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あと二日で

「ふむ。とりあえず、時間がなくなったというのが大問題だね」

 気を取り直して、先輩は現状を整理する。

「四葉ちゃんはわたしたちがどういう行動を取っているか、探ってくるはずだよ。落下があの子にとって必要なことかは分からないけれど、もし落ちようと今でも考えているのなら、わたしたちは邪魔でしかない。現場を抑えられたら、説得するなり力ずくで止めるなり、いくらでも対処できるからね。でも逆に、わたしたちの方が先に見つかるようなら、四葉ちゃんのなかでの心象は急激に悪くなる。敵対心も強く持つだろうね。そうなったら、人のプレイベートの監視がどうとか、嘘をついていたとか、突っ込まれるのはこっちになる。たとえその後、現場を抑えたとしても、四葉ちゃんは決して、事情を話そうとはしてくれないだろう」

「ですね」

 同意しつつ、どうしたものかと思考を巡らせる。

 あの霧生木さんから情報を引き出すというのは容易ではない。現場を抑えでもしない限り、事情を話してくれそうにはない。

 ところが現在、おちおち監視を続けている場合ではなくなっている。なにか他に手を打たないとこっちの現場を抑えられてしまいそうなのだ。

「ま、このままでいいとわたしは思うけどね」

「はい? たった今、このままじゃあマズイという話をしませんでした?」

「したけどね、他に手があるのかな?」

 あったら、もう提案している……。

「それに、忘れてないかな? あと二日でゴールデンウィークだよ? いろいろ仕掛けられる期間に入る。何度も打ち合わせしているよね?」

「あ……」

 完全に忘れていた。

 そうだった。あと二日後にはゴールデンウィークに突入するのだ。

 失念していたが、以前から、ゴールデンウィークの打ち合わせはしていたのだ。二週間以上監視を続けても効果がないのだから、これ以上続けても意味がないのではないか。ならば、ゴールデンウィークに二人で仕掛けて霧生木さんを油断させることはできないか。

 そんなことを何度も相談していた。

「四葉ちゃんに気付かれるタイミングがここで良かったと思うべきだよ。もっと前に気付かれていたら、手遅れになっていたかもしれない。あと二日はここで会わずに、ゴールデンウィークに勝負をしよう。それでいいかな?」

「それがベストですね。必要以上の接触は良くないですから、明日、明後日は監視を中止しましょう。で、ゴールデンウィークに打ち合わせ通り、仕掛けてみましょう」

 二人で頷き合う。

「……」

 どうでもいいことだが、最近、先輩との息が合ってきた気がする。

 互いのことをよく知るようになったからだと思うが、素直に嬉しい。

 そして少し、シュンが羨ましくもある。

 一人っ子の俺には、新鮮で、心があったまるのだ。柳先輩のような、尊敬できる人がお姉ちゃんのように接してくれるというのは……。兄弟が欲しいと今まで思ったことはなかったけれど、柳先輩のような人がお姉ちゃんなら絶対欲しい。

「どうかした?」

「あ、なんでもないです」

 ぼんやりと先輩を見つめてしまっていた。

 霧生木さんは可愛いし、異性として気になることはあるけれど、こんな風には決して思わない。


 柳先輩が、お姉ちゃんだったら良いのに……。


「じゃあ、今日は帰ろうか」

「はい」

 席を立ち、玄関へと向かう。

 帰宅中、それとなく「兄弟が欲しい」と口にしてみた。

 先輩は苦笑いで「大変だよ」と返してきた。




 その時、柳先輩が少し疲れていたように見えたのは気のせいだろうか?


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