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ひなたの夢

パーティを組むと、ワープできる階層は最も到達階層が低い者に引きずられる。

そのため、今回挑むのは一層一階だった。


「澪ちゃんは、今どこまで攻略したの?」


「一層五階」


「すごいね!!」


素直な賞賛だった。

だが、ひなたはそこでなぜか足を止める。


「あれ? 澪ちゃんって、能力なかったんじゃなかったっけ?」


そういえば――世間的には、そういう認識だった。

すっかり馴染んでしまった“力”を、今さら思い出す。


「最初はね。でもダンジョンのおかげで、再生能力者だってわかった」


「そっか。よかったね」


ひなたはあっさりとそう言った。

深く踏み込まず、でも否定もしない。その距離感が少し心地いい。


話していると、前方にゴブリンが現れる。


澪は一歩下がり、ひなたの背中を見た。


「……やってみて」


促され、ひなたは一瞬だけ息を飲み、ナイフを構える。


そして――


「鈍臭い……」


思わず本音が漏れた。


腰が引け、踏み込みが甘い。

棍棒を恐れて距離を詰められず、ナイフも振り切れない。

生き物を刺すこと自体に、強い抵抗があるようにも見えた。


見ているこちらが、居心地が悪くなるほどだった。


「イライラする」


そう呟き、澪は二人の間に割って入る。

拳を叩き込み、ゴブリンの息の根を止めた。


「うわ……なんか、ごめん」


「……別に」


言葉とは裏腹に、澪の胸には小さな違和感が残る。


やっぱり、一緒に来たのは失敗だったかもしれない。

今朝の判断を、ほんの少しだけ疑った。


「先に進もう」


短く告げ、二人は再び歩き出した。



「……なんで、ダンジョンに行きたいなんて言ったの?」


沈黙が続いた後、澪はそう尋ねた。


ひなたは、驚くほど明るく答える。


「なんか、憧れるから!」


あまりにも雑で、あまりにも率直な理由だった。


「モンスターや人と戦うことに?」


「ううん」


ひなたは首を振る。


「ダンジョンそのものが、不思議でさ」


「不思議?」


「うん。だって、二十五年前に急に世界中に現れて、

 なんで戦うと強くなれて、

 なんで中で死んでも生き返るのか……」


言葉は拙いが、視線は真剣だった。


「こんなに“わからないこと”だらけなのって、すごくない?」


――意外だった。


「……ひなたって、そんな賢そうなこと言うタイプだったっけ」


「賢いっていうか、疑問に思ってるだけだよ」


ひなたは照れたように笑う。


「将来、そういうのを調べる仕事に就きたいなって」


「ダンジョン研究者?」


「そんな感じ!!」


軽い口調だったが、そこには確かな“方向”があった。


澪は、自分に問いかける。


――私は、どうなんだろう。


答えは、すでに決まっている。


私はダンジョン探索者になる。

そして、誰よりも強くなる。


そんな思いを胸に、ひなたの将来の話を聞きながら歩き続けた。


「そういえばさ、研究者になるって言ってたけど……ひなたって、頭いいの?」


「私、この前の中間テスト、一位だったんだけど」


今日一番の衝撃だった。


自分の順位を思い出し、

澪はそっと考えるのをやめた。

すみません。今改定などを進めていて投稿ペースを落とします。

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