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一歩前へ

作者: 夢乃ちず

 僕は一人で泣いていた。

 どうして僕には、最後の一歩を踏み出す勇気がないのだろう。

 いつだってそうだ。

 せっかくここまで進んでも、あと一歩が踏み出せなくて。

 その度に何度泣いただろう。何度悔しい思いをしただろう。


 本当は誰かに助けを求めたい。

 怖くて、一歩踏み出すのにためらう僕の背中を、そっと押してほしい。

 そうすれば、確実に僕は前に進むことができる。

 僕が望むものを手に入れることができる。

 僕の望みを叶えることができるのに。


 でも、結局、悪いのは全部僕なんだ。

 僕が弱虫で、臆病だからだめなんだ。

 今だって、目の前にある闇は、僕が自分自身で乗り越えなきゃいけないのに。

 それなのに、誰かの助けを求めるなんて、やっぱり僕はだめだと思う。

 また、この闇から背を向けて逃げ出してしまうのだろうか。


 なんだかもう、自分が馬鹿すぎて笑ってしまう。

 口角が上がるのに、涙は止まらない。

 

 もう嫌だ。

 逃げ出したい。

 後ろにも、前にも進めない板挟みの状況から逃げ出したい。

 一歩前に踏み出せば、この状況からいい方へ変われるんだ。

 そう、たった一歩、前へ進めばいいんだ。


 僕は、涙を拭った。


 変わるんだ。

 変われるんだ。

 変わってみせる。


 瞳を閉じ、自分にそう言い聞かせた。

 目の前に広がる闇に向かって、ふぅ、と一息ついた。

 「…よし」

 唇をきゅっとかみ締めて、拳もぎゅっと握って、震える足で、思いっきり、地面を蹴った。

 

 やった!

 僕は、やっと、前に進むことができた―





 『……昨夜22時頃、○○市××町のマンションの駐車場で、十七歳の男子生徒が倒れているのが発見されました。警察は、飛び降り自殺とみて、その動機を調査しています。

  さて、続いてのニュースは……』


ショートショート書こうとすると、なぜかいつも、最後が暗い終わり方になってしまいます。

明るい話を書きたいですね……。

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