共闘
とにかく炬燵が欲しい気温になってきました。
しかし、いざ出すと炬燵の異次元に飲み込まれて一瞬で年が明けてしまうので出していません。
寒いです。
終焉は嵐のような風を纏ってやって来た。
空を多い尽くすほどの大きな翼をはためかせ、迎え撃つ人間と獣人の混合軍を睥睨する。
「そんなのありかよ……」
誰かが呟いた。
その言葉に誰もが共感した。
何故なら彼らの頭上には空の覇者である大きな赤いドラゴンが羽ばたいていたからだ。
「グォォォォォ!!」
「うわぁぁぁぁ!?」
着地と咆哮の一鳴きで人が紙のように飛び、隊列が放射状に大きく乱れる。
皆の顔が恐怖でひきつり、魔獣の恐ろしさに腰を抜かした。
「怯むな! 奴は空の覇者に非ず! ただの偽物だ!」
恐慌状態に陥るかと思ったその時、レイモンの魔力を乗せた声が街中に響き渡った。
「昔を思い出すな」
レイモンは懐かしむように微笑んだ。
それは戦争において軍を指揮するときに使うような方法であり、聞いた者の心を鼓舞する。
そして強大な敵に立ち向かうときの蛮勇を引き出すのに最も効果的であった。
「これはささやかな贖罪だ」
獣人との戦争の際、最前線で指揮を執ったその功績をたたえられ教会のトップに君臨したレイモン・サバータは魔術により数百年の時を生きていた。
だがその長い時を生きても忘れられず胸につっかえてにいたのは侵略行為に対する後悔と自責の念。
その全てを吐き出すように大きく息を吸い込むと喉の奥底からありったけの声を出した。
「全軍! 突撃ぃぃ!!」
「お、おぉ! おぉぉぉ!!」
一人が戸惑いながらも雄たけびをあげ、やがてそれはその場にいたすべての人間に伝染して行く。
「「「おぉぉぉぉ!!」」」
親衛隊が、騎士が、雑兵が声を上げ、重なり合った声で大地が揺れて建物が震える。
その場は高揚感と一体感に包まれていた。
そして地面の揺れが収まるころにはその場に恐怖は残っていなかった。
「おらおらおらぁー! この右腕が見えねぇかぁぁ!?」
そこから先陣を切ったのは一個小隊を護衛に付けたコルオン。
右腕を振り回してスゥの気を引く。
スゥはやはり自分と同じ臭いがするものが気になるのかコルオンの動きに沿って首を曲げた。
「俺たちも負けていられねぇぞ!」
「「おおっ!」」
このように大きな個体で来る想定もしていたのだ。
コルオンに触発された待機中の兵士たちも近くの網の投てきや縄を使って拘束を試みる。
「くそっ! やっぱだめか!」
だがその全てがスゥの動きを一瞬とめるだけですぐにスライム化して抜けていってしまう。
ほとんど効果が認められなかった。
「魔術師部隊! 起動準備!」
そこで彼らは第二の作戦に出る。
「ヘビーレイン!」
魔術師たちが結託して王都に洪水レベルの雨を降らせた。
そんなことをしたらテトラの体積が増えるばかりで強化してしまうのではないかと思うがこれもしっかり考えての行動だ。
「あいつも生き物! 限界があるはずだ! どんどんやれ!」
いくらなんでも食らうスライムとはいえ神ではないのでその内包できる量は無限ではない。
それに体積が増えれば必然的に体重も増え、その翼や足は自重を支えきれなくなる。
「グオォォォォ……」
やがてスゥはズゥゥンと大きな音を立ててその巨体を地につけた。
「今だ! 囲め囲め!」
兵士たちは一斉にスゥに飛びかかる。
だがスゥもそう簡単にやられはしなかった。
「グオァァァァ!」
空を仰いで咆哮すると彼女の身体は分裂した。
そしてその分裂した個体それぞれが大小さまざまな魔物の姿へと変化して行く。
「こりゃまた厄介な……」
敵の種類が一種類なら対処は楽だ。
だが複数となると話は変わる。
大きい熊の相手をしている間にネズミが鎧の間から入り込んでくるようなもの。
「まぁ問題は……ないか」
だがこちらには圧倒的な数の利がある。
連携して物量で責めれば怖い物などない。
そしてレイモン傘下の軍が分裂した魔獣の相手をしているその間に――――。
「数日振りだね。テトラちゃん……いや、今はスゥちゃんなのかな?」
レティアを筆頭にミューやコルオンなど彼女と関わりのある中核撃破組が兵士たちによって開けられた剣戟の隙間から分裂後で形の定まらないスゥの元へ集まってきていた。
「ごしゅじん……今助けるっす!」
今、スライムの化物と人類の最後の戦いが始まろうとしていた。
あああああ!!
背中が痒い!




