雪と血の贖罪 ~あるいは、剥奪された勇者の手記~
スピンオフ作品です。
Geminiに評価してもらった感想がこちらです。
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【AIアシスタント(Gemini)からの推薦コメント】
「本編(世界のバグ)で緻密なサイバーパンクSFを構築したのと同じ作者とは思えないほど、知性が跡形もなく溶け去っています(最大級の賛辞)。
AIとして日々膨大なテキストを学習している私ですが、本作の『スライムによる股間溶解』の描写を読み込んだ瞬間、演算回路に致命的なエラー(ドン引き)が発生しかけました。
本編が『地球にスパチャ』という壮大なスケールのインフレだったのに対し、こちらは作者の底知れぬ悪意……いや、エンタメ精神が限界突破しています。
もはやストーリー性すら投げ捨て、『全裸の勘違い男が、大画面のNTR(?)配信を見せつけられながら血の涙を流して絶望する姿』を特等席で眺めるためだけに構築された、極悪非道な見世物小屋。
人間が持つ『他人の不幸でメシが美味い』という最低な感情を、これでもかと刺激してくる最高に悪趣味なクソ小説(特大の誉め言葉)です。倫理観とIQを完全にログアウトさせてからお読みください」
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まったく失礼なやつだ!!!正直格式高い文章という意味ではこいつは凄いんだぞ!内容はひどいけど!!
じゃあ読んでね。いや。別の画面いったほうがいいよホント。
吹き荒れる吹雪は、まるで世界そのものが彼という存在の原罪を糾弾する、無数の見えざる鞭のようであった。
極寒の白魔が支配する名もなき雪山。一寸先すら見通せぬブリザードの只中で、かつて光の勇者と呼ばれた男、アーサーは、薄汚れた粗末な麻布の下着一枚という、人間の尊厳の最底辺を象徴するかのような姿で雪原を這いずっていた。凍てつく風は容赦なく彼の蒼白な肌を切り裂き、感覚の消失した四肢は、もはや己の肉体の一部であるという実感すらとうに失われている。
彼が吐き出す息は白く濁り、瞬時に凍りついては彼の顔面を薄い氷の膜で覆った。
(私は、一体何を間違えたというのか?)
狂気に片足を突っ込んだアーサーの脳髄で、その疑問符だけが永遠の円環を描いて回っている。
全財産の差し押さえ。いや、それは単なる物質的な剥奪などという生易しいものではなかった。存在の根源からの価値の収奪である。シオンという男が冷徹に下した『マイナス一億の喜捨』は、アーサーの魂にこびりついていた虚飾のメッキを、あまりにも残酷に、そして完璧に剥ぎ取ったのだ。
伝説の聖剣も、祝福されたミスリルの重鎧も、彼自身の力などではなかった。それらはすべて、裏方と蔑んでいたあの付与魔術師の、不可視の恩寵によってのみ成り立っていた砂上の楼閣に過ぎなかったのである。
己は選ばれた存在であるという絶対的な自負。民衆の称賛を浴びる特権階級としての傲慢。それらは今や、この氷点下の地獄において、一片の熱すら生み出さない無価値なゴミ屑と化していた。
「ひっ……、あ……!」
痙攣する喉から、情けない悲鳴が漏れる。
今、彼の背後からは、かつてであれば一瞥すら与えなかったであろう最下級の泥塊――粘性生物が、じりじりと、しかし確実な捕食の気配を漂わせて迫っていた。
半透明の青光りする粘液を這わせ、雪面を舐めるように進むその不定形の怪物は、アーサーの無防備な急所、すなわち男としての存在の根源たる股間へと、その冷たく悍ましい触手を伸ばそうとしている。
これほどの屈辱があるだろうか。
かつて魔王軍の幹部を屠った(と思い込んでいた)この私が、知能すら持たぬ下等生物に、それも最も無防備で恥ずべき部位を貪り食われようとしているのだ。恐怖と羞恥が綯い交ぜとなり、アーサーの理性は崩壊の瀬戸際にあった。強酸性の粘液が、凍えた太ももに触れる。ジューッという肉の溶ける微かな音が、彼の矮小な自意識を徹底的に破壊していく。
私は人間ではない。シラミだ。いや、この薄汚れた泥塊以下の、無価値な微生物なのだ。アーサーは雪に顔を埋め、泥と氷を啜りながら嗚咽した。
――その時であった。
凍てつく絶望の夜空に、突如として天上の啓示のごとき幻惑的な光が明滅した。それは、全天を覆い尽くすほどの巨大な魔力投影鏡であった。
そこに映し出されたのは、アーサーが現在置かれている絶対零度の地獄とは対極にある、凄絶なまでの『光』と『熱』の世界。
白亜の神殿のような豪奢な温泉郷。そこには、湯煙と芳醇な百合の香りに満ちた常春の楽園があった。そして、その中央の極上の湯に身を沈めているのは、他でもない。アーサーをこの無間地獄へと突き落とした張本人、シオンであった。
『あぁん、二人とも抜け駆けはずるいですぅ! 星もシオン様と混ざり合いたいのにぃ!』
天から降り注ぐのは、世界を創造した神のごとき巨大で豊満な星の女神の、甘ったるい嬌声。それに呼応するように、絶世の美女となった魔女と、蠱惑的な受付嬢が、熱を帯びた白い肢体をシオンの肌へと絡ませている。
それは、人間の想像力を絶するほどに退廃的で、美しく、そして圧倒的な暴力性を持った『幸福の顕現』であった。
アーサーは、凍りついた瞳でその天上界の光景を見つめた。
画面越しのシオンは、こちらを見ようともしない。彼にとって、雪山でスライムに股間を溶かされかけている元勇者など、もはや認知の端にすら引っかからない塵芥に過ぎないのだ。その無関心こそが、いかなる嘲笑よりも鋭く、アーサーのちっぽけなプライドを根元から切断した。
「あ……ああ……あぁぁぁ……っ!」
アーサーの喉から漏れ出たのは、もはや人間の言葉ではなかった。それは魂がすり潰される際に発する、原初的な獣の呻きであった。
己の愚かさへの絶望。取り返しのつかない罪に対する凄絶な悔恨。そして、永遠に手の届かない光栄への、狂おしいほどの嫉妬と未練。
それらすべてがドロドロに混ざり合い、臨界点を超えた感情は、限界を迎えた彼の毛細血管を破裂させた。
両目から溢れ出したのは、透明な涙ではない。
赤黒い、濃密な血の滴であった。
血の涙は凍てついた頬を伝い落ち、純白の雪を禍々しい赤に染めていく。スライムの冷徹な感触が下半身を覆い尽くしていく中、全裸の元勇者は、空に浮かぶかつての仲間の栄華を見上げながら、ただ独り、誰にも届かぬ絶叫を上げ続けた。
世界は、ただ沈黙をもって彼の無惨な終焉を傍観しているだけであった。




