治療 2
すこーしだけ遅くなったけどその分すこーしだけ多目。
「いっ……ぐっ……」
「コルオン!」
サリアはテトラを押し退け、遅れてきた痺れるような痛みに悶えるコルオンに駆け寄る。
幸い刺されたのは左腕の傷口の部分で大したことのない裂傷だった。
「ちょっと!? 何すんのよ!」
だが刺されたことは事実だ。
テトラに詰めよって掴みかかろうとする。
「まぁまぁ落ち着いてください」
「……っ!」
テトラはサリアが掴み掛るその前にナイフを手放して両手を上げた。
それは交戦の意思はない事を意味する。
真意が見えない以上、感情に任せて糾弾すべきではない。
サリアは大切な仲間が傷つけられた怒りのぶつけどころを失い唇を噛んだ。
「どういうことか説明してもらおうかしら?」
「えぇ、えぇ。もっともな反応です。簡単に説明すると私が今からやろうとしてるのは腕の再生です」
「はぁ? 何言ってんの? そんなこと出来るわけないじゃない」
「まぁ、見ててくださいよ。……んっ!」
そういうとテトラは自分の左腕を引き千切った。
「ひっ……」
身体とつながる神経を失ってだらりと垂れ下がる腕。
これは人に化けた魔獣か狂人の家に迷い込んでしまったと確信したサリアは逃げ道を確認する。
出入り口は入ってきた場所一つでその前にはテトラがいる。
逆光の中、薄く笑ったその顔は彼女たちを嘲笑っているかのようでサリアは歯噛みした。
どんな化物なのかわからない彼女を牽制しながらコルオンもつれて行くとなると大変だが仲間を見捨てるわけにもいかない。
最初からこんな家に住んでいるなんて怪しいと思ってはいたがいわばここはモンスターハウス。
甘言に惑わされ、うまいこと罠にはめられたというわけだ。
取り敢えず逃げられるだけの時間稼ぎをしようと武器に手を伸ばした。
「……あれ?」
だがもう一度見た彼女の身体にはちゃんと両手があった。
「……あんた……腕は?」
「生えました」
「生えたー!?」
腕が生えるなど到底信じられないが彼女に握られている腕から血が流れ出ていないこと以外は本物に見える。
やはり魔獣か何かの類なのだろうが襲ってくる気配は微塵もないし言葉の通じるうちは大丈夫だろうと思い直して冷静になったサリアは武器に伸ばしていた手をおろした。
実はこの腕、スライムの摂取しすぎでだいぶスライムになってきたテトラがその再生能力を最大限に使って生やしたものだった。
その証拠に腕の体積の分、素人目には気づかないくらい僅かに背が縮んでいる。
「んー……やっぱうまくくっつかないなぁ」
「当たり前でしょ!? ほら、止めなさい!」
それからテトラはその千切った腕を血の滴るコルオンの腕にくっつけ始めた。
その光景はまるで子供が興味本位でつぎはぎゾンビでも作ろうとしているかのようだった。
おぞましさを感じたサリアはさすがに静観していられず止めに入る。
だがテトラの腕をつかんだところで思わぬところから抗議の声が上がった。
「サリア……良いんだ。やらせてあげてくれ」
「コルオン!? いやいや、これはさすがに――」
「どうせこの傷じゃあ俺は長く持たない。生きられたとしても魔獣退治はおろかまともな生活は送れないだろう。ならこの子が人の姿をした魔獣だろうと禁忌を侵した魔法使いだろうと我が身を任せることに異存はない」
「そこまで言うなら……」
治療を受けている本人であるコルオンに確固とした決意を示されたサリアは大人しく引き下がるしかなかった。
「それじゃぁとっておき出しますね」
「嫌な予感しかしないわ……」
捕まれていた手を離されて自由の身となったテトラがふんすと息を吐いてやる気を見せる。
今までの彼女の行動からひしひしと伝わる悪い予感にサリアは自身の体を抱いて行く末を見守った。
「うぷっ……」
「……え? 何? 急にどうしたの? 気分悪いの?」
するとテトラは頬を膨らませて苦しげな表情を浮かべ始めた。
やはりこんなグロテスクな傷跡は子どもには刺激が強かったのだろうか。
仕方ない、介抱してあげようと手を伸ばした。
その瞬間だった。
「おろろろろろろろ」
「いやぁぁぁ!!」
あろうことかテトラはコルオンの傷跡に多量の吐しゃ物をまき散らした。
なんかもうゲロが常習化しそう()




