第二話 管理されるべきもの
放課後、少女は別室に呼ばれた。
学園の奥にある、小さな会議室。
結界が幾重にも張られ、外の気配は遮断されている。
「緊張しなくていい」
教師はそう言って、書類に目を落とした。
名前、成績、履修履歴。
属性欄だけが、最初から空白のままだ。
「今日の実技だが……記録上は成功だ」
「はい」
「だが、過程が存在しない」
「そうですね」
少女は事実として受け取っているだけだった。
「魔法は再現できなければ教えられない」
教師は慎重に言葉を選ぶ。
「教えられないものは、管理できない」
少女は一拍おいて、尋ねた。
「管理しないと、いけませんか」
教師の指が止まる。
「君の行為は、危険だ」
「危険、ですか」
「前例がない。測れない。制御できない」
視線を逸らし、続ける。
「学園にとっては、それだけで問題だ」
少女は首をかしげた。
「でも、壊れてはいませんでした」
標的は正確に崩れ、被害はなかった。
事実は、それだけだ。
「結果だけを見るな」
教師の声が少し強くなる。
「次に何が起きるか分からない」
「……次も、同じだと思います」
根拠はない。
だが、迷いもなかった。
教師は深く息を吐く。
「しばらく実技は免除だ。観察対象とする」
「観察、ですか」
「処分ではない。配慮だ」
少女はうなずいた。
拒否も、安堵もなかった。
その夜、内部文書が一通だけ更新される。
――対象は魔法と呼称されているが、再現性なし。
――教育課程への組み込み、不可。
――引き続き、管理対象とする。




