旅立ち
「これ、なんて報告しよう……」
それからサリアは自分たちを悩ます問題を解決する糸口を探し始める。
街に帰ったら討伐の失敗報告をして増援を要請しようと思っていたのに棚から牡丹餅が降ってきたのでどのような報告すればよいか全くわからなかったからだ。
子供が偶然問題の魔獣を倒したなんて報告したら突っぱねられるにきまっている。
しかし地域住民に安心してもらうために報告しないわけにもいかない。
とはいってもテトラには秘密にするよう言われている。
非常に頭の痛くなる問題だった。
「ニャーン」
「……そういえばこの魔獣スライム……ボブだっけ。こいつに乗っていくんでしょ? こいつの鳴き声なんとかならないの?」
考え事をしているのにBobさんに間の抜ける声を出されて集中力が切れたサリアは文句を言う。
「いやぁ……どうせなら強くしようと思っていろいろ混ぜたのがダメだったみたいです」
「そんなスープの配合みたいな……」
「実際そんな感じなので」
「諦めろサリア。スライムの親玉やる事なすことだ。俺たちには理解できない。そういうものだと思うことにしよう」
「そうね……」
考えるだけ無駄だと悟ったコルオン達は過程をすっ飛ばして結果だけを見つめることにした。
「それじゃもう行きますか?」
「そうですね。準備ができ次第行くことにしましょう」
そういうと彼らは出発の準備に取り掛かった。
とはいってもコルオン達は着の身着のままなので準備することがほとんどない。
主にテトラの準備の手伝いをして時間を潰した。
「よいしょっと……これで最後か?」
「はい。ありがとうございます」
「やどぬしーこていしおわったよー」
「いい感じですよ。スゥ」
「えへへー」
「にしても多いわねぇ……何が入ってるの?」
Bobさんの背中にはロープで縛られた大きな荷物が4つ吊るされている。
それらを積み込んでずり落ちないようにスゥが固めた粘液で固定していた。
食料などを積むにしては多すぎる量にサリアが疑問を覚えたのだ。
その質問にテトラは人差し指を口に当てて答えた。
「秘密です」
「ふぅん……」
「ささ、乗ってください」
他人の荷物なのだ。
深く詮索しないほうが良いと思ったサリアはそれ以上追及しなかった。
だがサリアは知らない。
この中身が彼女の嫌いな純正スライムだらけだという事実に。
スゥやBobさんには慣れてきたサリアも中身を見たら投げること必至だった。
「おっ、案外乗り心地良いな……」
「んっ……悔しいけどほんとね」
サリアとコルオンの二人はBobさんの座り心地を確かめる。
例えるならウォーターベッドのよう。
元が大きな魔獣だったこともあり広い背中は荷物を吊るして3人座ってもまだ余裕があり、けして堅過ぎず柔らかすぎずそれでいてひんやりと気持ちの良い絶妙な乗り心地に身体の痛みが引いてゆくようだった。
「ニャァァ♪」
口々に褒められてBobさんも嬉しそうだ。
そして最後にスゥをおぶったテトラが乗り込んで準備は万端。
「では行きましょう」
「ここから近い大きな街となるとクトリカか王都……そうですね、私たちも報告があるので最寄りの都市クトリカへと向かいます。取り敢えず東へまっすぐ向かってください。どこか街道に出るはずなので」
「分かりました。Bobさん東へお願いします」
「ニャァ」
「しゅっぱーつ!」
Bobさんは立ち上がってのしのしと歩き始めた。
その弾性のおかげで揺れも少なく快適だ。
「あ、そういえばコルオンさん、ため口でいいですよ。なんか気になりますし」
「助かる。年下に敬語っていうのはどうにも落ち着かねぇ」
「私も今まで通りでいいわよね?」
「貴方はダメです。しばらく私を敬っておいてください」
「何でよ!?」
「胸に手を当てて自らの行いを顧みてから文句を受け付けますよ?」
「うっ……分かりました! 分かりましたよテトラ様!」
かくして彼らは最寄りの街、商業都市クトリカへと向かう。
ある者は過去を清算するために人を探して。
またある者は意図せずに達成してしまった討伐報告をしに。
それぞれの目的を胸に抱いて小さな旅は始まった。
移動したらもはやタイトル詐欺では……?
いや、主人公ちゃん自体が牧場みたいなもんだし移動式の牧場あるしセーフ!
ということで2章終りです。
次から3章、商業都市クトリカへ!




