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十二属性戦士物語【Ⅱ】――新たな戦い――  作者: YossiDragon
第一章:スピリット軍対決編
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第二話「魂の集う城」・1

 光の都と闇の都の狭間にあると言われる暗黒街にやってきた十二属性戦士は、歩き詰めによって体力を消耗し、とりあえず途中の森で休憩タイムを取る事にした。


「しっかし、随分と歩いたはずなのに漆黒の門までまだまだ先なんてナゲェ~なぁ!」


 爪牙が頭をかきながら言った。他のメンバーもなかなか目的地につかないことに少々苛立ちを感じていた。

 そして休憩も終わり、十二属性戦士はさらに先に進んだ。

 やがて、目的地である漆黒の門へたどり着いた。門はずっしりと構え、真っ黒な漆黒の色に染まっている。しかも、その扉は目撃情報の通り開いていた。本来ならばこの扉は封印されているために閉じられていなければならないのだが、何が原因なのか開いていた。その理由も気になったが今はそれよりもこの中に本当に大事な仲間――暗夜がいるのかが十二属性戦士にとっては気がかりでならなかった。


「この中だな…」


 白夜が扉の前に立ち言った。

 準備が完了し、順に門から洩れる光の中に消えていくメンバーの中で、雷人の腕の裾を輝光が引っ張った。


「ん、何だ?」


 雷人が後ろを振り返り訊いた。


「実は…、さっきから息苦しくて…」


 その言葉を聞いて、雷人は一年前に闇の都へ訪れた時のことを思い出した。


「そうだった……。ここは光属性であるお前にとっては辛かったな…。ほら、乗れ!」


 そう言って雷人はおんぶの構えをした。


「ありがとう!」


 輝光は嬉しそうに笑みを浮かべると、雷人の背中に自身を預けた。ゆっくりとその場に立ち上がった雷人は義妹のふとももを腕で抱えて一緒に門の中に入って行った。同時に輝光は気を失った。漆黒の門の中に入ったことで巨大な闇の魔力による瘴気に()てられたと、そんなトコだろうと雷人は踏んだ。

 十二属性戦士が目を覚ますと、とても暗い場所にいた。しかもすごく暑い。周りを見てみると、そこには辺り一面溶岩が真っ赤に燃えていたドロドロに煮え(たぎ)っていた。


「すげぇな…。こんなのに落ちたらひとたまりもないだろうな」


 照火がゴクリと息を飲みながら言った。頬から汗ではない嫌な汗が垂れる。

 ずっと一本道を進んでいくと十二属性戦士の目の前に大きな城と、とても頑丈そうな門代わりのような大きな歯車が回っているのが見えた。


「この歯車はそう簡単には壊れそうにないな…」


 雷人が落ちそうになる輝光を背負いなおしながらその歯車全体を見て言った。


「どうやらこの穴を通らないと先に行けないみたいね」


 楓が歯車の所々に空いている穴を見て言った。

 すると、その話を聴いて雫が冗談半分に言った。


「じゃあ、まずは残雪行ってきて!」


「ええ~ッ!?」


 残雪は突然の事に焦った。あまりにもの驚きに目がカッと見開かれる。


「確かにそこは一番下っ端である残雪が行くべきだな!!」


 爪牙も言った。


「ちょっと、それはマジで勘弁ッスよ! いくらなんでもこれは行けな――」


 残雪の言い分を無視して爪牙は強引に彼を突き飛ばした。


「うわぁあああぁああッ!!?」


 突き飛ばされた残雪は、その衝撃の反動でそのまま大きな歯車に空いた穴を走り抜けて行った。それを見た二人が後ろから自分達も負けてられないと後を行く。その後を残りのメンバーもついて行った。

何とか全員が歯車の門を通り抜け、ようやく城の入口に到達した。


「この中に暗夜がいるのね」


 菫が城内へ入る扉の手前にある数段ある段を一段一段上がりながら言った。ここでもまた力自慢でお馴染みの爪牙が入口の扉を開けて他のメンバーと一緒に中に入った。

 そこには殺風景な風景が広がっていた。壁にはスピリット軍団の肖像画が飾られていた。中央にはまた階段があり、そこから上に行けるようになっている。十二属性戦士はひとまずここで幾つか分かれることにした。

 くじ引きで分かれて二階コースと一階コースにとりあえず分かれた。分かれてしまうと不死身能力を打ち消すための薬品を渡すことが出来なくなるため、先にあらかじめ菫が一人一人に二本ずつ不死身の能力を消す効果のある薬を渡した。そして、二階コースに進むメンバーと分かれて先に進んだ。

 一階に行くことになった照火・楓・菫・残雪・爪牙・葬羅は奥の狭い通路に出た。そこで第一関門が襲ってきた。それは、(トラップ)ではお決まりのパターンで出てくる巨大な鉄球だった。


「くそ……よりにもよってこんなベタな罠が来るなんてな…」


 舌打ちしながらそんなことを言う照火達は鉄球から必死に逃げる。すると、足元が崩れて彼らの行く手を阻んだ。なんとかメンバーはその穴を飛び越え着地することに成功した。


「っぶねぇ~……」


「何とか第一関門突破ね…」


 爪牙があごから垂れる冷や汗を拭い、楓がほっと胸を撫で下ろし体を起こした。二階に上がると、またしても長い通路が現れた。先ほどから罠続きで、体力を少し削られ気味だったメンバーはなるべく罠を避けようと恐る恐る進んだ。

 刹那――、急に足元が崩れて照火と楓が落ちてしまった。


「うわあああぁあああッ!!」


「きゃああぁあぁあああっ!!」


 二人とも一気に二階から一階に落ちてしまい、さらにさっきまでの場所とはすごく違った。


「ここは何処だ?」


 照火が辺りを見回す。しかし、そこにはマグマの川がグツグツと煮えたぎりながら流れているだけだった。しかも向こう側の壁はマグマで出来ているようだった。

 その時、楓が照火に呼びかけた。


「照火……、どうやらここは第二部隊の部屋みたい…」


 楓の言葉に疑問を感じた照火は訝しげにそちらを向いた。マグマの川のある部屋を見ただけでどうして第二部隊の部屋だと気づいたのか理解出来なかったからだ。しかし、それもすぐに理解出来た。彼女の指差す方を見てみると、そこには壁に古臭い文字で二というローマ数字の文字が刻まれていたのだ。なるほどこれを見て楓はここが第二部隊の部屋だと判断したのかと照火も内心で納得する。

 と、その時、照火がある物を感じた。さっきからマグマの壁から視線を感じるのだ。不審に思いよ~く目を凝らしてみると、それは人の様な形にヒビが入っていた。すると、そこから声が聞こえてきた。


「ふふ、よく気が付いたね……まさかこの僕を見つけるとはなかなかいい目をしているよ! 弟が聴いたら何て言うだろうなぁ~」


 その太った野太い声で喋る大きく丸々とした体形をしている男はさらに話を続けた。


「そうか……君らが十二属性戦士だね? だとしたら隊長の恨みを今こそ晴らしてやる!」


 そう言って男はステッキを振り回してきた。


「はは、どうだ? 僕の武器の威力はッ! こう見えても僕は第二部隊副隊長『フィニアン=フロンド』なんだぞ?」


 フィニアンと名乗る男は腰に手を当て自慢した。


「だったら、お前が俺のパワーストーンの半分を持っているんだな?」


 その照火の言葉にフィニアンは驚いた様な顔をして訊いてきた。


「どうしてそれを知ってるんだよ!? そのことについては隊長、副隊長しか知らないはず!!」


 その焦ったような喋り方を聴いて楓が答えた。


「あなた達の第一部隊隊長が話してたわよ?」


 ジト目で楓が犯人を教えた。


「エイル隊長め! …ボスに喋るなって言われてたはずなのに…ッ!!」


 フィニアンはブツブツと何やらグチり、考え事をしながらふわふわと宙に浮いている。

 そして、何か決めたのかギロリと照火と楓を睨みつけたフィニアンは叫んだ。


「こうなったら何としてでもお前達を殺してやるッ!」


 フィニアンは武器であるステッキを持ち攻撃してきた。


「うわっ!」


 照火はギリギリのところでステッキに纏われた炎を躱した。


「こいつもくらえッ!」


 そう言って放たれた炎は、凄まじいオーラを纏って楓に突っ込んできた。


「あっ!?」


 楓は不意打ちの攻撃に動けずその炎を躱すことが出来なかった。それに気づいた照火は彼女の名前を叫んで、急いでその場に駆けつけその場に飛び込んで楓の代わりにその炎攻撃をモロに受けた。一応炎攻撃は受けなかったものの、結局楓は照火に突き飛ばされたことにより壁に背中を強打――結果、気絶する羽目になった。


「バカな奴だ! 仲間などを守って何になるというんだ!!」


 フィニアンはニヤリと笑いながら言った。


「うるさい! それよりも暗夜はどうしたんだ!!」


 照火は今まで気になっていた仲間のことを敵ならば絶対に知っているだろうと思い質問した。その言葉にフィニアンは不敵な笑みを(こぼ)しながら答えた。


「へへっ、僕は知らないもんね! ただ一つ言えることは、もう暗夜は前の暗夜じゃないってことだよ!!」


 照火は緊張のせいなのか、体が思うように動かない。すると、その様子を見てフィニアンが言った。


「どうやら、暗夜の元に辿りつく前に殺されちまいそうだねぇ! ギャハハハハ!!」


 フィニアンのバカにしたような言い方にムカついた照火は、怒りのオーラを自身の炎属性の魔力に乗せて思いっきり敵にぶつけた。それをギリギリ躱したフィニアンは焦った様な顔で文句を言い放った。


「うおわっと! ちょっとちょっと怒っただけじゃ僕には勝てないよ?」


 しかし、そんな言葉には耳も貸さず照火は攻撃を続けた。すると、攻撃を防ぎ続けていたフィニアンのステッキにとうとうヒビが入った。


「えっ、そ…そんなバカなッ!?」


 その言葉と同時にステッキが無情にも壊れる。



「そ、そんなぁああッ!!」


 フィニアンは無防備状態になってしまい、慌てて火球を作り出して照火にぶつける――が、怒りのオーラに包まれた照火には攻撃は意味を成さず、普段ステッキばかりで自身の手から生み出す炎攻撃の火球は使ったことがなかったフィニアンのヒョロヒョロ火球は煙のように消えた。それを見たフィニアンは自分に勝ち目はないと察し焦燥感に駆られた表情でその場から逃げようとした。しかし、それを照火が許すはずもなく――。



ガキィィィィイイン!!!



「ぐッはぁああアァアアッ!!」


挿絵(By みてみん)


 凄まじい斬撃と炎がフィニアンを襲い、彼はそのまま地面に墜落してブヨブヨの体を強打した。すると、自身の最期を悟ったのか急に表情を一変させて彼は何かを呟いた。


「これで、僕がここに残る必要もなくなったなぁ…」


「何か残りたい理由があったのか?」


 未だ怒りを鎮めきれない照火が少しムスッとした表情で尋ねる。すると、一応訊いてくれることに多少の嬉しさを感じたのかフィニアンはフッと鼻で笑って話し始めた。


「僕達のボスは……既にこの世にいないんだ。それで、統括する者がいなくなったために新たなボスが誕生した。でも、そいつは僕達のボスとは程遠い。何かボスと関係があるらしいけど…僕にはそうは思えない。それに、あの第一部隊やリーダーのやることにも確信を得ない…。彼らのやってることは本当に正しいのか分からないんだ…。数十年前にあったあの戦争――。あれもまるで子供の悪戯のように感じる…。そして、その悪さをした僕達には毎日のように罪悪感がのしかかってくるんだよ。本当は僕もこんなことはしたくなかった…。僕はただ平和に生きたかっただけ…。でも、闇の戦士の子孫として生を成した僕らは皆光の戦士達に蔑まれる。以前のボスはそんな僕を温かく迎え入れてくれた。でも、今のボスは違う…。別のボスになって僕の居場所はもう第二部隊しかなくなった。でも、そんな第二部隊にも――もうカルバス隊長はいない……。僕にとって生きがいのある頼れる人物なんて、もう誰一人としていないんだ……」


 その話を聴いていて照火はボソッと呟いた。


「お前の…、お前の双子の弟はその中に入らないのか?」


「ふっ、弟には悪いけど……あいつにはもう別の頼りになる人物がいる…。だから、僕はもういいんだ」


 そう言ってフィニアンはゆっくり立ち上がった。よろよろとよろめきながら体を動かしマグマの川に近づいて行く。すると、それを見た照火が慌てて彼を呼び止めた。


「おい危ないぞ!?」


 その忠告を聞いてフィニアンは自嘲する様に言った。


「いいんだ……隊長もいない。それに毎日のように僕を可愛がってくれたボスももうこの世にはいない。だから、僕もあの世に行ってボス達に会ってくるよ……これも所謂一つの罪滅ぼしさ……。さよなら、十二属性戦士。同じ属性のよしみ、何だか親近感をすごく感じるものがあった……ありがとう」


 そう最後の一言を残し、フィニアンはマグマに落ちて行った。


「おい!」


 照火は止めようとしたが既に遅かった。フィニアンはそのままマグマに静かに飲まれていき、体を徐々に溶かされて燃えていった。衣類一つ残らず骨さえも溶かす数千度のマグマ……。そこから漂う人間の死の臭い。


「くそ……ッ!」


 彼は唇を噛み締め悔しがった。地面に落ちていた半分のパワーストーンを拾い上げ武器にはめこむ。すると、今までせき止められていた魔力が一気に流れ出したかのような感覚を感じた。だが、それでもそこまで喜ぶことが出来ない。倒すべき敵を倒したはずなのにこの感覚は何だか変な感じがした。


「これが俺の本来の力なのか…?」


 自分の手を見ながら照火はそう言った。こうして照火は見事自分のパワーストーンを取り戻し敵を倒すことに成功した。

 未だ気絶している楓をおぶった照火は岩で出来たドアを開け、静かに出て行き先へと進んだ……。


――▽▲▽――


 その頃、爪牙達は照火達と合流しようと進みつつ目的地に向かっていた。


「何だか変な城だな…」


 爪牙が城の構造を確認しながら言った。というのも、さっきから薄暗くて無駄に長い一本道の廊下しか続いていなかったのだ。

 と、その時、ゴゴゴ…!という効果音と共にメンバーが後ろを振り返ると、足場が急に崩れ始めた。


「や、やべぇ…!? 逃げろッ!!」


 爪牙が後ずさりしながら皆に呼びかけた。皆も急いで向こうの方へ駆けて行く。

 その時、菫と残雪の足場が早めに崩れて落ちてしまい、タイミングをつかみ損ねた二人が真っ逆さまに落ちてしまった。


「なっ、残雪! 菫ぇぇえッ!!」


 二人の名前を大声で叫んだが、その声は反響するだけで二人からの返答はまったく返ってこなかった。


「…」


 驚愕のあまり葬羅は黙ったまま俯いてしまった。

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