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十二属性戦士物語【Ⅱ】――新たな戦い――  作者: YossiDragon
第三章:防げ!魔豪鬼神襲来編
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第十六話「二年後に向けて」・2


――▽▲▽――


「はぁ、はぁ……」


 夢鏡王国第六代目女王のフィーレは、呼吸を乱して肩で息をしていた。

 フィーレの目の前には、数百年前初めて封印し、それから何年かに渡って重複封印を施してきた夢鏡と、その中に封印されているオドゥルヴィア博士の姿があった。顔を俯かせ体中を光の鎖で拘束されたままその上から数十枚の封印の札が貼られているオドゥルヴィア博士の姿。


「ふぅ~……封印術展開!!」


 フィーレが一呼吸おいて自身の気を引き締める。


「『鏡裏封印弐式きょうりふういんにしき光陽力(こうようりょく)』!! ……はぁ、はぁ。これを使えば太陽の光による力を用いて封印の力を上昇させることが出来る!」


 膝に手を突き、呼吸を整えながらフィーレはそう呟いた。しかし、まるで天は彼女を見放したかのように雲行きを怪しくさせる。


「しまった! これじゃあ封印の効力が――」


 フィーレがそう口にすると同時に、夢鏡の封印が解かれ始めた。夢鏡の表面に巻きつき、その先が地面に突き刺さった状態になっている鎖がパキンパキンと儚い金属音を立てながら砕け霧散していく。このままでは間違いなくオドゥルヴィア博士が復活を成し遂げてしまう。それだけは何としてでも防がなければならない。そう決意したフィーレは下唇を噛み締め次の手段に打って出た。


「あれだけは使いたくなかったけれど……もうこれしかない!」


 フィーレは杖を地面に突きたて紋章を太陽へと向けた。そして、詠唱を唱える。それが終わると瞑目していた目を開けた。同時に声を張り上げ叫ぶ。


「『熾天使の加護(アマテラス)』!!」


 フィーレがそう叫ぶと、雲行きが怪しかった空がいきなり快晴になり、天気が真夏のカンカン照りの様な状態に変化した。


「ごほっ!!」


 突然血反吐を吐き出すフィーレ。慌てて口に手を運ぶものの、口から手を遠ざけ手の平を見てみると、その手にはベットリと血がついていた。


「くっ、やっぱり副作用が……」


 そう、実はこの熾天使の加護(アマテラス)には副作用が伴う。薬にもいくつかは副作用があるように、フィーレが用いる技にも幾つかは副作用が伴うのだ。これもその一つだ。


「精神崩壊……相当な心の強い持ち主でないと脳を狂わされて何度も吐血を繰り返し、最後には死に絶えるという何ともムゴい代物。だからこれだけは使いたくなかったのに……。全く、叔母さんったらちゃんと仕事してくれてるのかしら……」


 ふとそんなことを口走ってみるフィーレ。しかしずっとこのまま独り言を呟いていても時間が刻一刻と過ぎていくだけ。しかも時間が過ぎれば過ぎる程、オドゥルヴィア博士が封印から解き放たれる確率が上がって行く。


「快晴が続いている間にでも封印を完了させないと」


 フィーレは自身の心にそう決意した。




――ここは。我は一体何を? 何も思い出せん……確か我はクロノス社に勤めていて。うッ!? 体が動かせぬ? ……あ、あれは!? ふぃ、フィーレ!? ……はっ! 思い出した……思い出したぞッ!! 我はオドゥルヴィア=オルカルト=ベラス! ラスプロジェクトを実行し、世界を我が物にしようと目論む者だ!! フッフッフ……ここは差し詰め夢鏡の中か。ということは、封印されたのか。フッ、十二属性戦士と言ったか、面白い連中だ! あやつらの魔力を使う事が出来ればWWW(スリーダブル)を復活させるのも容易だな! グフフフ……フハハハハハハ!!!






「な、何!? 急に力が増して……っ!」


 突然の事態に焦燥感に駆られるフィーレ。杖にすがりつき、もうその場に立っていられないような状態になりつつある今の彼女には、これ以上の封印を施す程の力は出せそうになかった。しかし、ここでやらなければオドゥルヴィア博士が――。そう思うと、やらずにはいられなかった。だが、想うように体が動かないフィーレ。

 と、その時、フィーレの事を呼ぶ声がした。


「お姉さまっ!!」


 声のする方を向くと、そこには全身を真っ黒なローブに包んだ銀髪の人物が立っていた。フードで顔が隠れており、うまく表情は窺えないが、体つきと声音から女性だという事は理解出来た。


「はぁ、はぁ……ルナー、来てくれたの?」


「当たり前です。お姉さまのピンチに来なくて妹は務まりません! それに、私達は世界四大神のそれぞれの柱を担っているのですよ? これくらいの事は当然です!」


 と、きっぱり答えるルナー。

 『ルナー=ロルトス=ナイトメア』。それが彼女のフルネーム。世界四大神の一人にして大神の娘。また、フィーレの妹でもある。月の力を操ることが出来、太陽の神であるフィーレとは対になる存在。要は、フィーレが陽……ルナーが陰というわけだ。


「後は私に任せてお姉さまは休んでいてください! これ以上やればお姉さまの体が持ちません! お姉さまは夢鏡王国の第六代目女王を務める者なのですから、欠けてはならない存在なのです!!」


 ルナーはそう言って懐から鏡を取り出す。鏡面の縁を銀で装飾されているこの鏡は、フィーレで言う杖の様なものでこれを使って力を使用することが出来る。蛇足だが、彼女もまたフィーレ同様相当な封印術を使用することが出来る。


「では行きます! 光陰術『壱式(いっしき)精魂離体(せいこんりたい)』!!」


――ぬおおぉおおおおおおおッ!!!? な、何だこれはッ!?



「これは月の力によって精神を体から引き離す技です! とても高度な技なので、多用は出来ませんが、封印に用いるのならもってこいの技です! 何よりも、暴れたりしている相手にはとても有効的なのです!」


 ルナーは鏡を操作しながら説明した。オドゥルヴィア博士の精神に向かって――。

 と、その時、夢鏡の中から体から離れたオドゥルヴィア博士の精神がルナーに向かって襲い掛かってきた。


「なっ!?」


――貴様のその首根っこ、掻っ切ってくれるわッ!!



 そう叫んでオドゥルヴィア博士の精神はルナーの首回りを襟巻きの様にグルッと囲んだ。


「くっ!? ぐぅあっ!!」


 ルナーは精神に首を締め上げられ苦悶の表情を浮かべる。


「う、く……んあっ!」


 さらにそこへチクッと何かに刺されたかのような痛み。思わずその変な痛みに思わず喘いでしまうが、その痛みを感じるや否や、その精神から体の自由を取り戻した。


「やりましたね? だったら今度はこっちの番なのです!」


 ルナーは、ローブのフードから出ている白銀の髪の毛を靡かせながら銀色の鏡を操った。


「『弐式(にしき)精魂封壺(せいこんふうこ)』!!」


 今度はあらゆる装飾が施された異様な壺が出現した。

 刹那――オドゥルヴィア博士の精神が壺に吸い込まれ始めた。


【ぐぅおあァアぁぁぁぁぁァアァァぁぁぁぁぁァぁぁぁッ!!!!】


 苦しそうな呻き声を上げながら壺に吸い込まれていく精神。それを見ながらルナーはしてやったと言った顔をしながら先程何かされた首の辺りを気にしてその部位に触れた蚊にさされたかの様な感触を感じるが、特にこれといった変化はなかった。


キュポンッ!


 完全に吸い込まれたオドゥルヴィア博士の精神。そして、そこへルナーは蓋を掛けさらに言葉を口にする。


「『四柱貫封(しちゅうかんふう)』!!」


 それを声に出すと、すぐさま何もない空間から光の細い柱が出現し、まるで黒ヒゲ危機一髪の様にそれをあらかじめ開けてあった穴に突き刺す。


「ふぅ、ひとまずこれでOKなのです。後はこの場所ごと封印すれば……」


 周囲を見渡し、今自分と姉がいる場所に何があるのかを位置確認するルナー。それが終わると、気を失ってしまっているフィーレを背負い、杖を彼女の体を支えている方の手で持ち、余ったもう一方の手から何かを出現させた。


「これで後もう一段階」


 カチッ! と丸いタイマーの様な物を夢鏡城屋上の真ん中に設置するルナー。


「急がないと!」


 どうやらこのタイマーは時間制らしく時間内に今いるこの場から脱出しないといけないようだ。

 慌ててその場から駆け出すルナー。しかし、姉を背負っている負担の上に魔力の消費が重なり、意識が朦朧としていて視界も随分霞んでしまっていた。


「急がなきゃ、急がなきゃ……」


 既にルナーの意識は殆どなく、その体を動かしているのは使命感のみの様な状態だった。そして階段を駆け下り夢鏡城の五階フロアに到着する。それを理解したルナーは、近くの太い柱に姉のフィーレの背中をもたれさせ、屋上へと繋がる階段に透明の空間を張り巡らせた。それとほぼ同時に屋上に設置されていたタイマーも作動し、一気に屋上全体を緑色の四角い物体が覆った。


「これで最後っ!!」


 ルナーは両手をパンッ!と音を鳴らしながら合わせると、手を合わせたまま手首を回し、歪な動きをしながら何もない空間から何かを引き抜くかのように手を離した。すると、何もない空間から眩い光を放ちながら細い剣が姿を現した。


「やぁ~っ!!」


 剣を構え一気に透明の壁にその剣を突き立てるルナー。それが透明の壁に刺さるとまるで鍵のようにカチッと音を立てた。


「『聖剣封鍵(せいけんふうけん)』!!」


 同時に剣を鍵の様に時計回りに半分回す――音を立てるまで。


ガチャッ!


 音が鳴ると彼女は剣から手を放した。


シュルルルルルッ!!


 静かな音を立てながら階段のあった空間を緑色の壁へと染め上げる謎の聖剣。さらに聖剣から謎の白い光が漏れだし、それはラインの様にビーッ! とあちこちに伸びて行った。それは月の様な紋章を描き上げると一層眩い光を放った。発動した彼女でさえもその光に腕で顔を覆う始末。

 しばらくして光が収まり、辺りが元の明るさに戻る。

 刹那――ルナーは全身の緊張が解け、同時に力も抜けたかのように壁に手をつきながらズルズルとその場に体をすりつけながらペタンと座り込んだ。


「……んっ、はぁ、はぁ……、お、お姉、姉さま……はぁっ」


 手を床に付き、這い寄るように気を失っているフィーレに近づくルナー。そして、姉の肩に手が触れる。


「……んっ! ぁ、あっ…ルナー?だ、大丈夫!?」


 フィーレはルナーの魔力の残量を即座に感じ取り驚愕した。フィーレ以上の封印術を使ったルナーはすっかり魔力を失い、顔色も病人のように悪かった。元々肌白いルナー。青白い顔をしていると言われても無理ないのだが、今はそれ以上に顔色が悪い。これは断言出来た。


「こんなになるまで……ごめん! 私がもう少ししっかりしていればっ!」


「そんなことないのですよ……お姉さま。私が自らやったことです! お姉さまが責任を感じる事はないのです! それにお姉さまはこの夢鏡王国を治める女王の身……私なんか何の役にも立たないのですから、これくらいのことはやらせてください……っ!」


「でもあなた、声も掠れて……」


「少し張り切り過ぎただけなのです! それに、リミッター解除は行っていないですから心配はないのです! 少し休むのです……お休みなさい、フィーレお姉さ……ま……」


 そう言い残し、ルナーはフィーレの太ももを枕代わりにそのまま瞑目して眠りに就いてしまった。


「る……ルナー」


 フィーレは一瞬今目の前で起こっている状況が何十……いや、何百年か前のブラックの時と同じだということを思い出していた……。

というわけで、Ⅱが完結しました! パチパチ。

後はエピローグ、登場人物も一応載せておきます。重要人物も結構出てきましたしね。

そして、三人目の世界四大神である月の神のルナーも出てきました。少し特徴的な口調の銀髪少女。そんな彼女の容姿は占い師の格好です。

さて、占い師と言う言葉で何か思い出す事はありませんか? そう、実は彼女、

姿は見せていませんがⅠにも出てきてるんです。

そして、何とかフィーレとルナーがもう一度封印をかけてオドゥルヴィアを封印することに成功しました。精神と肉体を分離されたオドゥルヴィア。この方法実は似たような事をされる人物が後後出てくるんです。

とまぁ、次回はいよいよ大詰め、Ⅲです。

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