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最悪のスタート

――俺にできるのか?


 この言葉には二つの意味があった。

一つ目は、今日ある大事な高校受験の事だ。もう一つは、

小さなころから好きだった幼馴染に想いを伝える、つまり『告白』を

することだ。



 一つ目は日々の努力を怠らなかったら大丈夫なのだが、

もう一つの方は、少し俺にはハードルが高いような気がする。

だが、勇気を出さないと始まるものも始まらない。



 とにかく、俺は受験も告白もどっちも成功を願っているのだ。

そんなこんなで今俺は、ちょうど家で朝食を食べて受験の会場へ

向かう準備をしているところだ。窓からは太陽の光が差し込み、

天気は良すぎるくらいだ。準備ができると玄関へ行って靴を履き

ドアを開け玄関を後にする。


 受験会場までは家から約十分ほどで着く。

歩いていけるというのが何よりもいいし、近いからその学校を受けると言っても

過言ではない。それに受かったら幼馴染のあの子と同じ学校に通える。

そう思うだけで心が躍ってくる。


 受験会場に着くなり、俺は辺りを見渡した。さっき言った幼馴染がいないかどうかを

探していたのだ。さすがに受験だからか人が大勢いる。なんだか落ち着かなかった。

大勢なのには慣れているはずなのに上がってしまうのはやっぱり緊張しているからだ。



「おはよう、篤志! 今日は頑張ろうね!」


 その声は透き通っていてとても聞いていて気持ちが良かった。

振り返ってみるとそこには満面の笑みを浮かべ嘘が一切ない微笑ましい

笑顔だった。髪は長髪で綺麗な黒色で目も神々しいまでに輝いて見える

黒色だ。身長は百五十センチ弱とやや小さめだ。

見慣れた制服姿なのになぜかこの日は違って見えた。



 「お、おう! 頑張ろうな!」


 動揺して言おうと思っていたことが頭から消えてしまった。


――まあ、告白は受験が終わってからでもいいか。


 そんなことより今は受験だ。これに受からないと俺の恋はその時点で終わってしまう。

だから今は受験の事に集中しよう。


 そうして受験が始まった。試験中も頭から告白の事がチラつき集中できなかった。

だが、最後までなんとか粘って問題をよく読み、空欄を一つでも多く埋めた。


終了のチャイムが鳴り、なんとか試験は終わった。


 「ん、んんーー、終わったー!」


大きく伸びをして体が一気に軽くなった。


 「あ! そうだ! 告白!」


 俺は、校内中を走り回って探し回った。彼女の後姿が見えた。


 「待ってくれー!!」


俺は完全に息を切らして呼吸が少し困難だった。


 「あれ、まだ校内に残っていたの?」


彼女は俺になぜか不満そうにそう言った。


 「ああ。ちょっと話があってな」


 「そうなんだ。それで、なんの話?」


 唾を思いっきり呑み込み、次の瞬間俺は、「ち、小さい頃からずっと好きだった。その、俺と付き合ってください!!」


 言ってしまった。もう引き返すことはできない。この後の返答次第で俺の人生が決まる。


 


彼女が口を開く。



「ごめん、気持ちは凄く嬉しい。でも私が好きなのは篤志じゃなくて凛君なの」


 は?



 その瞬間、俺、小湊篤志は振られた。



 しかもその凛君というのは俺の実の兄である。




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