわけで彼を探して現在周辺探索に至る。

 人がいたってことは近くに街でもあるのだろうか? それとも村か?

 いやまてよ、最悪の場合街も襲われて無人の可能性がある。

 まぁ、いずれ人里を見つけれるだろう

 暫く(しばら)して、馬車のようなものを見つけた。

 馬車というより車……?

 俺は近づいて確認をしてみたが、馬車の先端に謎の煙突がついている。

 そのしたには鉄に覆われた小さなかまど。これはなんだろうか。

 見たところ蒸気機関に良く似た構造である。

 蒸気機関車の縮小版のようだ。この世界の文明はこういうものなのか?

 考えるのは後にしよう。とりあえず使えるものを探す。 

 

 ……


 …………


 ………………


 結果報告。

 俺の持っている長銃よりも銃身が細いもの、つまり普通の銃だ。

 それが3本、弾となる水晶が白が10個、赤が8個手に入った。

 たくさん銃があってもいらないので、1本だけいただくことにした。

 他にめぼしいものはなく、強いて言うなら血痕(けっこん)となぜか腕が落ちていた程度だ。

 まだ新しいもので、先ほどの彼がここにいたのか。っと、いう憶測に至る。

 それだと納得がいく。なんらかの作業中などに襲われ、逃げ延びたのだろう。

 馬車を囲うように、3方向に少し大きめな霊石が配置されていたのがなによりの証拠だ。

 さてと、彼を助けに行くか。

 探す必要など造作もない。だって、足音がずっと聞こえてるんだもん。

 とりあえず、弾も手に入った。彼のもとに向かおう。


 遠くからこちらに向かってくる複数の足音。 

 俺はうつ伏せになり、長銃を構える。

 開口部を開け、赤い水晶を押し込む。開口部を閉じ、スタンバイ完了だ!

 まぁ、どれくらい増えたのかわからんが、彼の助けにはなるだろう。

 などと考えていると、正面から彼が大群を引き連れているのが見え始める。

 望遠鏡(スコープ)を覗き込み、その数を認識する。

 うーん、軽く20越えてる

 正直彼に銃を渡し、共同戦線を構えれればをと思っていたが、必死そうな彼の顔をみると無理だろう。

 この長銃の射程距離が幾らなものかわからない。

 とりあえず俺は、彼に追いつきそうな魔物(ヤツ)目掛けてトリガーを引く。

 長銃がわずかな振動を起こすと同時に、水晶が発射された。

 目で追える速度だが、先ほどの一件で威力は確認済み。

 目先の1匹に当たると、水晶は貫通。

 続いて後ろを走っていたやつに着弾。そして炎上。

 すごい威力だと正直思う。


 次弾装填。そして構える。

 俺が射撃を行なったためか、警戒して立ち止まる魔物がいる。

 威嚇射撃程度っと言えば聞こえはいいが、既に2匹が地面に倒れこんでいる。

 まぁなんだ、これでいいのだ。これで。

 狙いを定め、俺はもう一度トリガーを引いた。

 発射された水晶は、先頭に見える1匹の頭に直撃。するとどうしたことか、跳弾をして木に着弾。

 えぇぇ……。そこヘッドショットにならないの? 

 木は赤く燃え上がり、暗い森を茜色に染めあげる。

 やらかした、山火事だ。

 俺は悪くないよ? 悪いのは魔物(あいつら)とそれと一緒にハイキングを楽しむ彼だ。

 魔物は炎に恐れをなしたのか、立ち止まりただただ燃え上がる木を見ている。

 彼はそれに気づくことなくこちらへと走ってきた。死に物狂いの顔だが、楽しそうでなによりだ。

 俺が後ろを指差すと、彼は振り向き安全を確認したようだ。


「あ、あんたが倒しのかぁ?」

「あぁ、困ってる人を助けるのが俺だからな」

「あんたが連れてきたんじゃ……」

「細かいことは気にするな」


 なんやかんやで彼と合流した。

 夜はまだ長いだろう。このまま森にいても意味がないと思うが。

 あのおふたりを探さないとだから、どちらにせよこの森から出ることは出来ない。

 考え込む俺に、彼は道案内をすると言ってくれた。

 俺がここに至るまでの経緯を話すと、場所はわかるっとのこと。

 とりあえずついて行きますかね。

 一応護身用に彼にも銃を渡しておいた。




 それから暫くの間森の中を歩きに歩き回った。

 同じ風景にしか思えないが、彼は道を熟知しているようですぐに草原にでた。

 最初に俺が目を覚ました道具だろうか、暗闇の中でもわかる。

 なぜわかるのか。それは俺にもわからん、たぶん目が慣れたんだろう。

 そこまではっきりと見えるわけではない。ただ、少し明るく感じるだけだ。

 彼が言うには、ここの草原は精霊の力により魔物はなかなか入って来れない。

 なので今夜はここで、野宿をする予定だったところ、魔物の群れに襲われたっと言うことらしい。

 なるほど、そりゃ災難だわ。

 ここにいればおふたりも戻ってくるだろう。


「そういえばあんた、名前はなんて言うんだぁ?」

「俺は……」


 そこで思った、ここは異世界。現世の名前必要ないんじゃね? 

 我ながら、今日は冴えている日である。だが、どのような名前にしようか。

 考えたが言い名前が思いつかなかった。

 

「俺は草薙だ、君の名前は?」

「クサナギ……聞きなれない名前だなぁ。

オラはコロビクス・フェルシスタ。気軽にビクスって呼んでくれるとありがたいだぁ」

 

 長い名前だ。まぁビクスという愛称が気に入ってるらしく、呼ぶと笑顔で「おう」っと答える。

 まぁ仲間が死んだのは正直ご愁傷様としかいえない。

 聞くところ、労働組合(ギルド)というところで会わされたばかりのメンバーらしい。

 ギルドがあるのか、未だにこの世界がどういう世界なのかいまいち把握できていない。

 今後活動することを考えると、ビスクからいろんな情報を聞いておいたほうがよさそうだ。

筆が止まりませんぞ!

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