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一から造るスライム牧場  作者: 白井アレ
第1章 前世と現世
6/72

目的

これは百合なのだろうか。

違う気がする。



 「ぅぅ……」


 テトラ目蓋の上から照りつける朝日で目を覚ました。

 眩しさで白む視界には横になった地面が映る。


 「ここは……?」


 そこは天国でも来世でもない。

 照りつける太陽の温かみを感じる世界。

 首に縄もなく確かな生を感じられる現世だった。


 「……いっつつ」


 回りきっていない頭を振りつつ体を起こすと筋肉がひきつったかのように横っ腹が痛んだ。


 「……っ!?」


 その痛みで昨夜の事件を思い出したテトラは急いで患部を確認すると横っ腹を中心に衣服が赤く染まっており、体に張り付いて固まっていた。

 バリバリと慎重に引きはがすとやがてねっちょりとした赤黒い塊が現れた。

 それは傷口をふさごうととっさに押さえつけたスライム。

 狙い通りある程度定着しているようで触ってみるとゼリー状に固めた肉の塊のようであった。


 「血は……出てない?」


 まだ同化は完全には完了していないようだが周りに付着しているのは昨夜流した血液の残りの様で完全に血は止まっている。


 「なんとか助かったの……かな?」


 ぶっつけ本番だったが賭けに勝ったようだとテトラはひとまず安堵のため息を漏らした。


 「いろいろ思い出したなぁ……」


 そして皮肉にも死に直面したことで大切な死の直前の記憶と死ぬことになった要因を思い出したテトラは一つの思いを抱く。


 「探しに行きたい……けど……」


 夢の中で見たもしかしたらこの世界にいるかもしれないかつての親友に思いを馳せるが、自分はただの子供。

 探しに行く資金力も体力も力も何もかもが足りなかった。


 「んー……」


 そもそもこの世界にいるかどうかもわからない。

 容姿なども全く違うのかもしれない。

 それなのに本当に見つかるのだろうか。


 「まぁまずは出来るとこからだよね」


 しかしテトラは諦める様子など微塵も見せなかった。

 まるで自分なら彼女を必ず見つけられると確信しているかのように。


 「んで、これ、完全に定着してるよね……」


 それから座りなおすとさっそく自身を被検体に使った実験の結果から考察を始めた。

 その問題の箇所である患部を触ると相変わらず赤黒いゼリーの様でプルンとした感触が返ってくる。

 まるで人間とスライムの融合体のようである。


 「つまりスライムは超魔法的な細胞の塊みたいなもの……。普段は他の生物の細胞を取り込んで分解し自身の細胞とする。だけど魔力を込め、生き物の身体に埋め込むことでスライムの免疫か分解機構かを麻痺させてその生き物の身体と融和する……?」


 つまりスライムの細胞を自身の身体と融和させたテトラは人間とスライムのハイブリットと言う存在になる。

 そしてテトラと言う再生し続ける餌が在り続ける環境下でテトラの身体に循環するスライム細胞は常に魔力を帯びている状態となる。

 それは理論上、鋼鉄よりも固いと言われているドラゴンの鱗もテトラはスライムを媒介し真似ることができるという事になる。


 「夢が広がるな……だけど……」


 問題はその素材を集めることだ。

 強者になるには強者を倒してその素材を手に入れるしかない。


 「ひとまずあの糞熊をぶったおせるだけの力が欲しいな……」


 恐らく自分を襲った熊の魔獣は復讐かまた食糧を求めてかで必ずこの牧場へ戻ってくると確信しているテトラは目標を熊の魔獣越えとすると、実験用の素材を集めるべくまだ痛む横腹をさすりながらナイフを拾って森へと入って行った。


 「よしっ、これだけあればいいでしょ」


 しばらくして素材となるべく弱めの魔物や植物を数種狩ってきたテトラはただのスライムに戻りかけていた飼いスライムたちにそれを餌として上げ始める。

 そしてテトラは多量の餌を取り込んだスライム達を一口大にちぎるともりもり食べ始めた(・・・・・・・・・)

 吐きそうになるほど喉越しが悪くまずいとわかっているスライムをしかめっ面で次々に食べる彼女の姿は狂気の沙汰だった。

 だが別に彼女の気がふれたわけではない。


 「普通に素材を食べるんじゃ吸収率は悪いだろうし何より物によっては食ベられたものじゃない。それに自分の魔力量的に魔力供給できるのはせいぜい数匹分。だけどスライムに取り込ませてしまえば薬みたいに飲めて吸収効率がアップして魔力供給もできて一石二鳥!」


 という頭の良いのか悪いのかわからない思い切った判断からの行動であった。

 熊の魔獣が再び襲ってくるとしたら明日か今夜中だろう。

 その短時間で自身の強化をする方法と言ったらこのパワープレイしか思い浮かばなかった。

 しかしそんな脳筋プレイングがうまくいくはずもなく――――。


 「うぷっ……もう無理……」


 多量の素材とスライムの容積を抱えきれなくなった腹が白旗を上げた。

 さらに病み上がりの身体に堪える急激な魔力消費により気分は最悪だ。


 「いったん……休憩……」


 口元を押さえながらよろよろと千鳥足でベッドへ向かう彼女の肌はどことなく潤っているように見えた。



コラーゲンたっぷり入ってそう。

寝たいけど吐きそうなときは横を向いて寝ると窒息防止になるよ。

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