魔獣と人間
正月は終わりました。
「……ん?」
しかし、いつになっても痛みは訪れない。
恐る恐る目を開けるとそこには確かに剣を振り切ったレティアの姿がある。
だが、その剣が突き刺すのはスゥの脱け殻の崩れかけた細胞の塊だった。
「よし。これで化け物は退治したね」
「……そうだな。万事解決だ」
「呆気ないもんだねー」
彼女たちは口を揃えて一連の出来事が解決したと言う。
「え? どういう……」
「そのまんまの意味だよ。スゥちゃんとテトラちゃんを飲み込んでいた化け物の皮は剥がれ落ちて討伐された。もうここには倒すべき敵はいない」
「そうそう。まさか人を殺すことなんて出来ないからな」
「みんな……」
彼らはテトラたちを化け物ではなく人として扱ってくれている。
落ちた外皮こそが化け物の本体であると言うように。
「でも私たちはたくさん迷惑をかけた……」
「そうだね。国民は許さないと思う。もうこの街にはいられないだろうね」
その待遇は当たり前だ。
仮にも王を殺し、街に甚大な被害を与えこれだけの事をしておいてただです無はずがない。
やはり裁判を受けるしかないのか。
「ま、取り合えず後の事はこっちで何とかするから逃げて」
「……いいの?」
「これだけの被害は出てるけど今回の戦いでは何故か奇跡的に死人は0みたいだからね。大した追求はされないでしょう」
「それって……」
「そう。スゥちゃんの気持ちは伝わってるわ」
街はいくらでも建て直せば良い。
むしろその修復に伴う公共事業で獣人の有用性を示せる。
「「「おおぉぉ!!」」」
そして何より王の野望を打ち砕いただけでなくこうして共闘をさせ、お互いの信頼を高めた。
聞こえてくる勝利の雄叫びがその事実を如実に語っている。
振り返ると人間獣人関係なく抱き合って喜ぶ兵士たちの姿が見られた。
ここにもう生け贄は必要ない。
「だからさ、またいつか会う日までお別れだね」
「レティアちゃん……」
「それに今のあなたは一人じゃない。そうでしょう?」
「そうっすよ! 何処に行ってもあたしがついてるっす!」
「ミュー……うん。行く。行こう」
テトラは目尻に滲んだ涙を拭い差しのべられた手をとった。
「わたしは……いかない」
だが、その逃避行に異を唱えるものがいた。
「スゥ……」
「わたしはどうあがいてもまじゅう。だから、もういっしょにはいけない」
人に最も近づいた魔獣は目をそらすと頑なにその場から動こうとはしなかった。
まるで死に場所をここに定めたかのように。
人と魔獣の境界線を引いたように。
「そう……」
「え? わっ……なにを……!?」
なのでテトラはコルオンの帯刀していた剣を引き抜くと自らの腹を切り裂いた。
余った餅を食う日々です。
戦車の映画は見ましたが全話を纏めて見たいって思いました。




