第1話 隣の席の
「そう言えば、その先輩のことって名前以外のことわかってるの?」
あの時のことを振り返っていた私に真波は聞いてきた。
「えっ? あっ!」
(そう言えば、そうだった。 私、あの人のこと名前以外何も知らないじゃん。)
一番大事なところを忘れ得ていたことに今更気づいた私だった。
「どうしよう?」
私は、あろうことか真波に聞いていた。
「いや、どうしようって聞かれてもそもそもあんたその人の名前をどこで知ったのよ」
「名前は、制服の名札を見て知ったんだよ」
私が、入学する春美ヶ丘高校の名札は他の高校と違って苗字だけではなく名前も一緒に書かれている。
だから、名前はその時に知ることができたのだ。
「う〜ん。 やっぱり学校が始まっってから職員室でクラスを聞くしかないかなあ」
「それしかないんじゃない。 それが一番確実だと私は思うけど」
私の考えに真波も賛成してくれた。
そんな風に、話しながら歩いていると目の前に私たちの入る高校が見えてきた。
さて、ここで少しこの春美ヶ丘高校について説明しようかなと思います。 (誰に説明してるのよって感じだけどね)
この春美ヶ丘高校は、特にこれといった特別な高校というわけではなくいたって普通の高校である。強いて特色を挙げるならば、イベント毎にとても強く力を入れているというところだろう。
体育祭や文化祭は、外部の人も招待しているし、文化祭は出し物が多く模擬店だけでなく展示や文化部の発表運動部だけの模擬店もあり結構盛大に催されているらしい。
(一回だけ、文化祭を真波と一緒に見にいったけどすごい盛り上がりだわ、人が多いわで1日でどっと疲れた記憶がある。 まあ、出し物や展示、模擬店の料理は美味しかったし面白かったけどね)
それ以外は、他の高校とあまり違いはない。 あっ、そう言えばクラス替えっていうのがなくて1年の時のクラスで3年間一緒に学校生活を送るらしい。ここら辺は他にはないところかな。
誰に説明しているのよと言われたら誰にしてるんだろうってなる説明をしている間に入学式も終わり今は、クラス毎に分かれて担任の先生からこれからの連絡なんかを聞いているところだ。
ちなみに私は真波と一緒のクラスだった。
(さて、これからどうしようかな。 お礼を言うのは早い方がいいけどいきなり職員室に行って上級生のクラスを聞くのっていうのはどうなんだろう。 変に思われないかなあ。まあ事情を説明すれば普通に教えてくれるかもだけどいざ教えてもらえたからといっていきなり行くのは失礼だしなあ)
私は、考え事をしていたので先生の話は話半分にしか聞いていなかった。
連絡も終わり、先生が教室を出て行くとみんなも色々と会話を始めていた。
これから3年間同じクラスで過ごす人と新しく友達になろうと自己紹介や他愛ない話をしていた。
(う〜ん。 やっぱり今日中だよねー。 説明会の日から2週間経ってるし忘れてるかもしれないけどお礼はちゃんと言わないといけないし、私がお礼をちゃんと言いたいという気持ちもある)
と、こんな中でも私はまだどうするか考えていた。
ふと、煮詰まってきたので気分を変えようと頭を動かしたら、隣の席の男の子と目があってしまった。
この春美ヶ丘高校は、小学校かと間違うくらい机と机をぴったりとくっつけているのだ。
私は、びっくりして 「え、あの」としどろもどろになってしまった。
すると、その人も「いえ、あの.....すみません」と答えて下を向いてしまった。
(なんだろう。緊張しているのかな) 私は、昔から初対面の人と話すのはそんなに苦手じゃなかった。
でも、彼はただ緊張しているだけじゃないような気がした。
ちょうど、考え事もまとまりそうになかったのでせっかくなので他のみんなと同じようにこれから一緒に高校生活を送って行くクラスメートと仲良くなろうと思った。
まずは、隣の席の人とからかな。そんなことを思いながら、まずは何から話そうかな。やっぱり自己紹介からかなと考えつつもう一度話しかけた。
「初めまして。私は九条まどか。これからよろしくね」
これが私と彼の初めての出会いだった。 この出会いがこの後の私の高校生活を大きく変えるなんて今の私は思っていなかった。
3日も空いてしまい申し訳ありません。
少し、忙しくて中々手をつけられませんでした。
これからなるべく間を開けることなき頑張っていこうと思います