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一から造るスライム牧場  作者: 白井アレ
第1章 前世と現世
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復讐

動物って結構恨み持つらしいですね。


 ――――獲物の臭いがする。


 大きな熊の魔獣はスンと鼻を鳴らすと昨日自分を傷つけた人間の匂いがまだ小屋の近くにあることを確認する。

 獲物が自ら近づいてきたと油断して飛び出したら目を傷つけられ、驚いて逃げてしまったが今度こそ仕留めてやるとまだ無事な右目を爛々と輝かせた。

 魔獣は逃げた翌日の昼にも武器を持った人間達と遭遇したが難なく撃退することに成功して自信を持っていた。

 人間は武器さえ封じ込めてしまえば何もできない非力な存在だと理解したのだ。

 そんな奴――――それも子どもにやられたこの目の傷は自らの油断だったと猛り、唸る。

 ここには腹が十二分に満たされるほどの獲物がいたのだ。

 だからまだたくさんの食糧があるはずである。

 邪魔な小さな人間を食い殺して探そう。


 「グルル……」


 そこらでとれる野生の物とは違う良く脂の乗った家畜の味を思い出した魔獣は舌なめずりをしながら足音を消して小屋へと近づいて行く。

 その頃小屋の中のテトラはと言うと――――。


 「おぇぇぇぇ……」


 床にスライムを吐いていた。

 不味い上にそもそも食料ですらないものを食べ過ぎたのだ。

 体が受け付けないのも仕方がない。

 吐き出されたスライムは未だ生きているようで酸っぱい臭いをさせながら蠢いていた。


 「気持ち悪……」


 さすがに無理をしすぎた。

 ただの人間がこんな短時間で強くなれるはずがないのだ。

 せめてコンディションだけでも整えようと深呼吸していた矢先のことだった。


 バキッ、メキィ


 家の扉が壊される音がした。


 「いやいやいやいや……まずくない?」


 状態は不良。

 準備は不完全。

 タイミングとしては最の悪だ。

 血の気が引く。


 「んなこと言ってられないか……」


 そんなんでも敵が来たのならば戦闘に入るのは必然だ。

 なんせ相手は野生に生きる獣。

 話し合いは通じないし人間の子供如きの脚力じゃ逃げ切れず、隠れても人の数倍もある嗅覚ですぐに見つかるだろう。

 ならば迎撃するのが賢い選択肢だ。


 「熊には死んだふりも逃げるのもよくないって言うしねっ!」


 テトラは口を袖でぬぐうとすぐ近くに置いておいた短剣を震える手で取り迎え撃つ姿勢を取った。


 メキキ……


 それからすぐに部屋のドアから魔獣の鋭い爪が顔をのぞかせた。


 ベキッ


 そしてもう一度切り裂かれたドアは完全に破壊されてバラバラと言う音と共に地面に崩れ落ちた。


 「……ど、どうも」


 現れたのは腕の一本だけでテトラと同じくらいの大きさはある熊の魔獣だった。


 「グルルゥ……」


 比較的明るくした部屋の中に獣臭が充満する。

 その大きさは昨日の暗闇の中で見た姿よりも大きく見える。

 なんせドアの枠から大きくはみ出ているのだ。

 本当にこんなものを撃退したのかと苦笑するがその左目に刻まれた小さな切り傷が正真正銘、昨日の魔獣である主張していた。

 お互い相手を確かめ合うこと数秒。


 「グオォァ!」


 熊がテトラを食い殺さんとドア枠を壊しながら突撃してきた。


 「うわぁぁぁぁ!!」


 ベキベキと壊される家を背にテトラは窓から逃げ出した。

 自分で「逃げるのもよくないって言うしねっ!」と言っておきながら逃げた。

 だが無理もない。

 人は恐怖と相対した時逃げる以外の選択肢が頭から消失するのだ。

 いくら脳内で熊と戦う自分を完璧にイメージしても実行できるわけがない。

 しかし向かう先は夜の暗い森の中。

 夜目の効かない人間であるテトラにとって圧倒的に不利なフィールドだ。


 (どうするどうするどうする……!?)


 テトラは混乱する頭で必死に考えた。


 「グオォォォ!」

 「ひぃっ……!!」


 だが考える暇もなく背後から迫る魔獣の咆哮が夜の帳を切り裂く。

 今はただ森の中へ逃げるしかない。

 それがすぐに全力で追ってこようとしない魔獣の思惑通りだと気づいていたとしても。


クラスにテロリストが来たらやっつける妄想してもそれ、アニメとかの世界の話だからね……。

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