1話 届かぬ想い
『失恋』
この気持ちを知るということは敗北を知ると同じだ。
こんな簡単に振られてたまるか!! 俺は怒りで気が狂いそうだった。
そもそも告白するということはyesかnoのどちらかしか返ってこない。
そんなことはわかっていたはずなのに、いざそういう状況に自分がなると
結構悲惨なものだ。
「どうして、俺じゃダメなんだ?」
それしか出てこないくらいに俺は失恋したことに納得していなかった。
「いや、だから私は凛君が好きなの!!」
聞きたくないことを二度も言われるとさすがに不愉快だ。
失恋とはこんなに心が折れるものなのか。正直知りたくなかったこんな気持ち。
彼女の名前は宮原春。俺の小さな頃からの幼馴染だ。
小さい時からよく俺と春と兄で遊んでいて、家も隣というよくあるパターンだ。
そんな中、春は学年の同じ俺ではなく兄の方を好きだったなんて全然気づかなかった。
「俺は、俺は絶対諦めない! 絶対春を振り向かせてみせる!」
俺は高々に宣言した。
「私なんかのどこがいいの? しかもほぼ無謀に近いのになんで諦めないの?」
「そんなの好きだからに決まってんだろ!! 好きだから諦めない、それだけだ」
当たり前だろ、好きでもないなら最初から告ったりもしないに決まってる。
ただ、こいつとずっと隣に居たい、ずっと一緒に笑っていたい。
それだけなんだ。ただそれだけの理由だけど俺にとっては大切な想いなんだ。
「私なんかよりいい人なんていっぱいいるって」
なんだよそれ、そんなんで俺から離れようとするなんてそんなの絶対あり得なかった。
幼馴染は俺にとって特別な存在。そんな存在の人が俺ではなく兄を選ぶなんて許せない。
そんな気持ちだけが心に残る。
「俺にはお前が必要なんだ」
べたな発言だがこれが今の俺に言える最高の言葉だった。
「気持ちはすごく嬉しいよ。でもやっぱり私は篤志の彼女にはなれない」
「そうか。なんどもしつこくてごめんな」
もう諦めるしかない。そうするしかない。俺は本気でそう考えていた。