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第二章 64話『『元』究極メイド、下水道から隠し通路へ』

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 先日の事。

 子供達が下水道の壁を、破裂球という玩具をぶつけて壊した事になっていた。

 下水道の管理人はすぐさまその壁を修復し、周囲と何ら見分けがつかないように、ただただいつも通りに修復をしたのだ。

 

 だが今回、それが却って裏目に出てしまったと言わざるを得ないだろう。

 その修復した壁の向こうに道が続いている事を管理人は確認しておらず、この道を塞いだ。この通路を作った何者かにとっては実に都合がいい事だっただろう。


「ここだけは明かりがついてますね」


 アミナが周囲を見回しながら、天井付近にあるランタンを意識した事を言った。

 下水道から繋がっていたこの隠し通路だが、 注意深く地面を見ながら歩いていると、誰でもとある事に気が付く。それは――


「どうやらこの通路はもう使われてねぇみてぇだな。少なくとも一週間は」


 メイがアミナの言いたい事を口にした。それに対してベルリオは「だが逆に言や、一週間前まで何者かが使ってたって事にもなる」と返した。


「そんな最近まで誰かが使ってたのか。管理人が壁を修復したのはいつだい?」


「えっと……4日前の話だったかな」


「つまり用済みになって3日経過してから穴を塞がれた……そして更に4日も経過している……」


 歩きながら地面や壁を見ていればその痕跡の少なさに誰しもが気が付く。

 今ここでアミナの中に引っかかっているのは、そのタイミングだ。


用済みになって3日経過してようやく発見されるなど都合が良すぎる。今までだって点検の機会はあったハズなのにそれをみすみす見逃すなんて―――いや、見逃していた訳じゃ無い。見つけるように誰かが仕向けたんだ。子供達をそこへ誘導し、誰かが管理人へと通報なり報告なりをする。それを聞いてきた管理人が隠し通路の穴を発見し、修復した。用意周到な計画の片鱗をそこに感じざるを得ない。こんな事、どこの物好きがやるだろうか。


「……もう確定でいいでしょう。このような計画を立てて何かをなそうとしているのは、この街を壊滅させようとしている、魔人会しかいません。現によそ者である彼等が起こした違和感は全て繋がっています」


 アミナは握り拳を作ってそう言った。そもそも罪のない人間が住んでいる街を滅ぼそうとしている事ですら腹立たしいのに、そこに住んでいる人達を利用して自分達にとって有利に進めるという考え方が更にアミナの怒りを加速させる。

 それを察したのか、メイが彼女の肩に手を置いた。


「あんまし先走って張り詰めんな。見えねぇモンばっか見ようとすると、見えてるモン見失うぞ。……だがまぁ、お前の言う通りのフシはあるがな」


 メイに諭されたアミナは静かに頷いて深呼吸をした。


確かに不確定要素にこだわるのはいい事では無い。今の自分の役割を思い出せ。街を危機から救う事だろ。魔人会の勝手な行いへの怒りに燃えて、正義ヅラでそれを振りかざす事では無い。やりたい事とやらなくちゃならない事を履き違えるな。


 アミナが自分自身を納得させるように思考していると、前を歩いていたメイの広い背中に鼻をぶつけて「ふばっ」と情けない声をあげてしまった。どうやら彼女は立ち止まったらしい。


「どうしたんですか?」


 メイの顔を伺うようにして前を除く。すると何故彼女が立ち止まったのかは一瞬で理解できた。


「ここは……」


 必要か不必要か定かでは無いが、アミナ達はとても広い部屋のような所に出た。

 それは下水道には全く似合わない広い空間で、部屋の隅から隅までで20メートル程ありそうだった。だがこの部屋は今までの通路のように明るくは無かった為、正確な広さは分からなかった。


 一同はその部屋を見回して歩いた。途中、1人で壁を見ながら歩いていたイーリルが全員に呼びかける。


「いい知らせがある。どうやら、魔人会のアジト……それで確定らしい」


 壁にデカデカと掲げられた魔人会の紋章が描かれた布。それは彼等の使用している仮面に刻まれている模様と全く同じだった為、イーリルは確信したという訳だ。


 今度は、アミナが部屋の中央付近に近づいた。特に何かがある訳でも無かったが、何となく踏み入ってみた。

 すると突然、一部の地面が真っ二つに割れ、そこの見えない穴を作り出した。

 急な出来事にアミナは飛び退いて後退し、彼女の周囲に他のメンバー全員が集まる。


「何だ今の……」


「分かりません。ですが、私が何か良からぬ事をしたのは――間違いないみたいです」


 アミナは割れた地面から何かがせり上がってくるのを音で感じていた。それはカイドウ以外の全員が感じている音で、すぐに戦闘態勢を取っていた。カイドウとイーリルの事はフィーが守ってくれるとアミナは信頼を寄せていた為、戦闘に集中しようと意識を目の前の穴へと向けた。

 そして、それは現れた。


 穴の中から案の定せり上がってきたのは、3体のゴーレムのような見た目をした中型の魔物だった。決して大きくはない、だが人間ほどのサイズはあり、決して小さくもないのだ。

 様子をうかがっている一同の方に、ゴーレムの赤く光った目が向けられる。何かを察知したのか、メイは「カルム、お前はフィーと一緒にカイドウとイーリルを守れ」と言った。


 次の瞬間、全身が黒曜石のように鈍く光り、硬質な筋肉のごとく隆起しているゴーレムは、アミナ達に襲いかかってきた。

 ベルリオは低く唸りながら、前足──いや、腕の爪を研ぎ澄ませたように構えた。獣人としての戦闘本能が、目の前の敵が並の相手ではないことを察知していた。

 メイも「開け一門」と言って愛剣である(タケル)を取り出す。


「全員気ぃ抜くなよ」


 メイの言葉にベルリオは無言で剣を構え、アミナは短剣を引く抜く。


 ズシン――!


 重い足音が鳴り響く。信じられない速度で迫るゴーレムに、ベルリオは本能的に跳び上がった。

 鋭い鉤爪が空を切り裂き、最も前に出ていたゴーレムの肩を引き裂く。粉砕された黒曜石の破片が四散するも、ゴーレムは怯むことなく拳を振り上げた。


「チッ……!」


 ベルリオは反射的に体をひねり、足を壁につけて勢いよく蹴ることで距離を取った。その隙に、メイが一閃する。彼女の剣技は流麗で、細かい動きの積み重ねで確実に急所を狙っていた。


「貰うぜ」


 彼女の振るった一撃により、ゴーレムの腕が宙を舞った。だが、それでもなお動き続ける。斬られた腕の断面から黒い粒子が湧き出し、瞬く間に元の形状へと戻っていく。


「……普通に斬ってもダメか」


 メイが眉をひそめる。すかさずアミナが前へ出た。彼女の手から放たれるのは、『破壊創造(テラーメイド)』。物質を理解していれば分解する事が出来るアミナのスキルから派生した技の1つだ。


「これで……!」


 青白い光がゴーレムの体を包み込み、瞬く間に粉々に分解される。だが──


「っ!?戻ってる……!」


 粉々になった破片が、磁力に引かれるように再び集まり、数秒も経たぬうちに元通りの姿へと戻った。

 メイが腕を切断した時とは再生の仕方が異なっていたが、直っている事に変わりはなかった。


 「厄介だな……なら!再生できない速度で……!!」


 四つん這いになって口に剣を加えたベルリオは姿勢を低くして飛び出す。その速度はフィーにも匹敵する程で、獣人の靭やかで強靭な筋肉がそれを可能にするのだと、アミナは驚きながら見ていた。


「『騎刃閃(きばせん)』!!」


 凄まじい速度で加えた剣から斬撃を繰り出した。その一撃はゴーレム達の腕を落とし、壁を蹴って更に追撃をする。縦横無尽に駆け回りながらすれ違いざまに斬り裂く。これほどの圧倒的な手数をアミナは見た事が無く、そっと息を呑んでしまった。


「どうだ……!!」


 一通りの攻撃が終わり、アミナ達の元へ戻ってきたベルリオは警戒しながらゴーレムの様子を見た。

 するとゴーレム達は何もなかったかのように再び再生し、3人に向かって歩いてきている。


「なっ!?どうして……!!あれだけの攻撃を喰らってなんで……」


 アミナは目の前の敵の再生能力とタフさに驚愕する。

 何か、何か策はないか。そう考えていると、隣に立っていたメイがいきなり「閉じろ一門」と言って武器を仕舞った。「メイさん?一体何を……?」とアミナは彼女に訊くが、メイは「あー無理無理。私達じゃ勝てねぇよ」とらしくない言葉を吐いた。

 すると今度は、カルムがメイとすれ違うようにして歩みを進めた。彼女の手には赤刀・ダムネスが握られている。


「ここは私にお任せ下さい。アミナ様、ベルリオ様」


 カルムにそう言われ、「しかし……」とアミナは言うが、「いいからさっさと戻ってこい」とカイドウとイーリルの横にまで戻っていたメイに言われ、渋々戻った。

 ゴーレム3体を目の前に、カルムは抜刀せずに構えた。そんな彼女に、ゴーレムの内の一体が襲いかかった。

 速い……!!あれじゃ抜刀が間に合わない……!!アミナはそう予測してカルムへ逃げる事を叫ぼうとした。しかし、そんな考えは一瞬にして切り捨てられた。


 アミナが叫ぼうとした瞬間、目では捉えられない抜刀速度でカルムは赤い刃を鞘から抜き、ゴーレムの体を斬り裂いた。先程から驚きっぱなしだったアミナはこれでもか、と驚いている。


 斬り裂かれた仲間を見て憤ったのかは定かではないが、残りのゴーレム達もカルムに飛びかかった。

 カルムは再び刀身を鞘に納め、最初と同じ体勢を取った。

 そして一太刀、ゴーレムの一体を斬り裂くと、もう片方を蹴り飛ばして距離を取った。

 アミナは彼女の身を案じて斬り裂かれたゴーレムの方を見る。しかしどうだろう。ゴーレムに動く気配はない。


「一体何故……」


 疑問に思ったアミナを察したのか、メイは説明を始めた。


「カルムの使ってる赤刀・ダムネスは物質の本質を斬り裂く。それは私達人間で言う所の魂。ゴーレムでも生物である限りそこは変わらねぇ。だからあいつは、再生し続けるヤツの魂ごと斬り裂いて戦闘不能にしてんのさ」


 メイは簡単に説明を終わらせた。

 口で言うのは簡単だが、その内容は理解すればする程恐ろしい代物だった事に、アミナは嫌と言うほど驚いていた。


 カルムは、蹴り飛ばした最後の一体に向かって納刀してから接近する。

 遠くから静かに見守っていたメイは「来るぜ」と小さく呟いた。


「『断魂流居合――』」


 それはアミナにも聞き覚えのある言葉だった。

 カルムが最初にアミナを襲った時の最後に口ずさんでいた言葉。


「『――流転跋扈(るてんばっこ)』」


 鞘に納められた赤い刃が低い体勢のカルムによって引き抜かれ、ゴーレムの真下から振り抜かれる。ゴーレムの黒光りしている体が縦に斬り裂かれ、ボトリと鈍い音を立ててその場に崩れ落ちた。


「眠れ――冥府に誘われて」


 カルムの口からは到底出そうにも無い言葉が広い部屋中に響き渡り、その戦いの幕は下ろされた。



最後までお読み頂きありがとうございます!


地下にあった下水道から隠し通路へ!

そしてなんとその先には広い部屋まであっちゃった!

なんで街の人は気づかないんだよ!!


それでは次回もお楽しみに!!

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