理由
強いけどどこか抜けてる。
完璧じゃない方が親しみ持てて良いですよね。
「ほんとーーーーに! 申し訳無い!!」
無事窒息から蘇生された獣人が見せたのはそれは見事な土下座であった。
いや、手足を拘束されているのでむしろ五体投地の方が近い。
それほど深く額を地面に擦り付けた彼女の姿は見ている方が気まずくなるほど。
どうやらテトラの話はちゃんと聞いていたようで自らの過ちを認めたのだ。
「ほら、もういいですから……顔に傷がついちゃう……」
「そう言うわけにも行かない! 私の勘違いで関係無い者を巻き込んでしまった! 度重なる無礼、どう詫びたら良いものか! 一発と言わずもっと殴ってくれ!」
「いや、流石にそういうわけには……」
額に砂をつけたまま顔をあげる獣人はクトリカの小悪党とは違いただ勘違いしていただけなので殴って制裁を加えるわけにもいかず、かといって放っておけば腹をかっさばきそうなのでテトラは応急的に彼女の剣をそっと足で遠くに追いやる。
「取り合えず何で私たちを襲ったのか事情を教えてくれませんか?」
「うっ……」
せめて言い訳を聞こうとするが彼女は言葉をつまらせる。
「それは言えない……ただ我々獣人の存続に関わる大事とだけ……」
「確か獣人さんって何百年か前くらいの戦争で負けて森に追いやられたんすよね。そこで細々暮らしてるって」
そこでミューは誰でも知っている有名な王国の歴史を口走った。
今から416年前、王国は獣人の国と戦争をした。
勝利した王国は降伏の条件として彼らの首都をまるごと明け渡す事を要求した。
もちろん当初は拒否した獣人の王だったが国民の安全と引き換えと言われ、やむ無く国を手放した。
そしてその上に築かれた都市こそここ、現在の王都である。
獣人はその歴史を思い出してか急に激昂した。
「そうだ! 人間に追いやられた我々がいかに辛酸を舐めたことか! 今までは戦に負けたゆえ仕方無いと思っていたが、あろうことか奴等は私たちの森にまで魔の手を伸ばしてきたのだ! このままでは全てを奪われてしまう、静観もしてられんと我らが王――――エウレィ様は王国との全面戦争をご決断なされたのだ!」
「……結構重要そうなことまでほとんどゲロりましたね」
「はっ……! しまったぁぁ!」
口から出た言葉はもう戻らない。
テトラとミューは獣人一族の重要機密を期せずして知ってしまった。
「気持ちが高ぶってつい……」
「よくいままでばれなかったっすね……」
ばれなかったのはひとえにその肌をさらさない包帯まみれの怪しさゆえだろう。
王国の兵士にすら「危ない人だ……関わらないでおこう」と思われていたのかもしれない。
「しかしこれでますます君たちを巻き込んでしまった……すまない……。あぁ、私はどうすれば……」
獣人は過ちを重ねてこの世の終わりだと言わんばかりの声をあげる。
戦争の情報を握る重要人物となってしまったテトラとミュー。
こうなってしまってはもはや王国からも獣人からも追われる存在となってしまい人探しどころではない。
「じゃあ私たちも手伝いましょうか?」
そこでテトラは一つ提案をした。
「王国転覆を」
「へ……?」
獣人は人間の思わぬ協力の申し出に耳を疑った。
わざわざ危ない橋わ渡るのにも理由があります。
損得と獣人の身体能力とあと……。




