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夢の形

一階のボス部屋に辿り着いた。

その扉の前で、澪とひなたは立ち止まっていた。


「ひなたの夢って、ダンジョン研究者でいいの?」


そう問いかけると、ひなたは少し首を傾げた。


「うーん、ちょっと違うかも」


そして、楽しそうに続ける。


「ダンジョンに関わることを、いろいろやってみたいの!

 研究もしたいし、配信も、戦闘も!」


――生粋のダンジョンオタクだ。


だが。


「戦闘は、ひなたには向いてない」


澪は淡々と言った。


「時間が無駄」


ひなたは、わかりやすく肩を落とす。


「だから」


澪は言葉を続ける。


「私に任せて」


意味がわからない、という顔でひなたが聞き返す。


「……どういうこと?」


少し照れくさくなりながら、澪は答えた。


「私が、ひなたの代わりに戦う。それだけ」


そう言って扉に手をかけようとしたところで、呼び止められる。


「どうして? どうしてそんなこと言ってくれるの?」


澪は、考えるより先に答えていた。


「……ひなたが本気だったから。だから、なんとなく」


一歩、踏み込む。


「私と一緒に来て。

 ひなたは、私とダンジョン研究すればいい」


知り合って、まだ二週間ほど。

こんなことを言うのはおかしいのかもしれない。


でも、もう自分に嘘をつく必要はなかった。


ひなたがどう思っているのか、顔を見るのが怖くて俯く。


沈黙。


澪は、答えを待たずに言った。


「迷ってるなら、見ていて。私の姿」


そう言って、扉を開けた。



そこにいたのは、一階ボス――闘士オーク。


澪は駆け出し、真正面から向き合う。


今さら、相手にもならない。

それは事実だ。


だが今回は、ひなたに見せるための戦い。


「受けきった上で、ねじ伏せる」


オークの拳が飛んでくる。

避けずに、受け止めた。


一週間前なら考えられない力比べ。

だが今は、澪の方が明らかに強い。


腕を掴み、振り回し、叩きつける。


悲鳴が上がり、胸が高鳴る。


ああ――

私は、もうこいつを上回った。


「豚。お前は、もう私の相手にはならない」


ひなたが見ているのに、隠そうともしない。

醜い部分を見せることこそ、誠意だと思った。


これで嫌われるなら、それまでだ。


オークは立ち上がろうとするが、体が言うことを聞かない。


「終わり」


そう告げ、首を折った。


澪は振り返り、ひなたを見る。


「私は、誰よりも強くなりたい。

 人の上に立ちたい」


息を吐き、震えを抑えて言う。


「……そんなやつが仲間でもいいなら」


顔を上げられないまま、続けた。


「一緒に来てほしい」


時間が、異様に長く感じられた。


足音が近づく。



ひなた視点


澪ちゃんは、強い人だった。


一階ボスを、あまりにも容易く倒していた。


ダンジョン歴は、たった二週間。

それでこの強さは、異常だ。


再生能力は強力だが、攻撃力はない。

純粋な身体能力と判断で戦っている。


配信で見てきた一層五階到達者とも、まるで違う。


――知りたい。

――見たい。


でも、少し怖かった。


残虐で、歪んでいて。

それでも、澪ちゃんは俯いていた。


ああ、この人も人間なんだ。


だから決めた。


「わかった。一緒にダンジョンを攻略しよう!!」


一人には、しない。


二人は、同じ方向に歩き出した。


「でも澪ちゃん」


ひなたは、少しだけ真剣な声で言う。


「あんまり、人のことをあんなふうに罵っちゃダメだからね?」


「………………善処する」


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