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隣の女の子

対戦は、澪の蹂躙で終わった。

男は完全に澪に怯え、その様子を見た他の男たちは、はっきりと反応が分かれた。

一人はリーダーの様子を見て何かを察したように黙り込み、もう一人は、なぜか興奮した様子を見せていた。


対戦が終わった区切りとして、澪は約束通りに食事に誘った。

けれどリーダーの男はそれを断り、そそくさとその場を離れていった。


……はあ。

お礼をしようと思ったのに。


心がすっと軽くなっているのを、澪は自覚していた。

今なら、人間にも、ダンジョンにも、より深く向き合える気がする。


これからは、もっと強くなりたい。

そう思えた。


これからの人生が、今までよりずっと楽しくなる。

そんな確信を胸に、澪はダンジョンを後にした。


それからは、対戦型ダンジョンでバトルをしたり、試練型ダンジョンに挑戦したりして、気分よく過ごした。

休日はあっという間に終わり、月曜日がやってくる。


「おはよう、澪ちゃん」


席に着くと、隣から声がかかる。


「おはよ」


澪も挨拶を返す。

気分がいい。

いつもより声が出た気がした。

……実際は、誤差みたいなものだけど。


「何かあった?」


「……何、急に?」


突然の質問に、そっけなく返してしまう。


「楽しそうだったから。何かあったのかなぁって」


「……わかるの?」


そこまで態度に出ていたのだろうか。

でも実際、昨日からずっとこんな調子だ。

世界が、少しだけ輝いて見える。


「うん。なんか、すっごく楽しそう」


「わかるんだね、そういうの」


「聞いてもいい?」


ひなたはそう言って、少しだけこちらに踏み込んでくる。


いいよ。

そう言おうとして、言葉が止まった。


この体験は、人に話せるほど綺麗なものだっただろうか。

人の上に立つ感覚は、とても気分がいいです――なんて。


でも、実際すごく楽しかった。

偽るつもりもないし、これから先やめるつもりもない。


この体験を、ひなたに話すのか。


……それは、だめな気がした。


澪は黙り込んだ。



私は朝倉ひなた。

隣の席の澪ちゃんは、今日はやけに楽しそうだった。


澪ちゃんはクールな女の子だけど、感情は意外と豊かだ。

先週までは、少し落ち込んでいるように見えたのに、金曜日あたりから急に元気になった。


今日も、登校中ずっと楽しそうだった。

正直、ちょっと可愛かった。


だから、聞いてみた。


「何かあったの?」


澪ちゃんは少し驚いた顔で、なんで?と聞き返してくる。

見ればわかるのに、と思ってしまう。


もう一度聞くと、澪ちゃんは考え込んでしまった。

私は、その返事を待つ。


どんなことがあったんだろう。


しばらくして、澪ちゃんはぽつりと言った。


「ダンジョンで、ちょっとね」


ダンジョン?


「ああ、ダンジョンかぁ。私も行ったことあるんだけど、鈍臭くてゴブリンすら倒せなくてさ。それ以来行ってないんだ。ダンジョンって、どんなところ?」


「一層だったら、一階とそんなに変わらないよ」


「そうなんだぁ」


いつもより少し饒舌な澪ちゃんを見て、私は思った。


――今だ。


「ねえ。私も一緒にダンジョンに行ってもいい?」


「……は?」


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