表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

2話「見えない精霊会議と迷いに迷った森の中で」


 世界樹(ユグドラシル)!なんといい響きだ。

 しかもそこで精霊達の会議とな?

 連れて行かないといわれてもついていく!

 とまぁ、現在進行形で山を登っているわけなんだが。

 暫くの間、山道を楽しみながら登り終え、やがて下り始める。

 その頃には太陽が真上に来るか来ないかのところに位置していた。

 

「そういえば、君はなんて名前なんの?」


 振り向きながら笑顔で聞いてきたぞ。

 普通人の名前聞くときは自分から名乗るものだろう?

 こいつ常識ないのか?

 まぁ、異世界はこんなものなんだろうな。


「自分は草薙洋祐って言います」

「へー、そうなんだ」


 会話終了。

 さっきより素っ気ないじゃん。

 なにこのゲームのガチャではずれ引いたときの反応。

 俺はずれ? はずれちゃったの?


「ところで、自分の身体男にしてもらえません? なんか落ち着かなくて」

「落ち着かない? ん~、男の子の身体にするのは簡単だよ! えいっ!」


 彼女が俺に手を差し伸べると同時に、身体が光だし、やがては形を変えていく。

 おぉ、これぞ男の身体!

 って……ん?

 まだ落ち着かないぞ。

 嫌な予感がして、俺は下を見た。

 ……ない。ないのだ。息子が。

 

「息子おおおおおおおおおおッ!!!」


 俺の絶叫が森に木霊した。

 



 落ち込む俺を無視して、2人は山を下っている。

 なんだろうこの扱い。

 未だに裸なんだが、いい加減どうにかして欲しいというのが本望であるのだがな?

 下半身無性なんだよ、つるぺたなんだよ。

 隠す必要性ないんじゃないかって思い始めたわけよ。

 開き直ると寂しくなってくるわ。童貞のまま消えていった息子……南無南無。

 正直言うと、生前のうちに卒業だけはしてあげたかった。

 まぁ今となっては叶わぬのだがなぁ。

 ふと、前を歩く2人の事が気になった。

 精霊の会議にでると言うことは、この2人も精霊なのだろうか?


「あの、お2人は精霊なんですか?」

「ん? 精霊っていうより私達のほうが精霊より上?」

「その言い方だと、周りを見下しているようですよ?」

「あはは。そうだねぇ、私達は精霊が集まってできた生命体? とでも言っておくよ」

「生命体……?」

「私は光精人(ライソルト)っていう種族ね」

「私は闇精人(ダルトニア)って呼ばれてます」


 光精人? 闇精人? なんだそりゃ。

 正直初めて聞くわ。

 2人の話を聞くと、まずこの世界には俺のいた世界と異なる文化、文明を得て成り立っているそうで。

 そして、俺の世界から転生希望者を探しているときに、神と会ったらしいが初めて神と言う種族に会ったそうだ。 

 つまり、この世界には独自の文明があり、神が存在してないこともあり宗教もないということだ。

 んー。正直どうなんだろうね神様いないって。

 まぁ、そのへんは追々かな。


「なるほど。それでお2人の名前は?」

「名前なんてないよ。私達は一人しかいないし、呼ばれているだけだからねぇ」

「ですね。名前なんて不要だと思ってますし」

「名前なくても不便してないようですね……」


 正直この二人の呼び名が困る。

 どう話かければいいのかもわからないしなぁ。

 そんなことを考えていると、前方に見える森に一本だけ馬鹿みたいに高い木が聳え立っているのが見える。

 でかい……あれが世界樹!

 名前から想像できるほど大きい!

 そしてなんともファンタジー!

 さすが異世界!

 

「あの木の下で会議があるのよ」

「会議って言っても何を議題に行なうんですか?」

「それがねぇ、人間の開発した文明が魔物を生み出しちゃって。私達も困ってるというか」

「その結果、異世界から救世主を召喚するという流れになりまして」

「召喚しちゃったっ」


 「召喚しちゃったっ」じゃねぇよ。

 可愛い笑顔だけどさ!

 さてさて、今度は救世主とな?

 え、俺が? 特技なし、武術の心得なしの俺が?

 まっさかぁ~ないって。


「ってことで救世主として世界救ってね!」


 軽く言われた。

 何なのこの扱い。そろそろ泣くよ? 童貞泣かせて楽しい?

 だがまぁ、世界を救えっか。

 考えると壮大な物語になりそうだが、魔法とかもあると思うし大丈夫だろ。


「自分、なんか特殊な能力とかもらえる感じですかね?」


 とりあえず、異世界転生といえば能力だ!

 そこで強大な能力を得て、女の子にモテてハーレムを……ッ!


「え? なにそれ」


 ダメだったああああああ!!!!

 これあれか? 死んだら終わりってやつ?

 裸だし……まぁ、その辺は近くの村とかで……ってこのまま言ったら変質者じゃないか!

 あぁ、なんか萎えてきた。


「能力っていうか、その体は霊素でできてるから。不老不死(老いず、死ねない者)に近いと思うよ?」


 なんと! 不老不死ですって!

 だけど聞いたことがある、不老不死は呪いでもあると。

 長い時を一人で過ごし、なおかつ死ねず歳もとれず。

 やがては周りが爺婆になって、ひとり孤独に……


「不老不死……以外は……?」

「んー。さっき性別変えたよね? たぶん自分の意識でも男か女になれると思うよ」


 なんと! こんどはなかなか嬉しい能力だ。

 男の身体に飽きたら、女の身体に……ぐへへ。

 けど待てよ? 男の現時点で無性。最悪の場合女体になっても無性。

 俺の浪漫が……。


「さっきから、落ち込んだり笑ったり忙しいね」


 ちょっと嘲笑いに近い笑みで言われた。

 気持ち悪がられているようだ、気をつけよう。

 

「あとちょっとで着くね」

「もう全員集まっている頃だろう」

 

 2人はもう会議の話はじめてるし。

 とりあえず、会議とやらが終わったら女体化の練習をしよう。

 それから暫く歩き、世界樹の根元へとやってきた。

 だが、誰一人としていない。


「精霊だからね」


 俺が聞いたらそう返された。

 そういうものなのか。納得していいものか……。

 まぁ見えないものを見ようとしても意味がない。

 無意味なことは放っておこう。

 それから、光精人は喋り始めた。




 独り言かと思って聞いていたが、どうやら話をしていたらしい。

 途中俺の紹介も入っていた。

 なんやかんやで会議は終わったらしく、再び俺を連れて森の中へ。

 日が暮れ始め、あたりが茜色に染まっていた。

 なんと綺麗な光景だろうか。

 そして、はぐれた。

 

「おふた方~ッ!」


 反応がない、どうしようか。

 どうすればいいのだろう? とりあえず来た道戻ってみるか。

 そう思って森の中を散策中。

 さらに迷った。

 あれえ? ここどこだ?

 暗闇の森。

 聞こえるはフクロウのような不気味な鳴き声。

 あらやだ、怖い。

 だが安心していい。俺は不老不死だからな!

 そんなことを考えつつ森を歩いていると。

 赤い点が動いているのが見えた。

 なんだあれ? こっちに向かってくるけど……。

 とりあえずここを異世界だと甘く見ていた時期が、私にもありました。

 赤い点は四速歩行の人間のようなやつの目だった。

 俺を見つけると同時に走り出したようで、赤い点がいっきに俺の元へ向かってきた。

 肉薄してからやっとわかった。俺に噛み付こうとしてきたからだ。

 いや、もしかしたら人間ではないかもしれない。どちらかといえな、さっき聞いた魔物?

 まぁなぜかゆっくりと噛み付いてきたのが見えたから、ぶん殴っちゃったよ。

 この身体、不老不死しか能力ないと思ってたけど、意外と身体能力が高いようで、知覚能力もおかしい。

 正直驚いてる。なんだこの身体。

 そのまま戻ってくるこいつもすごいと思う。

 何度立ち上がる気だ……。

 殴ってるこっちが悲しくなってくるわ!

 殴ってて感じたんだけどこいつめっちゃ硬い。そしてすぐに起き上がる。

 ダメージが入っていないのか? 

 

「くっそ、もう起き上がるなよッ!」

 

 渾身の力を込め、俺は魔物に蹴りを入れた。

 よろめき、やがて膝をつく。

 すると同時に、あたりに不穏な空気が立ち込め始めるのを感じ取った。

 嫌な予感だ、すごく嫌な感じ。

 このまま戦闘を続けるな逃げろと、脳が警告アラームを鳴らし始める。

 本能のままに俺は、その場を後にした。

 森を駆け、遠くへと逃げる。

 ここがどこかなんて考えもう捨て去った。

 なんとしても生き残る、それしか考えられなかった。

 不老不死だからっと言うのはこの際置いておく、実際に死ぬ可能性があるからだ。

 その場合、即座に復活するかしないかもわからない。

 不安要素があるものは信じないようにしよう。


「まったく、ここはどこだ? ん?」


 家のようなものが見える、とりあえずあそこまで逃げよう。

 あそこで夜を明かし、2人を探せばいいのだ。

 考えるが早く、俺の足は村へと駆け出す。

 



 村は無人だった。

 あたりに血痕があるだけで、他は空っぽの家々が立ち並ぶ。

 村の大きさはそこまでって感じだ。30人ほどの住民がいたのだろうか。

 家の数は10軒と少ない。

 

(とりあえず、使えそうなものを探さないと)


 さぁ、家捜し(やさがし)の時間だ!

 いや、泥棒じゃないよ? だって誰もいないんだもん。貰うだけだもん?

 まず一軒目、中は質素だ。ツボ、机、椅子、かまど、以上。

 ツボの中を覗き込むが何もない。

 ここは食事をする家なのだったのかな?

 さて、次の家に行こう。

 二軒目。

 家の中は少し贅沢な感じだ。

 敷物、ベット、机、椅子、タンス。

 ベットの上には毛布があった。

 緑色ををした毛布だ、寒気などはないが身を隠すには使えるだろう。

 なんか獣臭い。

 とりあえず臭い、我慢できるほどだが……。

 次にタンスを漁った。服がぎっしりと入っている。

 これはいただこう。

 とりあえず、見た目は普通の村人って感じになった。

 皮の服に、布のズボン、緑の毛布。

 防御力が心配だが、ないよりはましだ。

 さぁ次の家へ……。

 そのまま家捜しを続ける。

 ゲームなどの知識があったこともあり、俺は家を次々と漁り使えそうなものを集めていく。

 最後にとっておいた大きな家。そう、ここにはいいものがありそうだ!

 中へと入る。

 二階建てと言うこともあり、この家は村長あたりが住んでいたんだろう。

 まず一階。

 壁に掲げられている松明、机、机上の蝋燭、なぞの石、椅子、そして大きな木箱。

 木箱発見! これはお宝の予感。 

 俺はわくわくしながら木箱を開けた。 

 そこに入っていたのは、少し銃身の長い銃。

 俗に言う『長銃』である。

 銃の上に、望遠鏡の小さなものがついている。狙撃銃(スナイパーライフル)だろうか。

 他、箱の中には水晶のようなものが布袋に入っている。

 これはあとあと使えそうだ。

 布袋を腰に巻き付け、銃の両端に繋がっている紐を結び、背負った。

 二階は、ベットしかなく収穫なし。

 ここで武器が手に入ったのがなにより嬉しい。

 だが、肝心の弾がわからない。

 一応装填レバー(チャージングボルト)を引くと開口部が出現する。

 たぶんここに弾が入るのだろう。

 ためしに、さっき手に入った水晶を入れようと試みた。

 すんなりと入る。開口部と同じ大きさであり、どうやら合っていたようだ。

 次の弾を込めようとしたが、入らない。どうやら装弾数は1発のようだ。

 ないよりはマシか。

 レバーを戻し、開口部を閉じる。

 長銃を持ち、それなりの構えをしてみる。

 俺こういうの好きだわぁ。

 しかし構造が気になるものだ。俺の知っている銃は火薬を炸裂させて、鉛弾を撃ち出すものだ。

 だがこれは水晶。

 明らかに構造が異なる。こんなもので武器と呼べるのだろうか。

 などと考えていると、つい引き金を引きたくなる。

 いいよね? 引いていいよね?

 カチャっっと音を立てるが、何も起こらない。

 ダメじゃん……。

 俺氏、絶望、そして失望。

 まぁ、後に使うことができるだろうと、握る手に力を込めたときだった。

 パァァァンっと音を立てながら天井に赤い閃光が走った。

 ……へ? ナニガオキタノ。

 理解不能、ただその一言だわ。

 とりあえず、力を込めると撃ち出す……でいいのかな。

 試したいけど、さっきの魔物が追いかけてきてることを考えると、今日はこのままじっとしているほうがよさそうだ。

 ベットもあるし、少し休むか

 俺はベットに長銃を立てかけると、そのまま寝転がった。

 眠気も、疲労感すら感じない。本当に人間の身体ではなくなってしまったようだ。

 目を瞑り、羊を数えてみた。20匹ほど考えて飽きる始末。

 とりあえず、じっとしていよう

 そう思い、俺は身を包めようとした。

 ギシっギシっっと足音のようなものが聞こえる。

 魔物(ヤツ)がもう来たのかッ!?

 早すぎる、全力で走り去ったはずだ。

 そういえば魔物を発生させたのは人だって言ってたな。

 となると森は群生地なのか?

 足音が階段に近づいてくる。

 ギシっギシっギシっ……。

 ドタドタドタッ!!!!

 バレたかッ!?

 急いで銃を持ち上げ、階段に照準を合わせ構える。

 さぁこい、このよくわからん銃で仕留めてやる!

 勢いよく昇ってきたのは、黒い皮膚をした人間。

 

「そこで手を上げろ! あげない場合は撃つぞ!」


 一応忠告くらいしてあげないと、ね?

 だが、相手は俺を見るや襲いかかってきた。


「あー、もう知らないからな! 食らいやがれ!」


 俺はトリガーを引いたが弾が出ない。

 あ、装填してない。

 

「ちょっとタイム! タイム!」


 部屋の中で奇妙な追いかけっこが始まった。

 こいつ馬鹿なのか? なんで直線上に追いかけてこない……。

 そんなことどうでもいい、早く水晶を入れないと。

 開口部を開き、水晶を押し込む。

 

「さぁ、かかってこいや!」


 俺は、振り向き様にトリガーを引いた。

 確かな手ごたえとでも言おうか、少しの衝撃が銃から俺の手に伝わる。

 と、同時に黒い人間体の生物は炎に包まれ、床を舐めた。

 

「あっぶねぇ……こりゃ洒落にならないわ」


 目の前に落ちている焼死体? を見ながら、俺は階段を下り、家を後にした。

 ここにいては危ない。そう判断したのである。

結構気にしないで書いていたら文字数が……

これからも更新頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ