再会
みかんおいしい
「待て」
王城に侵入して暫く孤立している兵士たちを気絶させることを繰り返しているとアトゥアが手を出してテトラたちを止めた。
前方に注意を向けるとそこには自分たちと同じく物陰でこそこそと動き回る集団がいた。
全員が深くローブを被り素性を明らかにさせないようにしている。
彼らはアトゥアたちの存在に気が付くと手でサインを送ってみせた。
「大丈夫。仲間だ」
アトゥアもサインを送り返し、お互いの状況を話し合った。
「中庭からここまでの通路はもう制圧した。そちらは?」
「既に裏から正門を制圧済みだ」
「順調だな」
「あぁ。我らが星もおいでになっているし失態は見せられんからな」
「我らの王もなかなかにアクティブだな……」
「お前は玉座の間におられる我らが星――――王の元へ行け。そこにいる人間の協力者が交渉の手立てになるかもしれん」
「分かった。そっちも気を付けろよ。いつ指揮系統が回復するかわからない」
「分かっている。では、頼んだぞ」
それからテトラとミューを一瞥した影のような一団はすべるようにして通路の向こうへと消えて行った。
「で、貴方がたの王様の元へ行くんですか?」
「あぁ。どうやら制圧の手は足りているようだしな」
しかし玉座の間などどこにあるのかわからないのでそこらへんにいる縛った兵士をスライムで拷問して場所を聞きだして向かう。
そして着いたのは豪勢な装飾が施された大きな扉のある部屋だった。
「あれ? 開いてる?」
「妙だな……まぁ非常時だしこういうこともあるかもしれん。とにかく入るぞ」
「分かりました」
開いていた扉を押して中に入るとそこには一人のキャスケット帽子を被った少女とその護衛と思わしき獣人が数人が先日潜入した際に出会った少女、ラテ姫と対峙していた。
「……っ!?」
そして彼女の足元には壮年の男の死体が転がっていた。
「あら、この前の侵入者さん?」
「これは……」
こちら側を向いていたラテ姫が驚いて動けないでいるテトラたちに気付いて呑気に手を振ってくる。
それでテトラたちの存在に気付いたキャスケット帽子の少女が振り返った。
「ん? あぁ。アトゥアと……え? いや……まさか……」
「あ……れ……?」
テトラは振り向いたキャスケット帽子の少女を見て目を見開いた。
「あーちゃん……?」
「みーちゃん……?」
お互いの愛称を呼び合って互いにその存在を確認する。
よく見れば見るほど疑惑が確信に変わって行く。
確実に彼女は探していた自分の知る人物だと。
そして生前の記憶が走馬灯のように脳裏を駆け巡った。
「……いろいろ話す前に一つ! 一つだけ言いたいことがあるの!」
「えっ!?」
駆け寄りたい衝動を抑え、テトラは今の自分を肯定するための儀式をするために声を張り上げる。
「いい!?」
「う、うん」
テトラは胸に手を当て、大きく息を吸った。
この時この瞬間のためだけに何度も頭の中で反芻した言葉。
覚悟を決めてそれを空気に混ぜ込んで喉を震わせる。
「私はもうあの時の私じゃない。今の私はテトラ・グロウリィ! この世界の人間だ!」
前世と決別をするようなテトラのその宣言はだだっ広い玉座の間に静かに響き渡った。
手が黄色くなる。
爪の間に入り込んだオレンジ色が取れなくて辛い。




