スゥ・グロウリィ
ちょっと遅くなったけど寒いからしかたないね。
初めは森の中を動き回るだけのはっきりした意思もないただの虫のような存在だった。
それから人間に育てられ、徐々に「個」と言うものを認識できるようになっていった。
そして私はスゥと言う名を与えられ、やがてその人間を助ける形で寄生した。
その際、彼女の記憶が一部流れ込んできた。
どろどろとしていてそれでいて楽しそうで悲しい記憶。
私は彼女の目的を知ると共に手伝おうと思った。
やがていくつかの出会いと別れの後に宿主は目的を成就して前世への未練を断ち切った。
だが今度は自分達がピンチに陥った。
そこで私は宿主からの命令通り宿主の体を完全に乗っ取り、人の意思と知恵を持った完全なる魔獣となった。
だから真の魔獣のように振る舞った。
人間も獣人もみんな食べてしまう鬼のように。
そうすればきっと――――全ての人間は私を敵と見做すだろう。
「グルル……」
ふと鋭くなった知覚が自身の天敵となる存在が王都に集合していることを感じ取った。
スゥは不適に笑う。
すべては筋書き通りだ。
スゥは鉤爪と薄い膜の付いた大きな羽をめいいっぱい広げ、羽ばたいた。
それだけで大地が砂煙をあげて削れる。
2回目より3回目。
3回目より4回目。
羽ばきを強めながら勢いよく地を蹴るとその大きくなった体は宙に浮いた。
向かう先は王都。
その先に待っているだろう人間と獣人の混合軍。
これはスゥが人間を学び、得た知識でひねり出した作戦であった。
全ての争いを終わらせるための。
スゥ・グロウリィという化物なったその存在を終わらせるための。
足元から温めると良い。
全身が暖まりますよ。




