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短編番外編  作者: こうが
1/1

「あ、これは無理かも」番外編。

子供時代のある日のお話。

本編はこちら

https://ncode.syosetu.com/n2248lc/

―イライアスとシルヴィアのある日のお話―


「うぅ…。痛いわ…」


「シア、大丈夫?まだ痛い?」


シルヴィアはお尻を抑えながら涙目になっている。

その横でイライアスが心配そうにシルヴィアの様子を見ていた。


「ありがとう、エリー。私は大丈夫よ。

お母様に捕まったのが敗因だわ…。マックスさんなら逃げられたのに」


収穫が終わった後の何も植えられていない畑を見ていたシルヴィアが、急に枯草を集めて燃やし始めた時、イライアスは驚きすぎて止めることもできなかった。


その火はあっという間に燃え広がったが、燃やした畑は木や家から離れた場所に狭く開墾されていた場所だったため、鎮火したのもあっという間だった。


狭い範囲とは言え、急に火を点けたことでシルヴィアは母親に捕まり、お仕置きとしてお尻を何度も叩かれていた。

因みにマックスとはシルヴィアが燃やした畑の持ち主で、燃えている畑を呆然と見ていた。

そのためシルヴィアは逃げ切れると判断していたが、いつもと違う娘の様子を怪しんだ母親がいち早く駆け付けたためシルヴィアはその場で捕まったのだった。


「何で急に燃やしたの?」


「本に焼畑のやり方が書いてあったの。でも大麦にはあまり使わない方法なんですって。

だったら試してみたいじゃない。本当に向かないのかどうか。

あの畑では牛の餌になる穀物を育てようとして水を貯めたけど育ちが悪いって言ってたから大麦でも植えてみようかと思ったの。

本当はちゃんとするつもりだったのよ?でも今日は天気がいいし、収穫終わってるしやるなら今日しかないと思ってついうっかり…」


突拍子のない発言にイライアスは何も言えなかったが、シルヴィアが本気で言っていることは理解した。


「…じゃあ、早速大麦植えてみようか」


「さっすがエリーね!もう貴方の分の鍬も種も用意してあるのよ」


イライアスが使う鍬を用意していたり、蒔く分を別の袋に分けていた辺り、シルヴィアは最初からイライアスを巻き込む気でいたらしい。


「大麦が収穫できたらどうする?」


「美味しいパン・ド・カンパーニュを作りましょう」


明るく答えるシルヴィアはそのまま端から灰と土を混ぜるように耕し始めた。

マックスにはちゃんとシルヴィアと一緒に謝ってから改めて大麦を育てる許可を貰いに行かないと、と巻き込まれただけのイライアスは心に決めた。

既に耕し始めているので大麦を育てる宣言にすぎないが、何も言わないよりはいいだろうとシルヴィアとは反対の方向から鍬を振るい始めるのだった。


その後、イライアスが本で大麦の育て方を調べ、シルヴィアが手入れをした畑で収穫された大麦を使って焼いたパン・ド・カンパーニュは見事な出来栄えだった。


収穫した後も子供だけで火を点けたことを事あるごとに怒られるシルヴィアは不満そうな顔をしていたが、皆で食べたパン・ド・カンパーニュはとても美味しかった。


ジャムがなくても美味しいだろうと、ジャム用に分けてあった木苺は領地の子供たちと食べ尽くした。

皆でまた領地を駆け回って遊び、家に戻ったら木苺を食べ尽くしたことでまた怒られ、またイライアスに慰められた。


「シアが試したことは結果としてはいいことなんだよ。

でもね、大人はちゃんと段階を踏んで説得しないといけないから、今度から何かやる前は僕に相談して欲しいな。

そしたら、ちゃんとシアのご両親に許可を取るよ。

後ね、僕木苺のジャム好きだからちょっと悲しいな」


「ごめんなさいぃ!次はエリーも誘って食べる!」


「そこじゃないんだけど、うん、まぁいいか。

誘ってね。木苺美味しいよね」


泣きながら謝るシルヴィアに苦笑しながらシルヴィアの頭を撫でて慰めた。

イライアスは巻き込まれることは嫌いではなかったが、シルヴィアが怒られる姿や泣く姿を見るのは嫌だった。


何よりも嫌だったのは、シルヴィアが怒られている時間だった。

イライアスはシルヴィアと一緒にいられる時間が減ってしまうことが嫌だった。


「ええ分かったわ!

じゃあね、木苺はもう無いから来年ね。

次は川のお魚を捕まえる罠を作ろうと思うんだけど、作ってもいいかしら?」


「うん、魚が美味しい季節になったらにしようか。冬の間にどんな罠を作るか考えて作ってみようよ」


釣竿で釣るのもいいが、きっとシルヴィアは罠を仕掛けてみたいのだろうとイライアスは気がついていた。


嬉しそうに材料を貰いに行こうと張り切るシルヴィアはいつも変わらない。


「ありがとう!それで上手くお魚を獲れたら秘密の場所に案内してあげる!

ブルーベリーが沢山採れる場所を見つけたの、誰も知らないのよ。

2人だけの秘密ね!」


その笑顔を見た瞬間、イライアスは自分の気持ちに気がついた。

シルヴィアのしたい事は一緒にできれば嬉しいし、一緒に過ごす時間は大事にしたい。

シルヴィアのしたい事を叶えてあげたい、喜んで欲しいと思っていた理由は―。


「うん、約束だよ。大きい魚を獲れるといいね」


パイ包みを作りましょう、と言うシルヴィアと増やしていく約束は、イライアスの宝物になっていた。


ご覧いただきありがとうございます!

領地での様子ってこんな感じかなーって思いました。

このお話に関しては平和を前面に出したいなと。

川魚を捕獲する罠を考えたり畑燃やすのが平和かどうかはちょっとあれですが。

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