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第一話 規格に収まらない

 測定水晶が、甲高い音を立てて止まった。


「……次」


 教師はそう言ったが、視線は水晶から離れない。

 魔法学園では、結果の前に条件がある。

 詠唱、魔力流動、術式――それらが揃って、はじめて成功と呼ばれる。


 少女が前に出た。

 制服は整っていて、姿勢も崩れていない。

 ただ、どこにも力が入っていなかった。


「標的に向けて、通常の発動を」


 少女はうなずいた。

 杖を構えず、詠唱もしない。

 呼吸すら変えず、ただ手を伸ばす。


 次の瞬間。

 魔法陣が浮かぶ前に、結果だけが現れた。


 訓練用の標的が、音もなく崩れる。

 爆ぜたわけでも、焼けたわけでもない。

 役目を終えたように、静かに。


 教室が凍りつく。


 遅れて測定水晶が光り、数値を示そうとして、

 すぐに表示が乱れた。


《測定不能》

《条件未検出》

《再計測不可》


「もう一度だ」


 教師の声は、命令というより確認だった。


 少女は、同じように手を伸ばす。

 同じ結果。

 同じ静けさ。

 同じエラー。


「……魔法を、使ったのか?」


 誰かの呟きが、床に落ちる。


 少女は少し考えてから、首をかしげた。

「分かりません。いつも通り、そう振る舞っただけです」


 誰も笑わなかった。

 誰も反論できなかった。


 成功率は百%。

 だが、成功条件が存在しない。


 才能でも、技術でもない。

 規格そのものが、意味を失っただけだった。


 その日の記録に、簡潔な一文が追加される。


 ――想定外事象、発生。

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