一番に望んでいるのは
「え?」
一瞬、聞き間違いかと思った。
俺や柳先輩を含め、いろんな人が結局どうしようもなかった問題だ。それを、まだ中学生の聖さんが見抜けたというのだろうか。
《いえ、確信はありませんよ? 間違っていたら、申し訳ないですし、おいそれと口に出して良いものか迷うんですが――》
「いいよ。なんでもいいから、気付いたことがあるなら言ってみて」
聖さんの言葉を遮って、尋ねた。
確信がなく、予想しかできないのは当たり前だ。だって、そもそも真実を伝えていないのだから。けどもしも、なにかの糸口になるのなら、どんな些細なことでも教えて欲しい。
完全に行き詰っているのだ。
《あのですね、話が少し飛びますけど、この間、サクヤ先輩が家に来た時、あたしは心のなかで部外者になにができるんだって思っていました。あ、先輩を過小評価しているわけではなく、別の問題です。お姉ちゃんの彼氏で、お兄ちゃんの友達であっても、家族にしか分からないことってあるじゃないですか》
「うん。それは、俺も同意するよ。結果的に上手くことが運んだだけで、実際、動いたのは聖さんだったよね。褒めてもらってるけど、俺はなにもしていな――」
なにもしていない、と言おうとして、聖さんに「違います」と強めに止められる。
《あの時、先輩は相談に乗ってくれました。助言をもらえて、それでなんとかなったというのもありますけど、それ以上に、ちゃんと相談に乗ってくれたことが、あたしは嬉かったです》
「ええと?」
《たぶん、四葉先輩も、それを望んでいるんじゃないですか?》
「う、うん?」
よく、意味が分からない。
相談に乗る、というだけなら何人もの友人知人が霧生木さんの相談に乗っている。それぞれ真剣だったろうし、ふざけた気持ちで話を聞いた人はいないだろう。柳先輩もしかりだ。明確に助言できていなくても、皆、相談には乗っていたはずだ。
首を傾げていると、聖さんに呆れられた。
《先輩もお姉ちゃんも、しっかり考えてくださいよ》
「と言われも分からないものは分からないんだけど……」
聖さんの隣にいるだろう先輩も、理解できていないらしい。
はあと大きなため息が聞こえた後、聖さんははっきりとした口調で言い切った。
《つまり、家族がどうとか、そういうどうでもいいことは無視して、自分の意見をはっきり言ってくれたり、共感してくれる人を求めているんじゃないか、ってことですよ》
「いや、どうでも良くはないんじゃないか?」
反射的に、反論していた。
どうしても家族にしか理解できないことはある。お金のことともなれば余計、気にせざるを得ない。
それに霧生木さんには体の問題もある。血の繋がっていないという兄や、親御さんがどういう風に感じて、どう育てているのかも知らないのだ。
聖さんには話していないことだが、それらを無視するなど、不可能だ。
「さっき聖さん自身も家族にしか分からないことがあるって言ってなかった?」
《ですから、そういうことじゃないんですよ》
「んん?」
《家族にしか分からないことは、家族にしか分かりません。それは当たり前です。相談される側は一緒に生活しているわけじゃないんですから、分からない方が普通です。むしろ分かったらストーカーしてる変態か、絶賛思い上がり中のただの阿呆です》
「そうだろうね」
《それを前提にしてください。いいですか? 相談する側だって、そんなことは百も承知なんですよ。解決策を提示してもらえれば一番良いですけど、それは最良のパターンです。どうにもならないと思っている人間からすれば、そこまでのことは望んでないはずです》
聖さんは熱のこもった口調で、続ける。
《相談する側が、一番に望んでいるのは、共感してもらったり、同じ目線で意見をしてくれたり、そういうことです。家族がどうとか、そんなことで壁を作られて嬉しい人間なんているわけないんです。この間のサクヤ先輩みたいに、家に押しかけるくらいの気持ちで、ぶつかってきて欲しいんです。違いますか?》




