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     ◆



「あ、えっと、祭サクヤと申します。柳先輩の後輩で、シュン君のクラスメイトなんですが」

 翌日、俺は月野家へ訪れていた。

 先輩は昨日と同じく、午前中は練習していると聞いている。霧生木さんがあの調子では、これ以上アプローチをかけても意味はないだろう。本人が心変わりして事情を話してくれない限り、俺にも先輩にも手出しできない。

〈はーい。お姉ちゃんのことですよね? すぐ出ますね〉

 インターホン越しに対応してくれたのは、おそらく柳先輩の三つ下の妹、聖さんだった。

 返答する前に切れてしまい、待っていると、ドアが開く。

「こんにちは~。サクヤ先輩、ですよね。お姉ちゃんから少しだけ聞いてますよ」

 目線よりかなり下から声がかけられた。

「お姉ちゃんから、今日訪ねてくるかもしれないって言われてました。用件はだいたい想像つきますので、ゆっくりお話しましょう。あがってください」

 第一印象は、どっちかというと霧生木さんに近いなと思った。

 年相応と言えばそうなのかもしれないけれど、柳先輩のような落ち着いた雰囲気はない。

 ただ、やはり姉妹。まだ幼さは残るけれど、美人さんだ。特筆してどこが素晴らしいとは言えないが、顔のパーツが全て計算され尽くされている。例えるなら、霧生木さんの明るい雰囲気と、柳先輩の容姿を足して二で割った感じだろうか? 

 唯一、容姿で柳先輩と違う点は、髪の毛が長いところだ。セミロングでサイドポニーの先輩に対して、聖さんはロングヘアーのポニーテール。後頭部で髪の毛を結っている。

「そんなに硬くならなくていいですよ。ため口で、普段どおりにしていてください。今、お茶出しますので」

「あ、うん。ありがとう」

 促されるまま、リビングへと案内される。

 聖さんは流れるような動きでお茶を淹れ始める。

「……」

 やっぱり姉妹だな。

 気遣いの仕方が柳先輩と似ている。

「どうぞ」

 ソファに座って待つこと三分。

 聖さんがお茶とお菓子を持ってきた。

「サクヤ先輩って、友達あんまりいないんですか?」

 座るや否や、聖さんが尋ねてくる。

「は……?」

「お姉ちゃんにそう聞きましたけど?」

 あの人は……。

 いや、まあいい。それより、俺のことを話しているとなると、別の問題が生じる。図書館で俺と会っていることや、霧生木さんのことは知っているのだろうか。

 そこはしっかり確認しておかなければなるまい。

「他に、柳先輩からなにか俺のことで聞いてる?」

 努めて真剣に、尋ねてみた。が、俺の予想とは全く違った反応が返ってきた。

「あれあれ? 気になります?」

 小悪魔っぽい笑みを浮かべられた。

 嫌な予感がする。


「彼氏ですもんね~」


 え。

「昨日、お姉ちゃんから聞きましたよ?」

 なにをだ。

「最近、彼氏を作ったとか」

 嘘だよそれ。

「お姉ちゃんって、陸上とかにしか興味持ってないところがあったのでびっくりしました。あ、安心してください。お兄ちゃんには言ってませんから、知ってるのはあたしだけですよ」

「……」

 柳先輩、苦し紛れにてきとーな嘘つかないでくださいよ。

 たぶん、原因は『柳先輩蹲り事件』だろうけど、無茶苦茶だ。

 そりゃ司書さんにもそういう話をしてあるし、ほとんど恋人同士のようなことも昨日の昼間にしてしまったばかりだ。まるっきり嘘というわけでもないが……いや、完全に嘘なんだけど……なんかおかしくねー?

 シュンに伝わっていないことだけは救いだろう。というか、どういう状況だったんだ? どうして聖さんにだけ伝わるような形になっているのだろうか?

「あの、一つ聞いていい?」

「なんですか?」

「それ、どういう状況で聞いたの?」

 尋ねると、聖さんはうーんと首を傾ける。

「確か、サクヤ先輩が昨日、お姉ちゃんと話しているところを見かけて、仲が良さそうだったので、お姉ちゃんが帰ってきた後、どういう関係なのって聞いたんですよ。そうしたら、最初はただの後輩って言われたんですけど、あたしがちょっと食い下がっていたら、途中で彼氏だって教えてくれました。初めからそう言ってくれれば良かったのに……」

「あー、なるほど……」

 なんとなく、理解できてしまった。

 柳先輩みたいな人が、一度口にしたことをなんの理由もなく撤回するのは少々違和感がある。妹に詰め寄られた程度でころころ意見を変えるようなタイプではないはずだ。

 おそらく、柳先輩は昨夜の『柳先輩蹲り事件』で俺が家に訪ねてくるかもしれないと予想したのだろう。それも、話している途中で、だ。もし、ただの後輩がいきなり家に来たとなれば、兄弟どころか親まで気にかけるだろう。そうなったら大事になる。そこで思いついたのが、『恋人』だ。

 今日のこの時間、家に妹一人しかいないことを知っていた柳先輩は、妹に恋人という設定を話しておくことで、不必要に話がこじれるのを防いだのだ。

 相変わらず、あの人の頭の回るスピードは凄まじいな。

 俺と会った時は、あんな精神状態だったというのに。


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