策
この時間ってお腹すきますよね。
「私自身の戦闘力は期待しないで欲しい。ただ自分の故郷を守りたくて帰ってきた頭でっかちだからね」
レティアは冷や汗を流しながら迫る異形の軍勢に細剣を向ける。
だがその前に出る者がいた。
彼女の連れていた兵士達だった。
「そんなことありません。我らが王よ。貴方様は先の大戦で戦を終わらせるために自らの命をなげうってくださいました。今度は我々の番です」
「君も私の守りたい命の一つだよ。最後まで守られて欲しいのだけど……」
「そう言うわけにはいきません! ここは我々が時間を稼ぎますのでお逃げを!」
「……と言うわけだけどテトラちゃん、何か良い策は浮かぶ?」
「えぇ!? そこでこっちに振る!?」
急に仲間の命を握る重要な役目を背負わされたテトラは衝撃を受ける。
レティアは何も考えなしにテトラに策を尋ねたのではない。
この一連の計画に置いて彼女が特異点だからだった。
その特異な彼女であれば目の前の不測の事態をどうにかしてくれるのではないかと考えたのだ。
(この状況はさすがに……でもレティアちゃんが言うんだ。きっと何か抜け道があるはず……)
テトラは考える。
この状況を脱するためには何をすれば良いか。
この戦争を止めるための術はないか。
「……やるしかないか」
そして考え抜いた先に出た答えはけして最適解とは言えない物であった。
「レティアちゃん。2つ頼みがあるんだけど」
「ん? なんだい?」
「私が行動を起こしたらすぐ逃げて。囮とかそういうのじゃないから安心して全力で逃げて」
「何か思いついたんだね。わかった。そうしよう」
「それから……」
テトラは覚悟を決めるように一拍置くとレティアの目をしっかりと見据えてはにかんだ。
「必ず止めてね」
「え……?」
テトラはそれだけ言うとレティアを突き放し、自らの腹に手を突っ込んだ。
そして叫ぶ。
自らの生み出した禁忌の存在の名を。
「スゥ! 起きてんでしょ! 私の全部を喰らっていい! だから目の前の糞共を喰らえ!」
「いいのー? いいのいいのー? たべちゃって?」
するとにゅるりと彼女の横腹から魔力不足のせいで休んでいたスゥが生えてきた。
魔力を吸う原因がなくなったことと周囲の魔力濃度に反応してすでに目を覚ましていたのだ。
「あぁ! 全部喰らってしまえ!!」
「……ほんとうなんだよね? たべちゃうよ? やどぬし、たべちゃうよ?」
スゥは頬が裂けそうなほど不気味に笑うと吸い込まれるようにテトラの体内に戻り、異形のひしめく空間に一瞬の静寂が流れる。
「ぅぐっ……ぁっ……あぁっ……!」
それからテトラは急に天を仰いで数秒身体を痙攣させたかと思うとピタリと動きを止め、首だけゆっくりと異形の兵士たちの方向を向いた。
「マずはヒトくちメ」
そしてまるでナメクジが這うようなぬめりとした動きで一瞬にして異形の存在の一人との距離を詰めるとその頭から肥大化した嘴のような手で丸のみにした。
「じユう……じゆう……アハ……アハハハハハ!!」
彼女は嬉しそうに両手を広げて高笑いすると視線を次の獲物へと向けた。
「マだいっパい……たべテいイ? イいヨね? ネ?」
異形となった兵士たちがその自我を保っているはずはないのだがその異常性にじりっと半歩下がった。
彼女は生じたそのわずかな恐怖にすら喰らいついた。
「アハハハハハ!」
腕を大木に、鋭い爪の生えた熊の手に、巨大な虫の鉤爪に、狼の牙に変えながら次々に異形の集団を蹂躙していった。
潰し、切り刻み、嬲り、噛み砕いた異形のすべてを喰らい尽くして行く。
笑い叫びながらめまぐるしく変化する彼女の姿はもはや人間のそれではない。
元の形を忘れ体のあちこちがあべこべのパーツで構成された、まさに化物と呼ぶにふさわしい存在へ成り下がっていた。
メロンパン!!!!!




