1話「転生と少女の身体となぜか異世界と」
一人称書きやすいですね
小さな洞窟の中で、二つの人影が魔方陣を練っていた。
「さっきの人、来てもいいって言ってたから大丈夫よね?」
「さぁ、私に聞かれても困ります」
「なによ! 一緒に喜んでたくせに」
「それはそれ、これはこれです」
足元に描かれた魔方陣に、霊素を流し込む。
魔方陣は光を帯び始め、やがては人の身体へと変わった。
華奢な身体。
綺麗な白い肌。
純白とも言えよう、長い髪。
容姿だけで言えば、それは『少女』の身体そのものだった。
「これでよかったのかしら……」
「相手は男の人じゃありませんでした?」
「まぁなんとかなるわよ」
溜め息を吐き出すと、一人は外へ。
そして残る一人は、その身体が動き出すのをじっと待つのであった。
暫く待っていたが、少女の身体が微妙だにせずに佇んでいることに飽きたのか、もう一人も外へと出て行った。
洞窟を出て行くその背中を、突如として開かれた少女の瞳が見ていた。
誰かに見られている気がした。
てか、刺されて確か死んだ……はず? なのかな。
どうなんだろうか、その辺がいまいちわからない。
死んだらどうなるとか、死なないとわからないのだから。
だからといって、意識がはっきりしているのは何でだろうか。
とりあえず現状確認。
まず、この手を握る感触はなんだ?
誰かそこにいるのだろうか?
しかし解せん、いきなり「つまらなーい」などといって手を離しおった。
つまらんとはなんだ! 俺は死んだんだぞ!
俺にとっては大問題である。
次第と身体が言うことを聞くようになってきた。
まずは目を開けるか。天国はどんなものだろうか知りたいしな。
だが、俺を待っていたのは天国ではなく、薄暗い洞窟? 入り口のようなところから明かりが差している程度だが、周りはしっかりと認識できる。
いやいやいや、いかにも洞窟だから。
そういえばさっき俺の手を握ってたのは誰だ? あ、あの人か?
俺は入り口から出て行く人影を見た。
どことなく人間らしいけど、なにかが違う気がした。
死ぬ前に異世界がどうとかも言ってた気が……まぁ、今はどうでもいいか。
とりあえず外に出てみようか。
俺は入り口に向けて足を進めた。
けどまぁ、死んでも歩く感触とかもリアルっていうかなんていうか。死後の世界ってこんなものなのか?
そんなことを考えながら、俺は外へと出た。
一面に広がる草原。
風が吹き抜けるが、暖かいのか涼しいのかわからない。
「あ、やっと動いた!」
「やっとですね」
突然後ろから声を掛けられた。
ん? 動いた? 俺のことかな。
振り返ると、そこには白い服を着た女性と、黒いローブのようなものを着た女性が座っていた。
なんか雰囲気が独特だな。
「動いた、とは?」
あれ? 俺こんな声してたっけ。
いや、待てよ? さっきから違和感程度に思ってたけど、歩幅も違う。
んんんん? 何が起きてるんだ。
「新しい身体は気に入ってくれた?」
「新しい身体……?」
どことなく嫌な予感がしてきた。
下を見る勇気がわかないが、見なけりゃ始まらん。
とりあえず、ちら見。
控え目な胸、綺麗な肌……。
あらやだ、胸がありますわ。
って、なんで胸あるんだよ。おかしいだろ。
「あのー、なんで女の子になってるんですかね」
「貴方を召喚するときに身体を作ったのですけど、どうやら性別を間違えたようですね」
「まぁ可愛いからいいんじゃないかな?」
「ん? 召喚?」
何を言っているのだろうか。
俺は死んで天国に来たはずなのでは?
「さっき電話で異世界行ってもいい的なこと言ったじゃん!」
「あ、さっきのいたずら電話の人ですか?」
「いたずらじゃないってばー!」
どうやら、さっきまで電話をしていたのが、今目の前にいる彼女のようだ。
声からは想像できないほどの美貌に、俺はどことなく違和感でも感じとっていたのだろうか。
どうりでわからないわけだ……。
にしてもだ、俺は天国ではなく、異世界にきてしまったのだろうか?
それはないだろ。
だが、目の前の彼女は電話の相手。
俺なんか言ったのかなぁ……いまいち思い出せないや。
「まぁ話は世界樹でしましょう」
「そうだね、そろそろみんな集まってるだろうし」
「自分もついていく感じですかね? てか、ここどこですか?」
「ここ? ここは君にとっての異世界。私達にとっての故郷!」
あーダメだ、頭が追いつかん。
やっぱ異世界なのかぁ、素直に喜ぶべきか?
裸の女の子が草原のど真ん中で歓声を上げるって、絵面的にどうなの……
考えるだけ無駄かな、とりあえずついていって聞き出せればいっか。
なんやかんやで2人は仲よさそうに話をしている。
てか、異世界だよ? 召喚されたわけだよ?
普通「ようこそ勇者さま」とか「良くぞ召喚に応じた!」とかさ、「おぉ勇者と死んでしまうとは情けない」とか言って欲しいんだけどさ。
なにも言わないよねこの人たち。
「まぁいこっか」
「そうですね、みなさんを待たせると悪いですし」
「さっき言ってた世界樹?」
「そうそう、精霊会議をやるのだー!」
精霊会議!
なんと響きがいいのだろうか。
と言うことは、可愛い精霊とかかっこいい精霊とかいるのかな。
俺はわくわくしながら2人の後に続くのだった。
この調子で書きまくります!