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試練型ダンジョン

画面には、試練型ダンジョンの情報が並んでいた。


澪は、スクロールする指を止める。


試練型ダンジョン。

対戦型とは違い、他人と直接競う場所ではない。


挑戦者は最大五人まで。

自分たちの判断で、人数を決めて挑む。


ただし、人数が増えれば楽になるわけじゃない。


役割分担。

連携。

誰か一人のミスが、そのまま全員の足を引っ張る。


進める階層は、自分たちの限界をそのまま映す。


撤退は可能。

失敗しても死なない。


――でも。


どこまで行けたかは、誤魔化せない。


「……めんどくさ」


思わず、そうつぶやいていた。


一人で挑めば、全部自分の責任。

パーティを組めば、誰かの責任も背負うことになる。


どっちに転んでも、楽な選択肢はない。


試練型ダンジョンは、そういう場所らしい。


澪は端末から目を離し、ベッドに横になる。


天井を見上げながら、昨日のことを思い出す。


神谷が声をかけてきた理由なんて、考えるまでもない。

深い意味があったとは思えない。


顔が良かった。

それだけだろう。


「……だからって、弱いままでいい理由にはならないけど」


小さく息を吐く。


負けた事実は変わらない。

言い訳の余地もなかった。


それを「仕方ない」で終わらせなかったのは、

他でもない、自分自身だった。



翌日。


学校へ向かう足取りは、正直重かった。


教室に入ると、神谷がすぐにこちらに気づく。


「おはよう」


相変わらず、軽い調子だ。


澪は席に座りながら、短く返す。


「……おはよう」


それ以上、会話を続ける気はなかった。


神谷は何か言いたそうにしていたが、

澪が視線を合わせないのを見て、無理には話しかけてこなかった。


休み時間。


今度は、別の声がかかる。


「ねえ、相澤さんだよね?」


澪は顔を上げ、相手を見る。


同じクラスの女子だ。

名前までは覚えていない。


「……なに」


「神谷くんと、仲いいの?」


「別に」


それだけ答えて、澪は端末に視線を戻す。


女子は一瞬言葉に詰まり、

隣の子と小声で何かを話したあと、その場を離れていった。


向けられた視線に、好意が含まれていないことだけは分かった。


――まあ、いい。


どう思われようと、今さらだ。



放課後。


澪は寄り道をせず、まっすぐ試練型ダンジョンの施設へ向かった。


対戦型ダンジョンとは違い、

ここは妙に静かだった。


観客もいない。

喧騒もない。


ただ、淡く光る入口があるだけだ。


立ち止まり、少しだけ深呼吸をする。


逃げようと思えば、いつでも逃げられる。

無理だと感じたら、引き返すこともできる。


でも。


澪は、一歩前に出た。


「……行こう」


誰に言うでもなく、そうつぶやいて。


試練型ダンジョンの中へ、足を踏み入れた。

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