食事
日曜日なので連投。
しばらくたちコルオンとサリアが沈黙に耐えきれなくなってきてどちらからでもなく言葉を発しようとした。
そのとき納屋の扉が再び開かれた。
「食事を持ってきました」
テトラとスゥが湯気の上がる皿をそれぞれ抱えて持ってきたのだ。
ドタバタして忘れていたがここ数日まともな食事がとれていないサリア達の腹は漂ってくる臭いで空腹を思い出して一斉に鳴きだした。
だが一つ懸念がある。
「……まさかスライムじゃないでしょうね」
「大丈夫です。魔獣の肉と野草です。くれぐれも暴れないでくださいね」
そういうとテトラは皿を置いてスゥにサリアの枷を吸収させた。
自由の身となったサリアは手首をさすりながら置かれた皿を覗き込む。
するとその皿の上には確かに彼女の言うとおり良く焼かれた肉と茹で野菜がバランスよく盛られていた。
とてもおいしそうで思わず生唾を飲み込む。
時間をおいてすっかり頭が覚めて空腹にも負けたサリアはもう疑うことを止め、なるようになれと言う思いで皿とフォークを手に取って食べ始めた。
「んっ!? おいしい! やけに新鮮ね。自分で狩ったの?」
「はい。魔獣は先日狩りまして野草は森から採ってきていたのを使いました」
「初めて食べる味だわ」
「……俺にも食わしてくれないか?」
気づけばサリアが美味しそうに食べている横でコルオンが物欲しそうな目で見ていた。
彼は今自分で動けるような状態にない。
だから誰かが食べさせてやらなければならないがそれはすぐに一人に絞られる。
「……はい」
少し赤面しながらサリアはコルオンに肉を刺したフォークを差し出した。
コルオンはそんなサリアの恥ずかしそうな様子など微塵も気づくことなく肉を頬張る。
「……んぉ、ほんとだおいしいな」
サリアは特に何も気にしていない様子のコルオンが少し恨めしくて頬を膨らませた。
「それじゃ私も食べますかね」
彼らが食べ始めたのを確認したテトラはまた家の方に戻って今度は水桶を持ってきた。
料理の乗った皿ではなく何の変哲もない水桶だ。
食事をするのではなかったのか。
「……? 食べないの?」
「食べますよ?」
「……!?」
するとテトラは水桶の中から色とりどりのスライムを取り出した。
そしてそれを飲み込むようにして食べ始める。
その光景はサリアが思わずしかめっ面を作ってしまったほどだ。
「……スライムが主食ってほんとだったのね」
「正直辛いです」
「スライムしか食べられない呪いなのか?」
「言ったでしょう? たぶん私はスライムの親玉か何かなんですよ」
絶対まずいスライムを淡々と食べ続けるその姿を見ると美味い肉を食べているのが申し訳なくなってくるサリア達だった。
「やどぬしはちゃんとたべたほうがいい。わたしのえいようにもなる」
「んー……スゥが言うならスライム食はとりあえずこれで打ち止めにしておくかぁ……」
スゥに注意されたテトラは素直にスライムを食べるのを止めた。
ただスライムが糞まずかったからと言うだけではなく、正直何をどれだけ食べたら対象の能力を獲得できるかなんてわからなかったので止め時が見つからなかったからだった。
ならば様々な餌を与えたスライムを余分に食べて強くなろうと言うパワープレイをしていたのだ。
結果的にスライム性が強くなりすぎて再生能力が異常なことになったのだが。
「……なんかもういろいろありすぎて放置してたけど、その喋るスライムも造ったの?」
「造ったというかなんというか……私に寄生しているようなものですね」
テトラはおんぶする形でひっつくスゥを掴んで前に出した。
「スゥはスゥだよ! よろしく!」
「うん。そうだね。よろしくスゥちゃん」
「よろしくな」
色はともかく形は幼い少女のスゥの両手を上げた元気な挨拶にサリア達は笑顔で答える。
人の言葉を解するスライムもまた初耳だがここにいるということはつまりここのオリジナルの生物なのだろうと頭をからっぽにして納得した。
今日中にもう一話、2章の終りまで行けるかな。




