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闘士オーク

重い音を立てて、扉が開いた。


 部屋の中央に立っていたのは、情報通りの闘士オークだった。

 二メートルを優に超える巨体。隆起した筋肉が全身を覆い、立っているだけで圧がある。


 姿を視界に収めた瞬間、澪は確信した。


 まともに打撃を通して勝つなら、首の骨を折るしかない。


 オークは挑戦者を見下ろし、ゆっくりと歩き出す。

 焦りはない。最初から勝っているつもりなのだろう。


 首を砕くには、まず膝を落とす必要がある。

 高さも、威力も足りない以上、頭を下げさせるしかない。


 澪は距離を保ったまま、円を描くように走った。

 やっていることは、ウルフの時と同じ。

 相手が大きいほど、死角を作る意味は大きい。


 視界の外に回り込み、踏み込む。

 狙いは膝。


 オークは腕を振り回し、近づくのを拒んだ。

 だが、遅い。

 巨体ゆえの鈍さがある。


 蹴りは確かに膝を捉えた。


 ――折れない。


 返ってきたのは、骨の奥に残る鈍い衝撃だけだった。


「……マジか」


 一瞬、足が止まる。


 その隙を、見逃す相手じゃなかった。


 次の瞬間、視界を拳が埋めた。

 避けきれないと悟った時には、もう遅い。


 世界が裏返る。


 重い衝撃が全身を打ち、呼吸が止まった。

 床に叩きつけられた感覚すら、少し遅れてやってくる。


 失敗したのか。


 そう思いながら視線を上げると、闘士オークがこちらを見下ろしていた。

 とどめを刺すつもりなのだろう。

 余裕のある足取りで、ゆっくりと距離を詰めてくる。


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