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第三話 想定していなかったという事実
翌日も、学園は平常通りに始まった。
鐘が鳴り、授業が進む。
変わったのは、少女を見る視線だけだった。
午後、上級生の実技演習。
複数人による高出力魔法が、途中で破綻した。
魔力の流れが乱れ、術式が暴走する。
教師の制御が一瞬、遅れた。
「下がれ!」
結界が軋む。
間に合わない。
少女は、通路を通りかかっただけだった。
足を止め、自然に前へ出る。
誰かを救おうと考えたわけではない。
ただ、そこに在ったから。
手を伸ばす。
次の瞬間。
暴走していた魔法は、何事もなかったかのように終わった。
消えたのではない。
失敗したのでもない。
最初から問題が存在しなかったかのように。
沈黙。
記録装置は、また反応しない。
「……君は、何者だ」
教師の問いに、少女は正直に答える。
「分かりません」
学園は結論を出せなかった。
排除も、修正も、定義もできない。
できたのは、一つだけ。
――規格外ではない。
――規格が、彼女に合っていなかった。
世界は、静かに気づいてしまった。
最初から彼女を想定していなかった。
ただ、それだけの事実に。




