乗り物
中世の足と言えば何と言っても馬ですよね。
「そうだ。移動手段は徒歩になるが大丈夫ですか?」
これから街から街へ練り歩くのだったら馬などの乗り物がないとかなりの時間がかかる。
それに野盗などに襲われた時逃げられる足が無いといけない。
この子なら何がどうなっても大丈夫ではないだろうかと言う思いが脳裏をよぎったが見た目は年下の少女なのだ。
常識的に思い直して頭を振った。
「それならばちょうど良いのがあるんですよ。アレなら皆さんも乗れるでしょうし……着いてきてください」
「ほぅ。ありがたい」
「体ばっきばきだし助かるわぁ」
一夜をある程度ゆっくり過ごせたとはいえ慣れない家の堅い床板の上でしか寝ていないのだ。
熟睡とまではいかなかった彼らの身体にはまだ疲れが色濃く残っていた。
テトラに案内されて彼らは納屋を出る。
そして連れてこられたのはなんでもない家の裏庭。
農場なのだから荷運び用の馬でもここに飼っているのかと思って覗き込む。
「なぁっ!?」
「サリア! テトラさん! 下がって!」
だがそこにいたのは熊の魔獣だった。
まぎれもない彼らが追っていて返り討ちに会った危険種判定B以上はある魔獣だ。
幸いにも後ろを向いていたのでコルオンとサリアは一斉に剣を引き抜き戦闘態勢をとる。
「……ん?」
だが振り向いた魔獣はどこかおかしかった。
凶悪の権化のようだった顔はデフォルメ化されたかのように可愛い獣のパーツで構成されていて間抜けになっていたのだ。
それに剣を向けているというのに一向に襲ってくる気配はない。
「あっ! 危ない!」
彼らが首をかしげている間にテトラがその魔獣の前に出た。
自殺行為にも思えたその行動だったがやはり魔獣は襲うことなくじっとしている。
「こちらは熊のプ○さんです」
そして、なんとその魔獣の紹介を始めた。
「やどぬし、そのなまえはあぶない」
「む……そうですね。それじゃぁ……Bobさんで」
「ニャァァ」
スゥによるツッコミもあったが名前を決められて嬉しそうなBobさんは一鳴きした。
あっけにとられたコルオン達は力が抜け思わず剣を取り落しそうになる。
「あの……テトラさん、それは何ですか?」
「熊の魔獣型スライムです」
「なるほど……?」
納得はできないが理解はできる。
つまりどうやったかはわからないがこれは熊の魔獣をベースにしたスライムと言うことだ。
それはつまり――――。
「まって、ちょっと待って。熊の魔獣って言ったわよね?」
「はい」
ふっとよぎった予想を否定したくて焦ったようなサリアの質問にテトラは頷く。
「私たちが追ってたものは?」
「熊の魔獣」
「……テトラちゃん、もしかしてあなたが熊の魔獣を?」
「えぇ。襲われたので致し方なく」
あっけらかんと答えるテトラにサリア達は眉間を押さえた。
「あー……頭痛くなってきた。つまり私たちが追っていた魔獣はあなたの両親を殺し、その恨みであなたは魔獣を殺したの?」
「いえ、まぁ、間接的に殺したことにはなりますが……。両親はただの自殺ですね」
「もうわけわかんない!」
それから説明を強く要求する彼らにテトラは魔獣を倒すまでのいきさつを彼らに話した。
サリアとコルオンはこれまでのテトラのみせた非常識からもう驚くことはなく呆れ顔で聞いていた。
「あぁ……なんかいろいろと納得がいったわ。あんたは両親に自殺されてねじがぶっ飛んだだけのごく普通の女の子。んで成り行きで魔獣を倒して研究材料にした。そうなると昨日食べた肉もその魔獣の肉なのね」
「私に対する評価が少し気になりますがまぁ、そうです。昨日出したのもスライムに食べさせた分の残りであってますね」
「残りね……」
こんな子供に魔獣討伐で負けるし本来残り物を処分する側のスライムの残り物を食べていた事実になんだかスライム以下の存在に成り下がったような気分になって複雑だった。
ハランデイイ




