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十二属性戦士物語【Ⅱ】――新たな戦い――  作者: YossiDragon
第一章:スピリット軍対決編
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第四話「五つの呪いを体に持ちし怪人」・1


――▽▲▽――


 一方、照火達とは違う道を進んでいるメンバー、細砂・雷人・輝光・時音・雫・白夜の内四階にいた雷人は、気を失っている輝光を背負ったままずっと静かな通路を、疲労と共に重たくなってくる輝光をしっかりおんぶして先に進んでいた。しかし、そこで彼の行く手を阻まんと言わんばかりに目の前に大きな門が立ちはだかり先へ進めなくなっていた。

 だが、その門は見るからに怪しい雰囲気を(かも)し出していた。なぜなら、その門にはまるで人間の様な形をした銅像がこの世に生きているように彫刻されていたからである。しかし、その予想は見事に的中していた。砂煙を舞い上がらせて動き出したその銅像は改造された怪物の様に長く太い逞しい腕をぶらぶらと揺らし、雷人達に襲い掛かってきた。

 それから約十分が経過し、攻撃を避け続けていた雷人は呼吸を乱しながら壁に手をついていた。すると、さっきまで全く動かず死人のような状態だった輝光が急に眼を覚ました。本来ならば暗黒街のさらに漆黒の門の中で、闇のパワーがさらに高まって全く動けないはずなのに、今では嘘だったかのようにぴんぴんとし、周りの様子を確認し今の状況を把握している。


「ねぇお兄ちゃん。ここはスピリット軍団の基地の中?」


 気絶したまま雷人におぶられて運ばれてきた輝光の言葉を聞いて、意味不な質問だなと一瞬思ったが、彼女からしてみれば目が覚めたらいつの間にか敵軍基地の中にいるという衝撃事実にいまいち事態を呑み込めていないので、そのような質問をするのは当たり前なのだ。その質問を聞いて、雷人は半ば呆れながら目の前の敵に警戒しながら説明した。


「――分かったか?」


 説明を約十分で終わらせて理解の有無を義妹に確認する。その問いに輝光は笑顔で縦に頷き答えた。


「うん! つまり、あれが敵ってことだね?」


「ん? ああ…まぁそうだが…」


 義妹――輝光が敵を指差して確認を取り、雷人は指差す方を見て曖昧な返事をした。しかし、彼女はその空返事に怒るどころか、むしろ笑顔で義兄に(にこや)かな笑みを浮かべてお礼を言った。


――まったく、お前は能天気でいいよな…。



 と心の中で呟きながら雷人は武器を構える。輝光もその後に続いて真似するように武器を構えた。


「どうやら貴様の仲間は、この闇のパワーが集まるスピリット軍団の基地の中で、なぜ光属性戦士が動けるのかと不思議に思っているな? その幼稚な脳みそで理解出来るかは分からんがせっかくの来客だ、教えてやろう……ここは光属性を持つ者が特別に自由に羽を伸ばしのんびりしていられる……そんな場所なのだ。だからこそ俺はこの光の門の番人を務めている。……第五部隊副隊長『ゴルドン=ドクルディデス』――それが俺の名前だ。第五部隊は光属性を持つ者が多いからな…。こうやって、光属性の力を持つ者が門番としていなければならないのだ。だが、俺にも一つ嫌なことがある。それは門番は一生ここの門番を務めなければならないということだ……。普通ならば自由自在に動けるのだが、俺はこの門に体を囚われ…今では、この門と同化している状態だ。だから俺はここから解放してもらうために十二属性戦士…貴様たち二人を殺す!! このゴルドン様がなッ!!!」


挿絵(By みてみん)


 説明の途中からほぼ自分の願望になっていたが、それを聞いていた輝光と雷人はその場に立ちつくしたまま何かを考えていた。

 ドクルディデスは門から動けないために、どの場所にも届く様に改造されたその器用な腕を巧みに使いこなして襲い掛かってきた。しかし、二人ともそれを難なく躱し、一旦身を引いて態勢を立て直す。


――どうするか…。相手は光属性……腕以外は体も自由が利かないようだから輝光にも倒せるだろう…。ここは一つこいつの実戦経験も積む過程で試してみるか……。



 心の中で一つの計画を目論んだ雷人は、まだ目覚めたばかりの可愛い義妹を戦闘に出すことに決めた。キリッと眉毛を吊り上げ黒縁メガネをカチャリと上にあげメガネを光らせると、輝光を見下ろし期待の眼差しを向けて言い放った。


「よし、輝光! お前がこいつと戦え!!」


「えぅっ、私が?」


 急に義兄に命令され、思わずびっくりして恥ずかしい声を出してしまった輝光は、不意に顔を真っ赤にして俯いた。


「どうした?」


「ううん、わ、分かったよ。う、うん……」


 顔を覗き込もうとする雷人に気づきビクッと体を震わせた輝光は慌てて首を激しく左右に振り何度も頷きながらその命令をやり遂げることにした。

 一歩前に出て武器を構える小柄な忍者幼女は、ブルブルと細くて白い足を震わせて扉と肉体が融合している不気味な敵を恐怖の眼差しで見つめた。


「どうやら、貴様が俺の相手をするようだな。……行くぞッ!!」


 その声に少しビビッたのか、輝光は再び体を震わせ同じように声を震わせながら「お手柔らかに……」と細々とした声で言った。

 敵の攻撃は全て図体がデカい分遅かった。無論、それだけではなく、光属性でスピードなどではメンバー内で随一である輝光が相手をしているというのも理由にあった。そのおかげで、相手の動きが鈍いのに対して瞬発力のある輝光が攻撃の先手を取った。

 短剣を勢いよく放つと、短剣に纏った光の魔力がさらに活性化してスピードが上がり、敵の黒い腕にブスリ!と突き刺さった。


「くっ!」


 ドクルディデスはさほど痛みがないかのようにあっさり短剣を手で抜き取り地面に落とした。そして、そのちっぽけな攻撃に呆れる様にやれやれと落胆の表情を浮かべて言った。


「ほぅ、貴様の武器は短剣か……。おまけに貴様の腰にあるものはクナイか何かか? 忍者の様なマネをしおって…。それに、攻撃がどれも小さく対した威力がない。期待して損したわ! 代わりにこれでもくらうがいいッ!!」


 そう言ってドクルディデスは輝光の何倍もの光属性の魔力を鉛の様に硬い豪腕に纏わせ振るった。


「『活性硬化の豪腕アクティヴェイト・アーム』!!」


「うぐぅっ!!」


 真正面から来たその大きな鉄球に、輝光の様な小柄な少女が逃げられるわけもない。あっさりと攻撃を受けた輝光は足を少し負傷した。


「大丈夫か輝光?」


 雷人が心配そうに輝光の元へ駆けつける。


「だ、大丈夫…。いいからそこで見てて!」


 あくまでも自分で倒したいという気持ちがあるのか、雷人を向こうへ追いやる輝光。心配そうに彼女を見つめる雷人に対し、輝光は物凄いやる気に満ち溢れていた。輝光は弓矢に光の魔力を練りこむと矢を発射した。もちろん、以前…カルバスを討った時と同じ薬を塗った状態で…。しかし、その矢の行く手は光の門の扉についた少し小さめの鍵穴だった。


「くそっ、軌道がずれてしまったか……!?」


 小さく舌打ちして雷人が惜しいという動きをする。だが、彼女は残念そうな顔は少しもしていない。それどころか、次に彼女の口から出たのは意外な言葉だった。


「大丈夫…。私は、はなからあの鍵穴を狙ってたんだから…」


 あの頭脳明晰と言われた雷人にも今の言葉は理解できなかった。雷人は自分が理解できないのが悔しいのか輝光に理由を尋ねた。すると輝光は一度雷人の顔を見てニコッと笑うと説明した。


「あのドクルディデスの魔力が集中しているのはあの体じゃなくて鍵穴からなんだ! 恐らく、あの体はいわば見せかけだけの偽物…。本体は鍵穴なんだよ…。元々の体は随分前に失くなってたんだろうね…。だから、あの鍵穴を破壊すれば彼はこの光の門から解放される。それで、私はあの鍵穴を破壊したの!!」


 その説明を聞いてようやく雷人は納得した。すると、それとほぼ同時に鍵穴が粉砕され、そこから大量の光の魔力があふれ出した。


「うぐぁああぁあああああぁああッ!!!」


 ドクルディデスは激しい叫び声を上げて長い腕を振り回しもがき苦しんだ。やがて、彼らのいる場所は眩い白い光に包まれた。


「うっ、眩しい…!!」


 目をやられないように雷人は腕で顔を覆い、ポケットから素早く二個の度の入っていないサングラスを取り出して一個を輝光に……もう一本を自分の顔にかけた。すると、聖なる光の中に、一つの邪悪な悪の魂が見えた。


「何だあれは!?」


「あれがドクルディデスの魂…。心配しなくても光の門から解放されてあの世に逝くんだよ…。あの銅像はいわば魂を()れておくための人形ってところかな……」


 輝光が天井に向かって消えて行ったドクルディデスの魂を見てそう言った。


「そうだな…」


 雷人は天井を見つめたまましばらくの間動かなかった。

 と、その時、彼の肩をツンツンと何かがつついた。ふと後ろを振り返ると、そこには身長が足りないために背伸びをして彼の顔の前にグイッと輝光が半分のパワーストーンを見せつける姿があった。


「えへへ…、パワーストーン手に入ったよ!」


「ああそうだな……よかったじゃないか!」


 内心、今では素直に喜べる状態ではなかった。が、それでも義妹の手前きちんと作り笑顔を見せておいた。しかし、突如輝光の顔から一瞬にして笑顔が消えた。また、それと同時に彼女はふっと前に倒れ掛かった。それを慌てて雷人は間一髪の所で支えた。


「お、おい…! どうしたんだ輝光!?」


「うん…どうやら光の門が開いたせいで光の魔力があちこちに散らばっちゃって効果が薄まっちゃったみたい…。ごめんね、私少し疲れたから寝るよ…」


 そう言って輝光は雷人の腕の中でコクリと気を失った。


――よく…頑張ったな。えらいぞ、輝光。



 彼は心の中で義妹を褒め称え、彼女の体をしっかり支えると、一度自分の服装を整えてそれから彼女をおぶり先へと進んでいった……。


――▽▲▽――


 その頃、先程四番隊の副隊長であるテレンスを殺した鎧の青年は、甲冑をカチャカチャ言わせながら暗がりの通路を通り、とある一室の中に入って行った。


「ここは、今までの通路よりも一段と暗いな…。足元に気をつけなければ敵が来たりして勝負などになった際に不利になってしまう…」


 そう言って足元に注意しながらさらに先へ進んでいくと、何かにゴツンと頭をぶつけた。


「うぐっ……な、何だ?」


 ゆっくりとその顔を上げると、暗がりでよく分からないがすごく大きい存在感を感じた。どうやら何かがあるようだ。すると、そこから図太く低い声がした。


「余の眠りを妨げし者は誰だ!?」


 ゆっくりと、それでいて太い心の芯から震わせる様な声音に大抵の人間なら震え上がって恐怖心はマックス状態に陥るだろう。が、鎧の青年は肝が座っているのか少しも臆することなく何者かの質問に答えた。


「俺の名前は『ラグナロク=ドルトムント』…。七色不死身能力を持つと言われる『闇魔法結社』を殺しに来た者だ…」


「ほほぅ、あの闇魔法結社を殺すとな…、グフハハハハ…! 滑稽滑稽……実に滑稽だ。そのようなことを言うとは、汝…さては十二属性戦士と見受けたがどうだ?」


「違うな……俺はあいつらとは違う」


「左様か…。(しか)らば、何故闇魔法結社の持ちし七色不死身能力を手に入れようとする?」


「俺は……鎧一族の末裔だ」


「むっ!? それは真か?」


「ああ…」


「何と……これはたまげたぞ。まさか、あの古の四族が一つ『鎧一族』の末裔がこのような場所に来るとは…。はるか昔に、伝説の戦士に滅ぼされし一族あり……それが鎧一族。しかし、まさかまだ生きておようとは……余も知らなんだ…」


「貴様の名は何という?」


「これは失礼した…。汝が名乗り、余が名乗らぬのも気分が優れぬ…。よかろう、余は第三部隊隊長『オルベニア=ヴィロヴァルドス』…。生まれながらにして五つの呪いを体に宿らせし者だッ!」


 そう言ってヴィロヴァルドスは大きな唸り声を上げた。すると、それと同時に周囲の燭台に青白い炎が灯り、空間を明るく照らし出した。


「こ、これは…!?」


 青年の眼に映し出されたのは顔をナマハゲの様な仮面で隠した背丈が鎧の男の倍はあろう巨人だった。手首を、最近よく見る銀の手錠ではなく木で出来た手錠で拘束され、足首には黒い輪っかを取り付け、さらにそこに鎖で繋がれた黒く大きな鉄球がついている。背中には何か細い槍状の物が幾本も突き刺さっていた。また、体型がゴツく、それのせいもあってか、すごく威圧感があった。


「ふんっ、どうした? 驚いて手も足も出ぬか?」


「いや、手を拘束された状態でどうやって戦うのかと考えていただけだ…」


「今に……分かる」


 互いに顔を隠した状態で睨み合う。見えない火花が目線の中心でちらつき、戦いの場に緊張感を湧き立たせる。そして、その微動だにしない状況をいち早く脱したのがラグナロクだった。先手に打って出た彼は、背中にしょった鞘から大剣を引き抜きそれを思いっきり彼の仮面に向かって振るった。しかし、ヴィロヴァルドスはそれをあっさりと躱し嘲笑しながら篭った声を出して言った。


「その様な隙だらけの攻撃……余には効かぬぞ?」


「はなから解っているさ! 今のはただの小手調べ……次はどう出るかな?」


 大剣をここぞとばかりに振り回し、周囲に敵が近づけないようにし足を強く踏み込むと、高く飛び上がり勢いよく剣を振り下ろす。


「これならば、受け止められまいッ!!」


「ふんっ、笑止ッ!!!」


 そう言って、ヴィロヴァルドスは大剣を拘束された状態の手で白羽取りした。


「なっ、バカな!?」


「くっくっく…、どうした? もう終わりか? ならばこちらから行くぞ!!」


 ヴィロヴァルドスは仮面の口から目に見える黒煙を吐き出した。一瞬ため息のように思われたが、それは少し違った。どうやら、この煙は吸ってはいけないもののようだ。彼は、慌てて間合いを取り煙が届かない距離まで逃げた。


「……グフフ、どうやらこの煙の正体に気付いたようだな…。ご明察、この煙は余の呪いが一つ『死絶の黒煙(デス・スモーク)』……。これをほんの少しでも吸えば怪鳥でもイチコロで死に絶える代物だ…。さぁ、この死絶の黒煙(デス・スモーク)を相手にどう戦う、ラグナロクとやら…?」


「なるほど……確かにそれは厄介だな。うっかり貴様の間合いに入ってモロにその煙を当てられればたまったもんじゃない。しかも、貴様の体にも触れられないときた…。だが、所詮は煙…。ならば、払い去るのみッ!!」


 そう言ってラグナロクは大剣を豪快に振るい煙をヴィロヴァルドスへ跳ね返した。


「ぬっ!? 余に向かって死絶の黒煙(デス・スモーク)が!? …グハハハ、残念であったな、余にはこの技は効かぬ! 何せ、余の体は既に呪われているのだからな…。このような攻撃は屁でもないのだ」


 と言って自慢気に高笑いするヴィロヴァルドス。不気味な笑い声が部屋中に響き渡り反響して戻ってくる…。しかし、ラグナロクはそんなことにも動じず攻撃を続けた。


「愚かな者よ……。余にその攻撃は効かぬと申しておるのに……。根性と気合でどうにかなるほど現実は甘いものではないぞ!!」


 拘束された拳に力を込め魔力をため込むと、彼は腕を振り上げそのままラグナロクめがけて振り下ろしてきた。


「くっ! そんなノロい攻撃では俺にダメージを与えることはできないぞ?」


「グフフフ……、はなからそのようなことは解っておる…。余の目的はあくまでも汝の足止め…。闇魔法結社の者どもが邪魔な十二属性戦士を葬ってる間、汝に邪魔されるわけにはいかぬのでな!!」


 ヴィロヴァルドスは体表に邪悪な魔力を纏わせた。


「そ、それは…!?」


「グフフ、これが余の第二の呪い…。『死絶の体毛(デス・サーフェイス)』…これに触れれば、様々なものが消えてなくなる……。さぁ、今の余に物理攻撃は効かぬぞ? …どう出る?」


 まるで相手の力を試すかのような物言いでヴィロヴァルドスが挑発する。

というわけで、一瞬眼を覚まして再び眠りについてしまった輝光。ホントに闇の力の濃い場所では眠り姫ですねこの子は。雷人もずっとおぶり続けてよくキツくないものです。まぁ、それほどまでに大事な存在なのかもしれません。

一方で謎の騎士の名前がようやく判明しましたね。ラグナロク……神話なんかでよく登場する言葉です。元々は北欧神話で出る戦いの名称かなんかだったと思います。格好よかったので引用させてもらいました。ドルトムントも、確か何かの言葉だったと思います。

相手は第三部隊隊長です。副隊長はチョロかったですが、この隊長さん結構曲者です。何せ体に五つも呪いを持っている人ですからね。挿絵つけられたらつけようと思うのですが、ホントにナマハゲみたいな仮面つけてます、はい。

では、後半もお楽しみに。

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