歪な軍勢
石が溶けちゃう
「ふっ……!」
先手を打ったのはアトゥア。
振り抜いた透明な斬撃が空を切りカルヴァの喉元へと迫る。
「斬撃に魔力を乗せているのか。面白い」
だがその必殺の一撃は触手の一降りで容易く相殺されてしまう。
「その体は……魔力を纏っているのか?」
「ご名答」
カルヴァはまだ誰にも話していない自身の特性を当てられたのが嬉しかったのか饒舌に説明を始めた。
「人の身では貴様ら獣人に勝てぬ。そこで私は魔力結晶を核として人の身を器にこの世ならざる幻魔をその身に宿す方法を確立した。そこの半魔も死体を使えば再び魔力を集められるようになるだろう。今度は反旗を翻すことのない忠実な僕としてな」
まるで収集家がコレクションを自慢するかのような口ぶりに対峙するものの動きも止まる。
「つまりお前たちでは私に到底勝てぬと言うことだ」
両手を広げて見下すように言うカルヴァからは圧倒的な力を手にした事による驕りが透けて見えてくるようだ。
「じゃあこう言うのはどうかなっ!?」
「ふんっ……ちょこざいな。手数を増やしたところで変わらんよ」
そこでアトゥアが複数の斬撃を飛ばす。
だがそれらはやはり触手の腕の人ならざる動きで全て防がれてしまう。
「果たしてそうかな?」
「何っ!?」
なにもただ闇雲に数を増やしたわけではない。
その斬撃はただの囮であった。
背後からいつのまにか影のように忍び寄っていた獣人の戦士二人が左右から彼の首目掛けククリを同時に降ったのだ。
「取った!」
カルヴァの首が驚きに満ちた表情を浮かべたまま宙に飛ぶ。
それは致命的な一撃。
慢心から生じた隙を逃さぬ迅速で不可避な不意打ちであった。
結果的にラテ姫の言っていた通りになってしまったが最悪は避けられただろう。
皆が安堵した。
皆が勝利を確信した。
だが、悪夢はまだ終わってなどいなかった。
「やってくれたな……」
地面に転がる頭が喋ったのだ。
すぐに触手が頭を回収し、断面を覗かせていた首の上に置く。
すると一瞬にして肉腫が出現して癒着した。
その回復速度はテトラでさえ遠く及ばぬほどだ。
「やっときたか。種の発芽はもう少し早めるべきだな」
そして彼の視線の先、テトラたちの背後にある唯一の出口にはいつの間にかカルヴァと同じような触手をその身の至るところに生やした人間の兵士たちがいた。
しかし彼らはカルヴァとは違い歪な形をしており、目の焦点があっておらずまるで触手に操られるようだ。
彼の言い分から恐らくカルヴァの実験の被害者たちなのだろう。
「さぁ我が憂いの獣人たちよ。余興は終わり、宴の始まりだ。踊って見せよ」
カルヴァはついにその両手を異形のものにしてテトラたちに迫る。
「くっ……!」
「化物かよ……」
前にも後ろにも化け物。
逃げ場はなし、勝ち目もなし。
まさに絶体絶命であった。
いあ! いあ!




