第4話 お礼と敬語
遅くなりました。
商店街で偶然上崎君に会ったのは驚いたけど、少しずつ話ができるようになってきてるしもうちょっとかなと思う。
「でも、なんであんなに話すのが苦手なんだろう?」
誰に言うわけでもなく一人つぶやいてみる。
う〜ん何か理由でもあるのかなぁ。まぁいっか、そんなこと考えても仕方ないし、それに仲良くなればそこら辺も教えてくれるかもしれないし、先ずは仲良くなることからだよね。
「あ、それもあるけど明日は、絶対職員室で先輩のことを聞かなくちゃ。 いつまでも悩んでる場合じゃない」
お礼を言うだけなんだから、辺に構えなくてもいいんだ。
まどかは、明日のやらなければいけないことを再確認した。
次の日、まどかはいつもより早めに起きて学校へ向かった。
真波には、メールで先に行くと伝えておいた。
何故、いつもより早いかというと先輩が登校する前に職員室でクラスを聞いて人が集まる前にお礼を言おうと思ったのだ。
さすがに知らない人が多い中(しかも上級生だし)で先輩に声をかけるゆうきは持っていない
それになにより、先輩も困るだろう。 いや、もしかしたら困らないかもしれないけど。
そんなこんなで職員室で先輩のクラスを聞きに行ったのだが、運が良かったのか職員室にはその先輩が居てびっくりした。
私は、思わず「あの!」と声をかけた。
先輩は、「なにかな?」とあの時声をかけてくれた時のような優しそうな声色で答えてくれた。
「あの、えっと。私、一年の九条まどかって言います。工藤先輩ですよね?」
「うん、そうだよ。二年の工藤 拓真。それで、俺に何か用?」
「はい、あの覚えてないかもしれませんが入学説明会の時に道に迷った私を助けていただきました。 あの時は先輩がすぐ行ってしまったのでお礼を言えませんでした。遅くなりましたが、あの時はありがとうございました」
私は、言いながら頭を下げた。
先輩は、少し驚いていたが、
「わざわざ、そんなことで俺をさがしてたのか。大丈夫あの時のことは覚えているよ。すごくキョロキョロしていたからね印象に残っているよ。でもわざわざお礼を言いに来てくれるなんてこちらこそありがとう」
そんなことを言われたもんだから、まどかはさらに頭を下げる羽目になってしまったのだが、この先輩は多分普通にお礼を受け取ってくれただけなんだろう。
しかし、私はあの時そんなにキョロキョロしていたんだろうか。少し恥ずかしい。
「じゃあ、俺は朝練があるからもう行くね」
そう言って先輩は、先生と私に軽く頭を下げて職員室を出ていった。
今までのやり取りを見ていた先生は、
「九条と言ったか?お前も職員室に何か用があるのか?」
と聞いてきた。
「いえ、もう用は済みましたので大丈夫です。私も失礼します」
普通に流すんだねと思ったのは内緒だ。
まさか、朝からこんなことになるなんてたまには早起きしてみるもんだなあ。
早く来てしまったので、まだ自分のクラスにはそんなに人はいないかな。 まあ当たり前か。
まだ8時だもんね、鐘が鳴るまでまだ30分はある。
そう思っていた、まどかはクラスの扉を開けて本日二度目の驚きに出会った。
何と、上崎君がすでに登校していたのだ。
「おはよう、上崎君。早いねー」
驚いたが、他にも生徒がいるので別にそんなに驚くことでもないかと思いこちらから声をかけた。
「おはようございます、九条さん。 九条さんも早いですね」
「うん、ちょっと職員室に用があったの」
「そうなんですか、もう用は済んだのですか?」
「うん、バッチリ」
そう言いながら自分の席に着いた。
(結構話せるようになってきたけど今だに敬語なんだよね)
「ねえ、クラスメートだし敬語じゃなくてもいいよ?」
そう聞いてみると
「いえ、普段からこの話し方なので……」
と、そんな答えが返ってきた。
「ふーん、そうなんだ」
(普段からなんだ。家の人がすでに言葉使いに厳しいのかな。言葉使いが綺麗なのはいいことだけど何だか壁を感じるなあ)
まどかは、自分には砕けた話し方でもいいのになあと思っていた。
せっかく、友達になるんだからさ。
そう思いながら、話すのにあんまりどもらなくなってきたのは一歩前進かなとあわてずに行こう。
まどかはそう決めたのだった。
先ずは、評価をくださったユーザーの方にお礼を申し上げます。
誠にありがとうございました。中々時間ができませんが、これからも頑張っていこうと思います。