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行こう

「サクヤ君」

「はい?」

「屋上」

 先輩の声で思考を止め、視線を屋上に向ける。

「一瞬、誰かいたように見えたんだけど」

「え?」

 驚き、注視する。

 ついに、霧生木さんが現れたのだろうか。

「……」

 正直、暗くてよく分からない。

 だが、

「……!」

 フェンスの向こう側に、確かに人影がある。

「行こう」

「はい」

 先輩と二人で図書館を飛び出す。

「予定通りに!」

「分かりました」

 霧生木さんが現れた時の対応は事前に決めてある。

 先輩は屋上へ向かい、俺は先回りして落下点へと向かう。

 もし落ちる前に止められるとしたら、俺よりも霧生木さんと交流が深い先輩の方が適任だ。そして落ちるのを止められなかった際に、落下点で足止めできるのは、力ずくで勝てる俺というわけだ。

 まあ、それ以前に、霧生木さんが生きていれば、の話になるが。

「とにかく急がないとっ!」

 廊下を駆け抜ける。

 今日はまだフェンスを乗り越える前だった。先輩が間に合い、説得できるならそれが一番良い。ただ、それが間に合わず、もしくは説得が通じず、前回と同じようになるのなら、霧生木さんはすぐに落下点から離れるはずだ。その前に、なんとしてでも引き止めないといけない。

 反対側の校舎へ回り、二段飛ばしで階段を下りる。

 心のなかで祈る。


 先輩の説得が通じるか、最悪、落ちても生きていて欲しい。


 本来であれば、落下直前になる前に説得するのがベストだ。が、それには相当なリスクがある。図書館ではなく、屋上、もしくは階段や廊下で見張っているとなると、もし見回りの先生に見つかった時、注意された上ですぐさま追い出されるだろう。

 それに、落下直前でないと、霧生木さんは「私じゃない」と否定する可能性がある。最悪、屋上で張っていても、星を見に来たとか、そんな言い訳で押し通すかもしれないのだ。状況証拠しかない今、霧生木さんが落ちる直前まで待たなければならなかった。

「あと一階!」

 二階までたどり着く。

 あの直後に落ちていたら、間に合わないかもしれない。

 骨折程度なら数分で直せると言っていた。

 全力で向かっているが、どんなに急いでも、二、三分はかかってしまう。

校舎の端から端へ走っているようなものなのだ。

「居てくれよ!」

 一階に到着し、手近にあった窓を開け放ち、身を乗り出す。

 と――



 ドスッ!



 すぐ目の前に、上からナニカが降ってきた。

「……え?」

 それがなにか、理解するまでに数秒かかり、今の今まで追いかけてきた霧生木さんではないかという結論に至る。

 日常生活ではまず聞くことのない鈍い音がした。

 慌てて外へ飛び出し、落下してきた彼女に近づく。



「痛っ~。途中で風吹いたせいで姿勢が崩れたな~」


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