【ハジマリの刻】
学園ものにしようと思ったけれどやっぱり戦闘シーンがあるのは、
この世界が混沌としているからなのだろう。
そして異種族、国家間の利害やそんなものにもちょっと翻弄されながら、たまにはときめいてみたりしたいじゃん?
剣だって魔法だってある、
何故か銃器もあるし、文明レベルが謎なものも出てくる、
それが『テルス』と言う世界・・・
いずれこの世界の全てを見せてやろうか!
というわけで、
Angellied Chronicleを補完すべく書いていきたいと思います。
新しい季節を迎え、学園の生徒達が早朝から講堂に集められていた。
延々と聞く話は退屈そのもので、なんら得るものがないのではないかとさえ思える。
金髪の少女二人はひそひそと話をしていた。
「学園長の挨拶って長いのよねぇ、毎年言ってる事同じじゃん」
メリルが呟く、呟くと言っても明らかに普通の声で周囲に聞こえている、そんなメリルをエリルが止めようとする。
しかし当然のように教師に見つかり、二人とも講堂の外に追い出された。
「まだこっちの方がマシね」
「どうして私まで追い出されるんですか...」
「姉妹だからでしょ」
「納得できません...」
二人はそのまま自分たちのクラスへと帰っていった。
扉を開けて中にはいると、そこに黒髪の女性がいた。
頬杖をついてボーッと窓の外を見ていた。
「レリア?何してるの?」
メリルが声をかけるとレリアはこっちを向いて挨拶するように微笑んだ。
『創造の刻』
外を見ていた...
ただ何も考えず...
みんなが戻ってくるのを待っていた。
窓の外は桜の花びらが舞い散っていた...
「レリア?何してるの?」
声をかけられた事に驚く、だがそちらを見て不意に微笑みがこぼれた。
そこにいた二人の少女、一人は金色の長く綺麗な髪を靡かせ、隣の少女は可愛らしくツインテールにしている。
メリルとエリル、双子なのに、双子だからなのか性格は少し違っている、妹のエリルの方が冷静であり得意なのは魔法である、姉はレリアと同じく剣を得意としている。
そして学園の白い制服がよくに合ている。
「ちょっと、気分が悪くて遅れちゃったから...」
そう答えるとまた黙り込む、特に話す事もないのだが、彼女達はそれが気に入らなかったのか、私の前の席に座ってこちらをむいて頬杖をついた。
「ねえ、何が得意なの?」
「はい?」
「得意な武器」
「剣...ですかね」
「じゃ、ちょっと手合わせしてよ」
「決闘は許可がないとできませんが」
「いいの!私がしたいんだから」
メリルが強引に立たせようとする。
「ちょっと!」
「言い出したら聞かないのよ、ちょっと相手してあげて」
抵抗するが後ろからエリルが肩に手を置いて促す。
仕方なく席を立つ、いい暇つぶしができて嬉しいのか、メリルは手を引いて先を歩く、、
決闘場に着いた。円形の舞台にお粗末な柵があるだけだった。
「それじゃ、はじめよっか、先に降参した方が負けね」
メリルが手を水平に伸ばすとエリルが剣を私た。
「分かった...」
レリアが左手を斜め下に伸ばすと剣が現れてそれを握った。
そして二人は決闘場の真ん中に対峙する。
「いつでもいいわよ」
互いに剣を構える、二人の間に冷たい風が流れた。
レリアは姿勢を低めに懐へと飛び込んで行った。
メリルが上方へ飛んで交わすとレリアの背後に降りて剣を振り下ろした。
レリアがそれを交わし、身体を翻して反撃に剣を振る。
「危ないじゃない」
レリアの剣を受け流す。
「お二人が怪我をする確率は極めて少ないと思いますが」
エリルが決闘場の外で呟いた。再び剣を交える二人を見ながら柵に腰掛けた。
ほぼ互角、多少レリアの方が上か、剣を交えている二人の勝負はまだつかない、メリルが少しだけ息を切らしているように見えた。
エリルはその理由をそれとなく気づいていた。
「お前ら何やってるんだ!」
どこかのクラスの教師が駆け寄ってきて止めに入ろうとする、禁止行為を放っておくわけにいかないのだから当然だ。
「無許可の決闘は禁止だぞ!」
二人の動きはピタリと止まった。
剣を収めて二人は教師の元に歩み寄った。そしてレリアが頭を下げる。
「すみませんでした...」
「ちょっと遊んでただけじゃない」
メリルがぼやいた。
「何か言ったか」
「決闘はしていません、個人的に実力を見たかっただけです」
「言い訳はいらん早く戻れ」
三人はしぶしぶクラスに戻る、メリルは独り言のように文句を言っていた。
そして急にレリアの隣に駆け寄り
寄り添うようにして、まるで恋人がするように腕を組んでくる。
「もっとお話しようよ」
「それはいいけど...」
そんな感じで席につくまでずっと離れようとしなかった。
そのうちクラスが賑やかになってくる、学園長の長い話が終わり、生徒達が戻ってきた。
最後に教師が入って来た。
「みんな揃ったかな?揃ったところで自己紹介するわね。知ってると思うけど、リズ・エルよ、よろしくね。それじゃ問題児がいるようだけど、生徒会委員長を出すように言われてるから、誰かやりたい人いる?」
「そんな事いきなり言われてもねぇ」
確かにその通りでまだクラスも変わったばかりでお互いをまだ知らないし、自分がやると言うような自信もないのだ。
だが世界は混沌の中にある、大国は戦争に明け暮れ、小国を飲み込む、こうしてる間にも国が一つ滅びているかもしれないのだ。
有能な指導者となるには相応の能力が必要である、その為にこの学園都市があると言ってもいいだろう。
「ん〜、問題を起こした罰として...」
メリルがドキッとして固まる、しかし次に出た言葉は意外だった。
「レリアさんにお願いしようかしら」
ニコニコと笑みを浮かべるリズ、レリアが立ち上がる。
「罰でなれるような物ではありません。誰からも好かれていて人徳があり、分け隔てなく誰にでも優しくできる、そして他人の話を聞ける者がなるべきです。例えるならフィリア・ヴェイルのように...その点私は劣りますので...」
名前を出されたフィリアは何が何だか分からずあわあわしている。
「ふーん、合格っ」
「はい?」
「フィリアさんに異存がなければお願いしていいかしら?学園のアイドルが生徒会委員長なんて素敵よね」
「は、はい!」
フィリアはどうしていいか分からず返事を返していた。
「決まりね、それじゃあレリアさんに副委員長してもらいましょうか」
「そんな決め方で良いんですか?」
「貴女には人を見る目があるって言うか、正しい物の見方ができるようだからね。」
「...そういう事なら...」
周りは静かに事のなり行きを見守っていた。
「他の子達も異存はないかしら?あなた達、言いたい事があれば言うべきよ?」
皆黙ったままだった。
その中でエリルが立つ...
「問題ありません。」
そう一言だけ言って座った。
「しょうがないわね、じゃあ決まりっ、そんなわけだからよろしくね。」
「え?ええ??」
メリルはホッとしていた。
リズが話を終えてクラスを出ると周囲は再びざわめく、今までの静寂が嘘のようだ。
「ちょっと」
先ほどまでフィリアmと何か話していたアイラが目の前に立つ。
「ん?」
「どういうつもり?」
「何のこと?」
「別にフィリアじゃなくたって良かったでしょ?」
「嫌なら嫌って言うでしょ」
「フィリアの性格じゃ言えないよ!」
「それは彼女が悪いの」
スッと席を立ち、レリアはフィリアの元を訪れた。フィリアの周囲にいた数名の生徒達が道をあけた。
レリアはそこを通ってフィリアの前に立つ。
「よろしくね。」
最初に出た言葉はそれだった。謝罪するべきなのかもしれない、でもそれは今となっては意味を持たない、ならばこれからのことをどうするか考えた方が有益だと思った。そして出た言葉なのかもしれない、他の人達は謝罪するべきだと思っているのだろう。
「レリアさぁん..うぅ...」
目を潤ませ、上目遣いに見つめてくるフィリア。悲しいとかより戸惑いだろう。
「嫌なら断れば良いのよ」
冷たく叩きつけられた言葉にアイラが詰め寄ってくるが、メリルとエリルがそれを止めた。
「んーん、やります」
意を決したのか、相変わらず目を潤ませて言う、それを聞いて不意に笑みがこぼれそうになる。