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十二属性戦士物語【Ⅱ】――新たな戦い――  作者: YossiDragon
第三章:防げ!魔豪鬼神襲来編
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第十五話「悪に手を染めし科学者」・1

すごく大事な話です。後、少々グロいです。

 十二属性戦士が目にしたもの……。それは、大量の白衣を着た科学者達の見るも無残な姿と化した死体もとい死骸だった。さらに、彼らの体から出た鮮血が周囲の真っ白な壁や床を真っ赤に汚していた。その光景はまさに地獄絵図。

 その光景を見て、慌てて輝光の目に手をかざし眉をひそめる雷人や、吐き気を催して咄嗟に口に手を当てるメンバーも少なからずいた。


「一体、何があったの?」


 楓が、目の前の光景に信じられないという表情で言った。


「恐らく、裏切りか何かだろう……」


 雷人が推測してあごに手を添える。


「でも、裏切りにしては規模が少し大きすぎない? 集団で行われたテロにも見えるわ」


 楓が口に手を当て、気分悪そうに言う。

 すると、その地獄絵図の中からズダダダダ! と、銃撃の音が聞こえてきた。どうやら、まだ生き残っている科学者がいるようだ。凄まじい光景を作り出しているこの場所は思ったよりも広く、下手をすると夢鏡城の大広間よりも広いかもしれないと十二属性戦士に思わせるほど、この場所は広々としていた。そして、その広々とした場所に、幾人もの血まみれになった屍。尋常ではなかった。斬撃を受け死んだ者や、銃弾を浴びて死んだ者など、死因は様々だった。中には、頭のない者や五体満足になっていない者もいた。

 十二属性戦士は、それらの群れの中から聞こえてくる銃撃の音を頼りに、浮遊して行った。

 見渡す限りの死者。既に生存している者は一人もいなさそうだった。


(むご)いな……」


「ああ」


 爪牙の言葉に、照火が浮かない表情でその屍を一つ一つ見渡していく。

 そして、銃撃の音がさらに大きくなってきたところで、一同は浮遊の速度を緩めた。


「あれはッ!?」


 照火が声を張り上げ、目の前の光景を目の当たりにする。彼の視線の先に映っていたのは、白衣を着た科学者らしき人物と、少し歳を食っている感じの白髪に、顎ヒゲの先が胸より少し下まで伸びている老人の姿だった。しかし、まだ少しばかり距離があるため、声までは分からない。もっと言えば顔もよく分からないため、その正体が誰なのかもいまいち分かっていなかった。そのため、十二属性戦士はさらにそこへ近づく他なかった。

 だが、近づいたところで流れ弾に当たって深手を負う、下手をしたら命を失うといった心配はない。

 なぜなら十二属性戦士は今、精神だけの状態。体が霊体のような状態の為、弾などは貫通するというよりも、何事もないように通り抜けるだけなのだ。

 そのため、彼らは恐れる必要もなく、二人に向かって近づいていく事が出来た。


「ふっふっふ……いい加減諦めたらどうだ?」


 白髪の老人が、同じような白衣姿の科学者の男に言う。そんな相手は、老人に向けてマシンガンらしき銃の銃口を向けて、強く睨みつけていた。


「くっ、そっちこそ、私達を裏切ってどうなるか分かっているのか?」


「ふんッ、裏切ったところで勝者は決まっている。現にこれだけの数でこの我を止めにかかったというのに、止められぬではないか」


「そ、それは……」


「愚かな者達だ、所詮はただの人間にすぎん……ということか」


 老人は豪腕な腕を組み、ふんと鼻を鳴らして下等な生き物を見るような眼差しを科学者の男に向ける。


「光と影計画は、あのお方達が闇に葬られたはずだ!」


「それが葬られていなかったのだよ! 業火の炎に焼かれ消滅するより以前に、我が密かにコピーしておいた設計図(プログラム)を分解し、その設計図(プログラム)の内容が何なのかを悟られないような状態にして、闇商人に売り(さば)いた。そうすれば、好奇心の高い同業者がこれを買い取り、未完成の設計図(プログラム)に書き足し、それを完成させるだろうと踏んでいたからな……。ふっふっ、やつらのことだ、未完成の物があれば衝動的に設計図(プログラム)を完成させることは見据えていた。現に我の立てた作戦は見事大成功を果たした。あのWWW(スリーダブル)こと『ウェナベカル=ワルムガント=ウィリヴェラス』は、我が大事に使わせてもらう! 貴様ら下等な人間は、せいぜい崇め奉っていればよい。我は人間のさらに上を――否、神の上を行くッ! そのためには、あの兵器が必要なのだ!!」


「オルカルト……いや、オドゥルヴィア博士! あんただけは許さない!! 仲間を裏切るあんたは人間失格だッ!!」


「ふんッ! 何とでも言うがいい。我は貴様ら下等な生き物など相手にはせんのだ。我はいずれ神に成り上がる男ぞ!! 貴様らの様な哀れな生き物の話し相手なぞ、しているような暇はないのだ!!」


 オドゥルヴィア博士!? あの如何にも強そうな強面の白髪の老人が、オドゥルヴィア博士なのかと、十二属性戦士全員が思った。

 オドゥルヴィア博士は目尻に皺を作り、老眼なのか、はたまたファッションなのかは不明だが、片眼鏡をかけていた。耳にはピアス、そして白衣と同じく真っ白な白髪。それに相対するかの様に、少しばかり色黒かった。豪腕な腕を見ると、相当な力持ちであるかのような感じもする。しかも、歳の割には背筋もスッとしていて、高身長に見えた。そのせいでもあるのだろうが、オドゥルヴィア博士は尋常ではない威圧感を体の内から放出していた。


「くっくっく……貴様の様な生き物の相手をしている暇は我にはない、ここで葬ってくれるッ!!」


 そう言うと、オドゥルヴィア博士は科学者の男に襲い掛かろうとその場から前方へと動き出した。すると、その威圧感に圧されたのか、科学者の男は思わずマシンガンの弾を連射していた。


ダダダダダッ!!!


 大きな銃撃音が屍の転がる大広間に響き渡る。

 足を止めるオドゥルヴィア博士。しかしそれはあくまでも銃撃を受けたからではない。ただ何となく止まっただけなのだ。現にオドゥルヴィア博士の体からは全く出血しておらず、逆にマシンガンを持っている男の方がダメージを受けていた。先程撃った弾が、何故か全て男の全身ありとあらゆる場所へ被弾していたのだ。


「ばッ……バカな……! ……ごはッ!」


 男は口に手を運ぼうとするが、手で口を押さえきる前に吐血した。ビシャッと、既に幾人もの屍による血で汚れてしまっている真っ白な純白の床が、真紅の血で染まる。そして何度か吐血を繰り返した後、男はその場にバタリと倒れた。

 マシンガンがシュルシュルと床を回転しながら滑走し、オドゥルヴィア博士の足元へと移動、果てにはコツンとつま先に軽く触れた。


「ふんッ! 貴様の吐血の飛沫が、我の白衣にかかったではないか! この(たわ)けがッ!!」


 汚らわしいと言わんばかりに下賤な物を見るような眼差しを向け、オドゥルヴィア博士は真っ赤な紅蓮の瞳を燃やし、既に息絶えて床にうつ伏せに倒れている男の背中に向けて銃を構えると、思い切り引き金を引き、これでもかと銃を連射した。

 ダダダッ!と銃弾が何発も撃たれ、既に死んでいる男の体をさらに赤く染める。

 一分くらい経っただろうか。そのくらいしてから銃撃が止む。

 十二属性戦士は一同唖然としていた。無理もない、あまりにもこの男が非情だったからだ。いくらなんでも既に死んでいる人間に対して銃は向けない。それどころか、オドゥルヴィア博士は銃を向けるだけでは飽き足らず、背中が蜂の巣状態になるほど銃弾を撃ち込んでいるのだ。

 信じられなかった。この老人を許せないと十二属性戦士は思った。


「くっくっく……ふっはっはっはっはっはっは!!! 愚かな人間だ!! この我に人間が勝てるものかッ!! 我は不老と不死の体を得ているのだッ!! 今の我は、神にも匹敵する力の持ち主なのだ!! グハハハハハハハハハ!!!」


 図太い声をさらに張り上げ笑い出すオドゥルヴィア博士。まさに魔神……いや、鬼神とでも言うべきか……。今の彼はそんな人間だった。いや、既に人間をやめてしまっているのかもしれない。そんな気さえした。

 オドゥルヴィア博士は、さらにそのマシンガンを乱射して大広間中を撃ちまくった。その弾は既に死んでいる屍の何人かや、天井、壁、さらには側にあったドラム缶にも当たった。しかも運の悪いことに、そのドラム缶には火薬か油でも入っていたのか、引火して大爆発を起こした。


ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!


 凄まじい威力と轟音だった。地面が揺さぶられ、精神状態である十二属性戦士の体も思わず震え上がるほどのものだった。周囲の屍はまるで焼却炉に入れられて火葬されているかの様に燃え出していた。どうやら先程の大爆発で火の粉が周囲に飛び散り、それが白衣に付着、火種として威力を出して燃え始めたらしい。実際にはこの過去の時代にはいないため臭いはしないが、実際この場にいたのならば、それはもうたまらなくきつい異臭がするだろう。何せ、人間の死体が何人も燃えているのだから……。

 しかし、そんな中でもオドゥルヴィア博士は笑っていた。紅蓮の双眸はその色を増し、激しく揺らいでいる。完全に様子が一変していた。何かに取り憑かれている様に何かを求め、そのために多くの犠牲を生む。余程ラスプロジェクトによって生み出されたWWW(スリーダブル)を欲しているのだろう。そう、十二属性戦士は感じていた。

 時が過ぎれば過ぎるほど、火の勢いは収まることを知らず、さらに火力を増していた。何がこんなにも火力を増幅させているのか。一見火の扱いには物凄く長けてそうな照火も、訝しげに首を傾げるのみだ。料理をしている照火でも分からない程の火力の増幅。

 と、その時、ここ――大広間へと入るための入口から、一人の少年が駆けてきた。


「こ、これはッ!? は、博士!! 一体これはどういうことだ!! それに、その姿……何故そんな出で立ちに!?」


「フッフッフ……ようやく来たか。まぁ、この格好には様々な理由があってな。それよりも、待ちくたびれたぞ、神よ……」


「なッ、僕を神だと知っている!?」


 オドゥルヴィア博士に既に正体を見破られていた少年は、驚いたように肩をビクつかせ、片足を後退させる。


「当然の事……。貴様は大神の子、世界四大神が一人、闇の神のブラックであろう?」


「くっ、名前まで知られているとは……。そなた、只者ではないな?」


「フッ……神にそこまで感心されるのも有難いものだな。さっそくだが、貴様のその神の力……我が貰い受けるッ!!」


「な、何ッ!?」


 闇の神ブラックは心底驚愕した。戸惑いから思わずニ、三歩後ずさる。

 ブラックと呼ばれる少年は、少し濃い黒みがかった藍色の髪の毛に、黄金色と深青という二つの双眸を持つオッドアイの持ち主だった。さらにブラックはオドゥルヴィア博士と同様白衣を身に着け、スラッとした細身の体系をしていた。前髪が少し長く、そのオッドアイの神々しく輝く双眸を少しだけ隠す。見た目の年齢は十二属性戦士達より少しばかり年上といった所だろうか。雷人とほぼ変わらない年齢に見える。


「貴様ら神が、我がクロノス社にお忍びで入って来ていたのは知っているのだ!!」


「くっ、僕たちの計画がバレていたのか……」


「フッフッフ……すべてはこの時がため。本来ならば創造の神と破壊の神の肉体を得るはずだったが、貴様の体で勘弁してやろう!」


 そう言うとオドゥルヴィア博士は、一気にブラックの元へと突っ込んできた。

 そして、彼の近くへ来ると、瞬時に背後を獲った。


「しまったッ!!」


「フッフッフ……この我に勝とうなど百年早いのだッ!! 神と言っても所詮はただの小童……。数多の戦いを経験している我に、勝つことなど出来はせんッ!!」


「ふっ! ただの科学者が、何故戦いの経験を持っている!?」


 手を伸ばされ、捕らわれかけたところで、ブラックは瞬時に身を捻り、後ろを取られないように常背中を庇う様にしながら移動し、疑問を投げかけた。

 その問いに、博士は当然と言わんばかりに鼻を鳴らし、開口する。


「痴れた事……第二次神人戦争の現場を、この眼で見てきたからだッ!! あの戦いを見れば、貴様の戦い方はまだまだ小童同然なのだ!! 神も、人間と大差変わらぬ! しかし、それは神の意義に反することだ!! だからこそ、この我が神となり、今の神々を指導して率いて行くのだッ!! 分かったか?」


「そなたなどに、僕達を仕切ることなど出来はしないッ!!」


「果たしてそう言い切れるかな?」


 何か曖昧な返事をして誤魔化しているのではないかと、不審そうな笑みを浮かべるオドゥルヴィア博士。その不気味な笑みに、ブラックも萎縮し後ずさる。


「おっとそうだった……。このようなことをしている暇はなかったな」


 燃え盛る周囲の炎を見て突然何かを思い出したのか、オドゥルヴィア博士が話を元に戻す。


「先程も言った様に、貴様のその腕……貰い受けようかッ!!」


 紅蓮の瞳をゆっくり開け完全に開ききると、白い歯を不気味に光らせる。そして博士はさらに一際大きく目を見開いた。すると、ブラックの体が突然硬直して動かなくなった。


「なっ、何だこれはッ!?」


 腕を動かそうと力んでみるが、やはり腕はまるで石の様に動こうとしない。金縛りに遭っているかの様な感覚だ。


「一体僕に何をしたッ!?」


「単純に金縛りを掛けられたとでも思っていてくれたまえ。なぁに、すぐに終わる。大人しくしてくれていたら……な?」


 語尾を強調しやや意味深めいた言い方をすると、真っ白なゴム手袋を両手に装着し、少し細長い長剣を取り出すオドゥルヴィア博士。その刀身を自分の顔に近づけ、刀身を意味有り気に見つめる。そして、急に視線をそらしブラックを見つめる。それから一歩一歩ブラックへと近づいていき、ゆっくりと剣を持たない手を、目の前のブラックに振りかざし一言。


「我に跪けッ!!」


 そう口にすると、ブラックの体は硬直された状態のままゆっくりと跪かされた。


「フッフッフ……どうだ、人間の前で偉大なる神が跪かされる気分は?」


「この体が自由になった暁には、必ずそなたを神の習いに従って罰するッ!!」


「ほう? 神罰とやらか? 無駄無駄……そんなもの、我には通用せんッ!!」


 博士は首をゆっくり左右に振ると、眉を少し吊り上げブラックを見下した様な眼差しで見つめた。すると、今度はブラックの腕が両側に真っ直ぐピンと伸ばされた。それを確認すると、オドゥルヴィア博士は剣を天高く振り上げる。


「そ、そなた……まさか! や、やめ――」


 自分の体に何が起きようとしているのか、察したのだろう。焦燥し、慌てて制止の声を叫ぶが。

 刹那――闇の神ブラックの右腕が、二の腕辺りから切り落とされた。


「ぐぅがあああああアァああああああああぁあああああァアぁあああああァああああッ!!!!」


 ブラックの声にならないような悲痛な叫び声が、大広間に木霊す。すっかり存在感を失っている十二属性戦士も、思わず声を上げそうになり、慌てて口に手を運ぶ。しかし、よくよく考えてみれば、彼らは現在精神状態になっているため、仮に声を上げたとしても過去の時代の人間に気付かれることはないだろう。


「ふっ、ハッハッハッハ!! なるほど、神も我々人間同様、血の色は赤なのか……。これは発見だな。まぁいい……それよりも、この腕さえ手に入ればもう貴様に用はないな……」


 オドゥルヴィア博士は、切り落とされたブラックの右腕を片手で掴むと、それを拾い上げ笑みを浮かべた。

 こうなってくるとただの変人にしか見えないが、一体オドゥルヴィア博士は神の腕を切り落として何に使うつもりなのだろうか。そう疑問符を浮かべる十二属性戦士。

 と、その時、オドゥルヴィア博士は思いもよらないとんでもない行動に出た。

 なんと、ブラックの腕にガブリと肉食怪獣の様にかぶりつき、チュウチュウとまるで吸血鬼の様に血を吸い始めたのだ。その行為には、その腕の持ち主であるブラックはもちろん、十二属性戦士一同も驚くしかなかった。

 怖い物やグロい物が少々どころかとても苦手な菫と時音は、既に目の前の光景から顔を背けている。


「……ッあぁ~! これだけ吸えば十分だな!!」


「一体……何をッ!」


「おおおおぉッ! 力が、力が漲ってくるゥ!! これが、これが神の力かッ!! ンフフハハハハハハッ!! これだけの力があれば、神になれるまでにそう時間はかからぬなッ!!」


 オドゥルヴィア博士は驚異的な力を放出し、未だ尚出血し続けている腕をぎゅっと押さえるブラックに、ただならぬ威圧感を思い切り浴びせていた。


「くうッ! お、おのれ……」


 歯痒い気分で唇を強く噛み締めるブラック。その様子を見たオドゥルヴィア博士は、紅蓮の瞳をさらに紅色に染めながら、口の端から垂れてくる血を手の甲で拭い取る。


「さて、そろそろ用のない邪魔者を消し飛ばしてくれようぞッ!」


 腕の激痛で力の出ない状態の無防備なブラックの額めがけ、博士はマシンガンの銃口を構えた。


「……ぁ!? そ、そなた……一体何をするつもりだ!?」


「フッフッフ……皆まで言わずとも理解出来るのではないか? 闇の神よ……。我も、これから貴様に行う事を全て話すつもりはない! なぁに畏怖することはない。すぐに楽になれる」


 不気味に光る銃口。体中から冷や汗を溢れ出させる闇の神。

 十二属性戦士も、あまりにもの緊迫した状況に息が詰まりそうだった。


「……まっ――」


「死ぬがいいッ!!」


ズダダダダダダダダダダダダンッ!!


 マシンガンから弾丸が連続で撃ち出される。それと同時に、真っ赤な鮮血が闇の神――ブラックの後頭部からブシャッと飛び出し、床に飛び散る。ブラックはそのまま後ろに倒れた。瞼を見開いたまま、深青色の瞳と黄金色の瞳が硬直した様に微動だにしない。瞳孔も完全に開ききっていた。

 その様子を、空中から見ていた葬羅が咄嗟にこう呟く。


「どうやら、死んでしまったみたいです」


 表情を変えることはないものの、葬羅のその喋り方は少し恐怖しているような感じだった。

 十二属性戦士が、オドゥルヴィア博士はとんでもない極悪非道の人間だと心に思っていた時のことである。

 当人はマシンガンを左手に、剣を右手に装備し、仰向けに倒れて首を右に傾け、口の端から血をタラ~ッと垂らして動かないブラックの頭上にあるドラム缶に銃口を向けると、これまた何発もの銃弾を撃ち込んだ。すると、数分前に起きた大爆発よりかは少し規模が小さいが爆発が起きて、天井から吊り下がっていた足場を衝撃波が破壊、細かくなった足場と共に横たわっているブラックめがけて降ってきた。

 地面に足場が落ちると共に、粉々になったドラム缶の破片が火の粉となって周囲に降り注ぐ。まさに火の雨のようだった。それが、ブラックへ近づこうとする者の行く手を阻む。しかし、今のこの状況……無論ブラックを助けに行く者など、誰一人としていなかった。厳密的に言えば、助けようとは思うものの、助けられないだけなのだが。

というわけで、期末前なのに更新してます! 残す所、この話ともう一本の話で終わりです。ⅡからⅢへ突入です。

時代としてはネタバレですが、三代目十二属性戦士辺りの時代です。そして、ついに登場、オドゥルヴィア=オルカルト=ベラス博士。そう、魔豪鬼神です!

口ぶりからも分かる通り、凄く凶悪で極悪非道で人間を人間として見ていない卑劣な男です。わかりにくい方はとにかく悪い人で今の所この物語の中で一番悪役だと思っていてくれればいいです。話を読んでいる内に最終的に魔豪鬼神に繋がると思います。まぁ、ホントはさらにその先に本当の悪が潜んでいるんですが、それはまだ秘密です。

そして、世界四大神の一人である闇の神がここで登場です!登場早々腕切断されるんですが、印象的にも覚えてもらえるでしょう。名前を聞いてこいつ誰だっけという際に、「ああ、腕切られたやつね」と覚えていてくれたらそれでいいです。

オッドアイなのもそこまで深い意味合いはありません。

今回は三ページに分けてます。長い上に重要度が高いためボリュームが増しました。わかりにくい部分もあると思いますが、分かると面白いと思います。

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