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どういうことだ?

「サクヤ君。申し訳なかったね」

「サクヤ、迷惑かけた!」

 ゴールデンウィーク明けの火曜日。月野家の姉弟が二人そろって頭を下げてきた。

 無事に仲直りできたらしく、二人とも笑顔だった。

 その後、どうやら聖さんが話しを通しておいてくれたらしく、俺がなにをするまでもなく、シュンの勉強を手伝う流れとなった。

 当面は、すぐそこに迫っている中間テストに照準を定めることとなる。五月の下旬から開始となるため、それまでの間、部活動は一時的に制限される。各部活によって制限は変わるらしいが、陸上部の場合、各自の判断で練習したり休んだりを決められるらしい。当然、成績が悪いと強制的に止められるとのことだが、シュンも柳先輩もその心配はない。先輩は引き続き、霧生木さんの監視を含め、陸上部の練習に参加し、シュンは図書館で勉強していく、という方針だった。

「あー、頭痛くなってくるー」

「そう言ってる間に手を動かせって」

「わーかってるけどさ」

 現在、その方針通り、俺とシュンは図書館に居残り、勉強漬けになっている。

 俺は普段からしていることだが、シュンはそうでもないらしい。二時間ほどで集中力が切れてしまったのか、雑談が入った。

「サクヤって、テスト範囲、まんべんなく勉強するタイプか?」

 べたーっと机に突っ伏して尋ねてきた。

「ん? まあな。とりあえず一通りはやる。けど、出ないとこをやっても意味ないからな。授業中に先生がテストに出すって言ったとこは集中的にやってるぞ。そのまま出るわけでもないから、類題も含めて、重点的にって感じだな」

「なるほど……。やっぱテスト慣れしてるやつって考え方違うよなー」

「そうでもないと思うけどな。みんなそんなもんじゃないか?」

「違うと思うぞ。俺、たまに授業中に寝てるし」

 それはなにか違う気がするが。

「そういや、一つ聞いていいか?」

 図書館にいるため、もとから小声だったが、シュンはさらに声を潜めた。机から顔を上げて、真剣な表情だ。

 真面目な話だと判断し、耳を寄せて「なんだ?」と聞き返す。

 シュンは周囲に聞き耳を立てている人間がいないことを確認してから、

「霧生木さん、なんかあったのか?」

 と言った。

「霧生木さん?」

「ああ。陸部のゴールデンウィーク中の練習なんだけど、どうも様子が変だったんだよ。いつもは姉ちゃんにべったりくっついて離れないのに、妙に距離取っているようなとこあってな。その上、姉ちゃんは姉ちゃんでそれを気にしてないようなとこあったから、ちょっと気になってる」

 そういう結果になったか、と心のなかで一人ごちる。

 原因は、あの夜の出来事だろう。

 霧生木さんが先輩を拒否し、先輩も深くそれに突っ込まなかった。両者ともに気まずくなるのは目に見えている。

 なんて、勝手に想像していると、シュンの口から聞き捨てならない台詞が飛び出した。

「ただな、俺が変だと思ったのは、二人とも話はしているところなんだよ」

「うん? どういうことだ?」

「普通、なにかあって喧嘩でもしたのなら、どっちもが距離を取ったり、どっちかが距離を取ったりするだろ? でも、あの二人にはそれがない。霧生木さんは距離を取っているように見えるけど、自分から話かけることも結構あるみたいなんだよ。姉ちゃんの方はもとからだけど、特に意識して無視したりはしていない。どういう状況だと思う?」

 それは確かに、なにかおかしい。

 互いに気まずくなるところまでは予想できる。けどその後は?

完全に話さなくなったり、どっちかがどっちかを無視し出すなりするものではないだろうか。なのに、実際はそうではないらしい。霧生木さんは距離を取りつつも、自分から話しかけることが少なくないという。

 霧生木さんには体のこともある。周囲に気取られないよう、いつも通りにしようとした結果、かえって不自然になっている、とも取れなくないが、それはない気がする。

 霧生木さんは俺やシュンのような、不器用な努力型タイプではない。なんでも要領良くこなす柳先輩タイプだ。もしも、周囲に気取られないように注意を払っているなら、何事もなかったかのように振舞えるだろう。

「サクヤ、どうよ?」

「どうよと聞かれてもな。俺にもそれはよく分からん。不自然だとは思うが」

「だよな」

 てきとーに合わせつつ、心のなかでは有用な情報をありがとうと感謝する。

 柳先輩からそんなことは聞いていなかった。あの日から、直接話す機会がなかったのでしょうがないと言えばしょうがないが。あとで連絡してみよう。

「よっしゃ! もうひと頑張り――」

「シュン、声大きい」

「あ、悪い」

 ま、とりあえずはシュンのテストをどうにかしてからだろう。

 それに、シュンにかまっていて自分の成績が落ちたとなったら、それはそれで月野姉弟に気を遣わせてしまう。そうならないよう、俺は俺でしっかり勉強しないといけない。

 シュンに習って、気合いを入れてから俺も勉強を再開した。


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