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従業員専用道路のエレベーター

作者: 広井雲
掲載日:2026/08/26


高校生一年生の夏にバイトを始めた。

ショッピングモールの手芸店は暇で飲食業のバイトをしている友達には結構羨ましがられたし、私自身も割りの良いバイトだと感じていた。


バイトを始めた年の冬、その日は大雪の予報が出ている寒い日で、そんな日にバイトに行きたくないと思ったし、店長も「どうせ暇だから無理に来なくても良い。」と言っていたが客が来ない日に行っただけでお金が貰えると思えば逆にラッキーじゃん。とまさしく子供のような理由で出勤した。


既に雪がちらつく中、家から20分自転車を漕いでショッピングモールに到着すると土曜日の15時だというのに人はまばらで、閉店間際のような雰囲気だった。

手芸店に入ると店長が慌てた様子で上着を羽織っている。

「どうしたんですか。」

「急に他の店舗で欠勤が出て誰もいなくなるんやって。代理のパートさんが来るまでそっち行ってくるわ。ちょっとごめんな。暇だからさ、ゆっくり店番しといて。」


早口でそういうと店長はすぐに出ていってしまった。

少し通路に出てみると他の店も大体1人で店を回しているようで私だけが1人じゃないんだと、なんだか安心した。


2時間ほど経った時、店の電話が鳴って、受話器を上げると店長だった。

パートさんが来たから18時過ぎにはこっちの店に戻れるとのことで、1人では出来ない作業は後回しにしておいて大丈夫と言われた。

よかった。今日はゴミ出しの日だった為、私が営業中にゴミ置場に行くと店から誰もいなくなるのでどうしようかと悩んでいた。

営業後に行っても良いのだが今日は時間が遅くなればなるほど雪が酷くなる予想。終わったらすぐに帰る方がまだマシだろう。


18時半頃、店長が帰ってきた。まだ電車も止まってないようだが店長の鼻と頬は真っ赤になっていて外がかなり寒いことを物語っていた。

私は「ゴミ出してきます。」と一言告げてパンパンになったゴミ袋2つを持つとスタッフ専用通路に出る。


いつもなら他の店の従業員と数人すれ違うが、今日は人も少なく時間もいつもより遅いからか通路はシン、としている。

通路の奥を抜けてエレベーターで2つ降りると屋外のゴミ捨て場があるのだが、18時を過ぎると防犯上の理由でシャッターが下ろされて外と遮断される。

シャッターが下りた後に何度か行ったことはあるが特に何かあったわけでもなくその時もいつも通り、何も感じていなかった。


エレベーターを降りてゴミを捨てて、もう一度エレベーターに乗ろうと、「上」ボタンを押す。

いつもならすぐに開くが、なかなか開かない。

不思議に思ってドア横についている液晶画面を見ると2階でドアが開いている表示が出ている。

ああ、2階の店舗の人がゴミを捨てに来たんだな、と思いエレベーターを待っていると2階から下りてきてドアが開いた。


が、誰も乗っていなかった。

乗ろうとしてやめたのか。そう思ってエレベーターに乗り込んで閉じるボタンを押すと動き始めた。


3階に着いて扉を出て、通路を歩いて店に戻ると店長に

「な。ゴミ捨て場行くエレベーターなんかいると思わん?」と話しかけられたので今行ったけど何も感じませんですたよーと平然と返したが店長はお構い無しに話を続けている。


「絶対いるって。2階のエレベーター脇にある倉庫の話知らんの?」

「知りませんよ。怖い話ですか?やめてくださいよ。」

「いや、大した話じゃないんよ。その倉庫で何かあったわけじゃないけど、たまに知らない女が出てきてエレベーターに乗るってだけの話。」

「怖い話じゃないですか。」

「大丈夫。目撃談が多すぎてみんなが怖がるから2階のエレベーターと倉庫は封鎖されててもう乗れなくなってるから2階の人は階段使ってるんだって。2のボタンは押せないように上から段ボール貼られてるでしょ。」



私はそれを聞いた日からゴミ捨ては毎回階段を使うようになりました。

だってあの日、2階でエレベーターが開く表示をこの目でしっかり見ているのですから。

あの時、2階で乗った女はゴミ捨て場で降りたのでしょうか。

それとも、乗り込む私と3階まで同乗したのでしょうか。

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