第六話「闇魔法結社の脅威(後編)」・1
いきなり効果音から始まります。
グサッ!!
「!?」
サフィスト自身も何が起きたのか分からない様子だった。それもそうだ。何せ、隙だらけのサフィストの背中側からその凶器は刺さっていたのだから……。それはとても大きな長刀だった。しかも、その刀は意思を持っているかのように脈動していて、微弱に金色の光を放っていた。
「この刀、一体どこから?」
細砂が辺りを見回すと、サフィストの後ろから一人の鎧に身を包んだ謎の人物が姿を現した。
「やはり、妖刀『金盞花』の力は凄いな。こいつから発せられる邪悪な気には一種の痺れ作用があってな。触れるどころか刺されたり斬られた者は体の全神経を麻痺させられ動けなくなる……」
何やらサフィストの体に刺さっている刀の事について解説し出す鎧の男。
「あなた、誰?」
「俺か? 俺の名前は『ラグナロク=ドルトムント』……。ある男に恨みを持つ者だ。戦いの最中に悪いが実はヤボ用でな……。闇魔法結社の七色不死身――いや、元々は七力……だったか? その能力をもらいにきた」
ラグナロクが自己紹介、及び突然意味不なことを言い出したため、細砂は少し固まっていた。
「どうした? 俺の魔力の大きさにビビったのか?」
細砂の唖然とした様子を見てラグナロクが言った。彼は、話しながら全く動いていないサフィストの背中に刺さった剣を抜き取った。すると、さっきから黙っていたサフィストが麻痺状態から解放されて吐血しながら言った。
「ぐはっ……まさか不意打ちをしてくるとは、なかなかセコいもんじゃのぅ。てっきり、鎧一族の末裔であるからには……正々堂々と戦うのかと思ったんじゃがなぁ……。さすがは、一度滅びかけてしもうた……哀れな一族な、だけはあるのぅ……」
途切れ途切れに言葉を必死に紡ぎながら言うサフィストのラグナロクの一族を侮辱する言葉に、彼は勢いよく鎧に包まれた腕をサフィストの土手っ腹に突っ込んだ。腕はそのまま腹を貫き背中に飛び出た。鎧が真っ赤に染まり、周囲に血だまりを作りだす。
「うぐぅあッ!! ……うっく、なるほどの……手加減はなしということじゃな……」
サフィストは腹から背中にかけて突き出した血まみれになっている手を見て諦めたように微笑み、力をなくして首をガクリと倒し、ふっと息を引き取った。
「そ、そんな……あんまりだよ」
細砂はその光景の一部始終を見て目を丸くして言葉を失っていた。
「どうやら相当ショックが大きかったようだな、砂属性戦士。だが、その悲しみもすぐになくなる。なぜなら、お前の命は俺によって今すぐ消え去るからだ。安心しろ、痛みを感じる間もない……」
ラグナロクからその言葉をかけられ、細砂は我に返った。
「くっ」
まるで相手を憎むかのような目つきで見る細砂の目に浮かんだ涙の滴を見て、ラグナロクは急に剣を鞘に納めた。
「興冷めだ……一気に殺る気を失った。他の闇魔法結社を殺しに行く……闇魔法結社は全員……皆殺しだッ!!」
その言葉を聞いて、細砂の頭にある人物が引っかかった。しかし、モヤがかかっていてそれが誰なのかを思い出せない。
「何、この頭に残るモヤモヤは……?」
何とか思い出そうとするが、それが思い出せない。細砂は頭をかいて髪の毛をムシャクシャにした。
「ダメ! どうしても思い出せないよ……」
細砂は仕方なく諦め、死んでいるサフィストの側に落ちていた砂に埋もれたパワーストーンを取りその部屋を後にした……。
――△▼△――
ここは、スピリット軍団の基地の九階……。その場所には気絶した輝光とそれをおぶって歩く雷人の姿があった。
「にしても、一体いつになったら最上階に着くんだ?」
落ちそうになる輝光をちゃんと支え、バランスを整えながら雷人が言った。しばらく進み、歯車がたくさんある少し広い場所に出た。
「ここは随分と天井が高いな……」
そんなことを一人で呟きながら上をボ~ッと眺めていると、上から一筋の光が見え一瞬にしてその光が地面へと墜落した。それはまるで大きな隕石が落ちてきたかのように地響きを立てもわもわと煙を舞い上げていた。
「誰かそこにいるのか?」
雷人が訊いた。すると、煙の中から一人の男の声が聞こえてきた。
「オマエが十二属性戦士の雷属性戦士か?」
その男の鈍く低い声だけで雷人の心を奮い立たせた。
「全く持ってオマエ達の様な子供が十二属性戦士など認めたくはないものだな……。だが、それでも神に選ばれし十二人だ。それも仕方ないか……。そうだ、申し遅れた。俺の名は
『ファルスター=ビリビルトス』。元小七カ国の『フェイルーメニア王国』の王にして、このスピリット軍団の第九部隊隊長を務めている者だ。ちなみに、闇魔法結社の七色不死身の『黄金の雷馬鬼』を持つ者でもある……。よろしくな、え~と……」
ファルスターと名乗る男が握手をしようと構えながら雷人の名前を考える。
「雷人だ! 十二属性戦士の雷属性戦士、鳴崎雷人だ!!」
黒縁メガネをキラリと光らせそうはっきりと言い切る雷人に、ニヤッと白い歯を見せてファルスターが答えた。
「そうか、よろしくな雷人! ……んでだ、さっそくでワリィが俺と勝負してくれねぇか?」
ファルスターの突然の誘いに少し雷人は戸惑った。
「驚くこたぁねぇ。ただの真剣勝負だ! だが、そのためには、その後ろに背負ってるお嬢ちゃんは下ろしてもらわねぇといけねぇな……。重荷を背負ってちゃぁ真剣勝負にはならねぇからな……。十秒間待ってやる! その間にちゃっちゃと下ろしやがれ!!」
そう言ってファルスターは十秒数え始めた。
「ま、待て! くっ……よいしょ!」
雷人は慌てて義妹の輝光を近くの壁に寄りかからせて武器を構え準備を整えた。
「――じゅうぅぅぅう! よ~し、どうやら準備は整ったようだな。じゃあ行くぜ! うぉおおおおぉぉぉぉぉおおおッ!!!」
ファルスターは握りこぶしを作り猛スピードで雷人の間合いに入ってきた。
「ふん! そっちから来てくれるとは好都合だ!!」
自ら攻撃領域に入ってきたファルスターに対して、雷人は白衣の懐から拳銃を取り出し、特性の弾を装填し銃を構えて引き金を引いた。
バーン!!
と銃声が鳴り響き、ファルスターは地面に叩きつけられた。
「……死んだか?」
雷人がそう言って銃口から出ている煙をかっこつけて、ふぅ~と吹いたその時、どこからか含み笑いが聞こえてきた。それはファルスターの方からだった。
「……んふっふっふっ、随分となめられたもんじゃねぇか! だがな、そんな生温ぃ弾じゃ、ひょろい下っ端は撃ち殺せても、この俺様は撃ち抜けねぇぜッ!!」
ファルスターは再び同じスピードで雷人に接近した。
「くっ、もう一発くらえッ!」
バンバン!!
と二発連続で撃たれた弾は、見事敵を撃ち抜いたかのように見えたが、それは違った。その弾はなんと、ファルスターの歯に綺麗に挟まっていたのだ。
「さっきも言わなかったか? てめぇの弾はな……生温ぃんだよッ!!」
そう言ってファルスターは歯に挟んだ弾を噛み砕いた。
「ば、馬鹿なッ!?」
雷人は驚いて唖然としている。なんせあの弾は普通の弾ではなく雷属性の超硬い金属で作られた弾で、そんじょそこらの硬さとは比べ物にならないくらい硬いので砕けるとは到底思ってもみなかったからだ。その硬さは、例えば0.5カラットのダイヤモンド並みの硬さと言ったところか……。とにかく普通の人間ではできないような神業を目の前の敵は見せたと言う事になるのだ。だが、その疑問もファルスターの説明によって証明された。
「さすがに驚いてやがるな……。いいだろう教えてやる! 俺の属性はお前と同じく雷。特に俺様の雷は凄まじい硬さを誇っていてな……。だからその特徴を活かして俺様の歯に特殊な雷属性の魔力を流し込んでいるのさ。だから、どんな硬い物でも俺の歯にかかれば、砕けない物は無いってことさ……。まぁ、オマエが俺様以上の魔力でとんでもない――ダイヤモンドよりも硬い物を作り出したとしたら可能性はあるかもしれねぇがな……。だが、所詮は無駄な努力だな。今のオマエは、パワーストーンを失った哀れな人間にすぎない……。俺達七色不死身能力を持つやつらに比べれば、力は相当の桁違いの差だもんなぁ~?」
ファルスターは偉そうに腰に手を当て威張りながら雷人を挑発している。
「くっ、くそ! ……ふっ、いいだろう! その硬い物を作ってやる!!」
雷人は、まんまと相手のその挑発に乗せられてしまった。
「ほう、おもしれぇ! 見せてみろッ!!」
ファルスターは指を曲げて攻撃しろと指で指示した。その動作にカチンと来た雷人はファルスターの要望通り銃を発射した。その銃から発射された弾は、とてつもない硬さで敵の体を貫いた――かのように見えた。しかし、実際は全く違い、その弾丸は敵のガタイのいい筋肉の体で跳ね返されていた。。
「くそ、これでもダメだってのか?」
雷人はムカついて何度も銃弾を発射した。だが何度も躱され、当たったとしても弾丸は一つも貫通しない。
「一体どうすればあいつの体を貫くことのできる弾丸が出来るんだ?」
銃を何度も撃ちながら考えてみたが、なかなか良さそうなアイデアが思いつかない雷人。
「こうなったら……出来ればこの弾だけは使いたくなかったんだがな。やるしかない……か」
意を決して懐から少し大きめの銀の弾を取り出した雷人はそれを見つめながら内心で思った。
――これだったら、あの男の体も貫くことが出来るはず…!
心の中で自分に言い聞かせ、そしてついに雷人は行動に出た。
拳銃に銀の弾を装填し準備を整える。が、それを見たファルスターはむしろやる気十分な顔をして猛ダッシュでこちらに迫りながら叫んだ。
「急に何かをしているようだが、何をしても無駄だ! 俺様の体を貫くことの出来る物などこの世には存在しない!!」
そう断言する敵にもお構いなしに雷人は銃口をファルスターの心臓に向け、一気に引き金を引いた。それと同時に、六発の銀の弾が発射され、幾つもの大きな銃声が広い広間中に木霊した。六発の弾は一体どうなったのか……。一か八かの賭けに期待していた雷人は、恐る恐る顔を上げてみた。しかし、その場にファルスターの姿はない。よく見ると、地面に血まみれで倒れているファルスターの姿があった。彼は自分でも信じられないと言った表情で、何度も首を振りながら否定の言葉をあげている。
「う、ウソだ……! 俺様の体はどんな硬い物も通さないんだッ!! こんなの俺は認めないぞ!」
そう言ってファルスターは胸にある六つの銃弾の跡を大きな掌で隠すと、よろめきながらその体を起こし、どこかに姿を消した。
その時、上空から一つのキラリと光る玉が落ちてきた。
「こ、これは……パワーストーンだ!!」
雷人はパワーストーンを喜んで手に取ると、自分の武器にはめこんだ。
「おお、こいつはすごい! 本当に力が漲ってくるような感じがする……」
パワーストーンのおかげか急に元気になり、輝光を軽々と持ち上げ背中におぶると、張り切って呑気に鼻歌を歌いながら、部屋の奥へと進んで行った。
――△▼△――
一方、暗闇の十一階の通路を歩いていたのは時音だった。彼女は周りから聞こえてくる騒音を物ともせず、全くの無視で先に進んでいた。しかし、そんな彼女にももう間もなく戦いが始まろうとしていた。すると、急に彼女はその足を止め、ある一点を見つめた。
――あれは何かしら? 微かにだけど時間の乱れと空間の歪みを感じる……。
そう心の中で呟きながら時音の見ている場所をよく目を凝らしてみると、確かに微妙に景色が円状に霞んで見えた。
――何かあるのかな…。
少し怖い反面ワクワクしていた時音は、一歩一歩足元を確認しながらその歪みに近づいて行った。
歪みとの距離が約10cmくらいになったところで時音は再び足を止めた。そして、時音は袖を捲くり、震える手をもう片方の手で支えながら歪みに手をかざした。ゴクンと息を呑み、ついにその手が歪みに触れた。
と、それと同時に強い静電気が時音の手から全身に伝わり、慌ててその手を引っ込めた。
「痛っ! ……何、今の?」
時音は手を優しくなでながらその歪みを睨み付けた。すると、音の篭った声が聞こえてきた。
「やれやれ、随分と騒がしいですね……。他の仲間からの連絡が次々に途絶え、不安になっているところでしたが、もしやあなた方の仕業……ですか?」
その男は時音が不振に思っていた時間の乱れの歪みから姿を現し冷静な声で尋ねた。
片方の手で首から提げている懐中時計を見て喋っているその男の顔をよく見ると、左目にレンズをつけていた。しかも、そこから垂れているヒラヒラした先の方には、十一とローマ数字で黒い文字が刻まれていた。
「あなたがスピリット軍の人?」
時音がその男に訊いた。
「ええそうですよ。私の名前は『メロトス=タルンペラー』……。第十一部隊隊長及び、闇魔法結社の七色不死身能力の『蒼白の時梟鬼』を持ち、元小七カ国の『タルマルーク王国』の王だった者です。以後、お見知りおきを……」
丁寧な挨拶をし、メロトスと名乗る男は言った。メロトスは腰に納めていた長剣を鞘から引き抜き時音の顔に向けた。その切っ先との距離は僅か数cmしかない。
「ど、どういうつもり? いきなりそんなもの突き付けてくるなんて……」
突然のことに文句を言う時音。すると、メロトスは急に表情を変えて話した。
「私だって本当はこんな無粋なマネはしたくないんです……! しかし、私もスピリット軍の一員。ちゃんと務めを果たさなければボスに叱られるのは私達なのです。だから、何者なのか正体も掴めないあなた方は敵とみなします。さぁ、武器を取るのです……そして、正々堂々私と勝負なさい! さあ早くッ!! 私はきっちり時間を守らない人間は大っ嫌いです!!!」
メロトスはそう言って素早い剣突きを繰り出してきた。
「くっ!」
時音はその剣突きを上手く躱していった。しかし、それでもメロトスは諦めず攻撃を続けた。最後の一突きを躱した時音は一旦相手との距離を取ると技を出した。
「『時速の倍化』!!」
時の流れが時音の周りだけ早くなり、目にも留まらない凄まじい速さで技が炸裂する。
「うぐっ!!」
メロトスはくらった攻撃を最小限に抑え、攻撃を受けながらもその領域から上手く抜け出した。さらに時音の技の効力も切れ、時音の動きは元の速さに戻ってしまった。
――ちっ、相手の属性は私と同じ時……。だとしたら、特殊攻撃はあまり意味がない。一体どうすればいいの?
時音は頭の中で様々な作戦を考えるものの、相手の攻撃を躱すのに精一杯でなかなかいいアイデアが思いつかない。
「どうしたんです? 躱すばかりでは私に攻撃を当てることは出来ませんよ?」
メロトスは連続突きを繰り返しながらどんどん時音に向かって嫌味を言い続ける。
「これでもくらいなさい!!」
時音はやけくそになり、適当に技を放った。
その時、時属性の魔力を纏った波動弾がメロトスの左目に直撃した。
「あっ!?」
時音は少しやりすぎたかという様に口に手を当てた。
「くうっ……な、何てことをするんです!? あんまりですよ……あなただけは絶対に許しませんッ!!」
メロトスは強く拳を握り、必殺技を繰り出した。
「秘技!『時間の複製』!!」
手で構えを作り、言葉を叫ぶと同時にメロトスの体の周りに時間の波が現れた。
「これで私はもう無敵です! 誰にも私を殺すことは不可能!!」
彼は勝ち誇ったように言い放った。しかし、時音は諦めず今度はメロトスの右腕を切り落とした。
「うぐああああああ!!! ……とでも言うと思いましたか? 言ったでしょう、私の必殺技時間の複製は私の周りにだけ特有の時間の波を発生させ、常に時間を逆流させているんです。つまり、あなたが私に攻撃したとしても、その攻撃された場所は逆流によって元に戻るんです。だから何度攻撃をしたところで無駄……ということです。お分かり頂けましたか?」
そう言って武器を一旦鞘に納めたメロトスは、もう一度その剣を抜いた。その剣は、先程とは異なり、とても綺麗で純粋な時属性の波動を発生させていた。
「スゴイ……! ただの魔力じゃない。尋常じゃない程の力があの魔力から私の肌を通して伝わってくるっ!!」
時音は相手の力を恐れて一歩後ずさりした。
というわけで、少し間が空いての更新です。宿題に追われる日々で更新が遅れてしまい読者のみなさんには申し訳ないです。
えと、今回は闇魔法結社のファルスターVS雷人とメロトスVS時音の話がメインです。ファルスターも結構意気込んで雷人と戦ってましたが、結局雷人に負けてしまいましたね。また、メロトスは初め空間を歪めて姿を隠していましたが、少し好奇心旺盛な面も持つ時音によって見つけられてしまいました。
んで、時間を戻して怪我治すというかなかったことにするって時属性最強ですね。てなわけで後半をお楽しみに。




