敗残者
陽光が青々しい森を優しく照らす。
目に良さそうな森の風景は内包する危険や暗がりを隠すように光を反射していた。
そんな森の暗がりから一組の男女が現れた。
よろよろと歩く彼らは見るからにくたびれていて男性に至っては腕を一本無くして布で縛っていた。
そしてその男性に女性は肩を貸して何とか歩いているといった状態だ。
しかしその応急処置も限界のようで傷口には虫がたかっている。
「はぁっ……はぁっ……大丈夫だよコルオン。必ず助かるからね」
女性が今にも倒れそうなコルオンと呼んだ男性を担ぎ直して話しかける。
「ぅっ……サリア……もう俺のことは……」
コルオンはとても苦し気に答える。
気を抜けば今にも倒れてしまいそうなほどいきることを諦めた覇気のない声だった。
そんなコルオンにサリア泣きそうな顔で叫んだ。
「貴方が居なくなったら私……私……!」
お互いにボロボロだ。
それならば生き残る確率をあげるために自分が犠牲なるしかない。
コルオンがそう判断して舌でも噛みきって楽になろうかと考えていた所にサリアの嬉しげな声が刺さった。
「民家だ!」
「わっとと……」
急にペースを上げて歩き出すサリアに引っ張られて転びそうになりながらコルオンは必死に足を動かす。
「助かる! 助かるんだ!」
「も、もう少しゆっくり……」
コルオンの訴えも興奮気味のサリアの耳には入らない。
やがて森を抜けはっきりと民家が見てとれるようになった時、やっと速度を緩めた。
「安心してコルオン、もうすぐ助かるよ」
「そうだな……」
だがコルオンはどこか浮かない表情だ。
と言うのもこんな場所にある民家など既に奴の餌食となっているに違いなかったからだ。
興奮しているサリアの目には入っていないようだが牧場だったらしい開けたこの場所には壊された柵が放置されあちらこちらに獣の足跡がついている。
さらには入り口のドアは無惨なほどまでに破壊されている。
魔獣がこの民家を襲ったことは火を見るより明らかだ。
「……」
ここまで来てやっとこの民家が魔獣に襲われたと理解したサリアは興奮が一気に覚めて無言になっていた。
だが扉の前まで来たからには一縷の望みをかけて声を張る。
「誰か! 誰かいるのなら助けてください!」
しかしその声はだだっ広い野原に響くだけで虚しく消えて行く。
やはりダメかと絶望しかけた時の事だった。
「はーい」
少し時間を置いてボロボロになった家の中から走ってきたのは十代前半しかないように見える女の子だった。
まさか本当に人がいるとは、しかもか弱い少女が出てくると思わなかったサリアは面くらって固まる。
「どちら様ですか?」
「……あ、私はサリア。こっちはコルオンって言うんだけどこいつがこんなで……休める場所を貸してくれない?」
「あー……それなら此方へどうぞ」
少女は汚ならしい彼らの格好を見ても嫌な顔ひとつせずサリア達を案内する。
何故家がこれほどまで壊されているのに平気な顔で住んでいるのか。
両親はどうしたのか。
まだ幼さの残る少女にサリア達は疑問がつきないが下手に詮索して地雷を踏んでしまってはせっかくの休む機会が失われてしまうかもしてないと思うと聞けなかった。
なので一先ずお礼をいってお茶を濁した。
「ありがとう。えーっと……」
「あ、テトラです。テトラ・グロウリィ」
壊れた牧場にたった一人で住む少女、テトラは淡々と答えた。
と言うことで第2章突入です!




